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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第7章 家族は大事と思い知ったよ⁉︎
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97話 カジノデート①

「アラヤ君、ご飯できたそうですよ」


アヤコは空き部屋の扉をノックして、中で作業をしているアラヤに呼びかける。ここ数日のアラヤは、夕方やご飯になるまでは空き部屋に篭りっきりになっていた。


「うん、今行くよ」


扉を開けて出てくる際に、隙間から見える床の散らかりように、アヤコはこの前、中の掃除を申し出たのだが「まだ作業中だからダメだよ」と断られてしまった。


「アラヤ君、部屋の…」


「ああ、ごめんね。今日中には片付けるからさ」


「いえ、…ただ、私はお手伝いしたいのです」


「アヤコさんは、俺の作った製品(魔鉱石の種類と数、魔力粘糸の巻糸の各色の数等)の管理表作成とかしてくれてるじゃない」


「そういう事ではなく…」


「大丈夫だよ、後は自分でできるから」


アラヤはそう言ってDL (ダイニングリビング)へと行ってしまった。アヤコはその後ろ姿を見て溜め息をつく。


「いただきます」


食べる時は、いつものように美味しそうにパクパク食べているので、違和感をそんなに感じない。だけど、最近のアラヤがおかしいって思っているのはアヤコだけではない。


「ねぇ、アラヤ。また武器の試し斬りに行きたいんだけど、明日とかどうかな?」


「サナエさん、ごめん。明日は開発品の試運転をする予定なんだ」


「そっか…。分かった、今度でいいや」


普段なら押していきそうなサナエも、今のアラヤには遠慮がちになっている。


「う~、今何時~?」


そこへ、仮死状態(デスタイム)から目覚めたカオリがDLへと顔を出した。


「今、丁度昼食の時間ですよ、カオリ様」


「そうなんだ?う~ん、私にも何かある?」


「もちろん、用意してるよ」


いつ起きても良いように、彼女の分の料理もいつも作ってある。

カオリは、空いていたアラヤの隣に座ると、アラヤの顔を覗き込んだ。


「ちょっとにいや、私とのデート、いつになったらしてくれるの?」


「んえっ⁈何?」


食事だけに集中していたアラヤは、彼女の存在にたった今気付いて驚いた。


「…何、アンタ。ひょっとして、この暗い雰囲気、にいやが原因なの?」


「えっ?暗いって…」


アラヤは周りを見て、皆んなが少し俯いてしまう事にようやく気付いた。


「カオリさん、今日のアラヤ君は午後から暇ですので、丁度良いのでデートしてきて良いですよ?」


「えっ?午後は…」


「アヤコさん、良いの⁈ありがとう!」


急なアヤコさんの提案に、断る間も無くカオリさんが乗ってくる。俺、忙しいんだけど…。


「今のアラヤ君には、()()()()()()()


語尾を強めた彼女の真剣な表情に、アラヤは頷くしかなかった。


「分かった。じゃあ、ご飯を食べ終わってからね?」


「ウン、それで良いよ~」


テンションが上がっているカオリに、アヤコからの念話が届く。


『2人のデートを邪魔はしませんが、間違っても無理矢理に既成事実を作ろうなどと、考えないでくださいね?』


『も、もちろんだよ~。私も初デートでそんな事はしないわ』


『それなら、今日はアラヤ君を任せますね』


アヤコの微笑みに、カオリの頭には疑問符が浮かぶ。何故なら、最近のカオリは目覚めても、全員と会う事がなく過ごしていた。特にアラヤとはタイミングが合わず、数日会っていなかったのだ。


