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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第1章 異世界生活が苦しいって知らなかったよ⁉︎
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09話 何でも屋と試作トイレ1号


日が真上に昇ると、いつものように食堂に集まる村人達。


「「「いただきます」」」


誰もが、一緒に食べる事がさも当然のようだ。しかし、実際には六年程前から始めた事らしい。その以前は、各家庭で食べるのが普通だった。

六年前、この村は度重なる凶作に見舞われて、廃村に追い込まれそうになっていた。

そこへ、王都から上質な土を探しに来ていたメリダが、この村を拠点にした事から劇的に変わったらしい。そのまま、村人達の強引な頼みで村長になったという事だ。


「村長に選ばれて、始めの決まり事が皆んなで食事をしよう!だったらしいですよ」


年長者のおじさんに、アヤコさんがそれとなく聞き出している。


「なるほどね。この村で村長さんは、正に救いの手だったんだね。それでサナエさん、村長さんとは大丈夫だった?」


「まぁね。私から言わなくても、二倍の仕事量を与えられたよ。はぁ…」


少しも嫌そうじゃない表情の愚痴に、それは災難だったねと笑顔で返す。


(む?二人に何かあったの?ちょっと親しげになってる…ぐむむむ)


アヤコさんから何か痛い視線を感じるけど、触れないようにする。今は、村長の動向が気になるからね。


「皆んな!食べながらで良いから聞いてね?新しく入った三人の、仕事が決まったから教えるね!」


やはり来た!この村に来てから感じた、普通とは違うという村の違和感の正体。


「サナエは、この食堂のウェイトレスを。アラヤは、村全体のあらゆる雑務、お助け屋を。アヤコは、子供達の先生になってもらいます!」


「…だそうです。私が先生か~」


「「え~っ‼︎⁇⁇」」


彼女が村を立て直した理由。

それは【鑑定】という技能(スキル)を彼女が持っていた事にある。

彼女が行ったのは、一人一人、鑑定で職種を調べて仕事を決める。徹底した適材適所である。

ただそれだけと思うかもしれないが、自分に先天的な職種がある事を知らないのであれば、その差は桁違いに大きいのである。

この村の住民は、村長に絶対的な信頼がある為、自分のやりたい仕事では無く、与えられた仕事に従っていたのだ。

それ故に、自分の仕事に不器用な人など見当たらなかったのだ。それが、アラヤがこの村に来て、人々を鑑定しまくって思った違和感だった。皆が皆、してる仕事と職種が一緒なんて、前の世界ではあり得ないからね。

これで分かったのは、いかに鑑定という技能が貴重な技能だったかだ。この村には村長しか鑑定持ちは居なかった。他の街や都市でも、鑑定持ちは貴重な存在なのかもしれない。


それはそうと、今伝えられた仕事の結果には納得がいかない。通訳したアヤコさんが先生なのは納得できる。サナエさんも、ウエイトレス姿を見たいので認めよう。だが、俺は何だ?俺の職種と技能は鑑定出来なかったと言っていたのに。


「何故にお助け屋⁈」


「坊やの技能は色々聞いたよ。本の貸し出し条件でね」


村長が、ニヤニヤと悪い顔をしている。いろいろ働いてもらうよと言っているようだ。

アヤコさんを見ると、手を合わせてごめんなさいのポーズをしている。犯人はアンタか!


「一体、どこまで教えたの⁈」


「ごめんなさい!力持ちで、火・水の魔法と回復魔法が使える事を言ってしまいました。後は教えてません!」


「くっ……それで?もちろん、何かの条件があったんですよね?」


「はい!世界地図と数冊の魔法書と歴史書を貸して頂きました」


確かに、それは欲しい情報源だ。彼女達には元々、職種も技能も全てを教えていなかったから、村長に全てがバレた訳では無い。今回はギリギリセーフか。


「アヤコさん、次はありませんよ?」


「は、はいぃぃ…」


半泣きの表情を見せるが、彼女には振りがあるからね。今回はちゃんと反省してもらおう。アラヤはその後、無言のまま食事を終えた。途中、チラチラと視線を感じたが、夕食までは放置だね。


「それじゃあ、早速、午後から働いてもらうからね。しっかり頼むよ?」


アラヤは村長に連れられて、小さな家に来ていた。この家は朝の巡回で一度来ている。この村唯一の治療院である。

治療院とは言うものの、治療師は高齢のおばあちゃんが一人だけで、鑑定で分かった治療方法は、針治療と薬草による内服薬である。

おばあちゃんの名前はトーメさん。患者さんが来院するまでは、冬眠モードで座ったまま寝ている。


「そんじゃ、後はよろしくね?」


村長は、トーメさんを起こさないように、静かに帰って行った。

どうやら村長は、アヤコさんから聞いた俺の回復魔法を期待しているのだろう。

しかし、待つ事1時間。誰もやって来ない。これって、俺もう帰って良くない?トイレやベッドを作りたいんですけど…。

そもそも、自分の職種に合った仕事をしている人ばかりだから、仕事中の怪我とかほぼ無いんじゃないか?

この村じゃせいぜい、守衛さん達が魔物との戦闘で怪我をするくらいなのかもしれない。一応、後1時間は待ってみよう。

…………。

………。

……。

…平和だ。