「ごめん、お待たせ!」


金髪姿に変装したカオリさんは、白のつばの広いキャスケット帽子と見慣れない水色のワンピースを着て、俺の手を差し出してくる。

差し出されたその手を優しく握り、アラヤは定番の決まり文句を言う。


「カオリさん、その服装とても似合ってるよ」


「本当?ありがとう、素直に嬉しいわ」


この決まり文句を言わなかった場合には、不機嫌な状態からのスタートを切る事になるだろう。


「それで、今日は何処に連れてってくれるのかしら?」


「とりあえず、書店巡りでどうかな?」


「ええ?デートって言ったら、もっとこう、カップルをイメージするような場所に行くものじゃないの?」


「ん~、そう言っても、映画館や遊園地みたいな施設はこの世界には無いよ?」


「でも、せっかくのデートで、書店で無言になって本を選んでるなんてのは嫌だわ」


まぁ、言われてみればそうだなぁ。どうせならお互いの感想が言い合える場所が良い。


「それなら、カジノに行ってみる?」


「えっ?この街カジノがあるの?」


「うん、俺も行った事無いけどね」


この街で行った事が無いとすれば、公衆浴場とカジノくらいだ。どちらも、アヤコさんが居ると反対される場所である。


「そうだね!私も行ってみたいかな」


「あ、でも、入っても見るだけだからね?今の俺達には、使えるお金があまり無いから…」


「分かってるわよ。ただのデートスポットとして行くだけね」


2人は、繁華街の奥にある歓楽街へと向かった。そこは行き交う人々の雰囲気も一変する。至る所に借金奴隷の亜人が見受けられ、まだ昼間だというのに、酔い潰れて道端で寝ている者もいる。

明らかに、今の2人には場違いと言える場所だった。

案の定、絡んでくる輩が現れた。


「おい、こんな場所にガキが何してるんだ?」


「迷子か?それとも消えた父親探しか?ガハハ!」


カオリさんの腕を掴もうとしたので、アラヤが前に出て技能の威圧LV3を相手に発動する。

すると輩達は、口から泡を吹き倒れてしまった。


「うわっ、やり過ぎた!カオリさん、走ろう!」


アラヤはカオリの手を引っ張り、カジノに向かって走り出した。

カジノの入り口に居る、2人の体格の良い正装の男(門番)が、やって来た珍妙な客に片眉を吊り上げる。


「何か御用ですか?」


アラヤを見ていきなり帰れと言わないあたり、鑑定持ちのようだ。2人が貴族の身内とでも判断したのだろう。


「カジノに見学で入る場合でも、会員証とか必要でしょうか?」


「はい。当店では会員証の提示が無い方は来場できません。会員様と同伴という形なら入れますが」


やっぱり無理だったかぁ。まぁ、そんな気はしてたんだよね。俺1人だけ隠密で入るわけにもいかないし。今回は諦めかな?


「おや?グラコ殿ではありませんか?」


振り返ると、スーツを身に纏ったドワーフが立っていた。確かこの人は、レギン=リトゥル。ソーリンの成人式の時に居た、武器商人だったな。


「これはレギン殿。お久しゅうございます」


「おや?その方は、以前お見かけした夫人方とは違う方ですね。新しい奥方ですかな?」


「ええ。結婚してからまだ日が浅く、こうしてデートを楽しんでいるところです。彼女がカジノを見たいと言うのですが、私は会員証を持って無いので入れなかったんです」


「そうでしたか。ならば私とご一緒にどうですかな?」


「よろしいんですか?」


「ええ、もちろんです。問題ありませんよね?」


会員証の提示をしたレギンに、入り口の男達は頷き、扉を開ける。どうやら大丈夫のようだ。レギンさんの後ろに付いてカジノの中へと入る。


「にいや、この人は?」


「この人は、ソーリンの成人式の時に知り合った武器商人のレギン=リトゥル殿だよ」


小声でカオリさんに説明を入れる。武器商人という仕事名に、カオリさんも不信感を抱いたようだ。



カジノのホールは、前世界のイメージと何ら変わらない。カードゲームやルーレットのゲーム等、テレビで見た風景が目の前に広がっている。


「さて、どのゲームから致しますかな?」


「ああ、私達はとりあえず見学の予定です」


「そうですか、良かったら少し貸しましょうか?」


おいおい、そんな危険な誘いに乗る訳ないでしょうに。商人が金を貸す場合は、必ずそれ以上の見返りがある場合と、相場は決まっているよね。


「次、家族全員で来る為の、今回は下見なんです。なので、レギン殿の運の強さを拝見しますよ」


「ハッハッハ!良いでしょう!とくとご覧あれ!」


アラヤ達はこの後、レギン=リトゥルの悪運の強さを見る事となった。

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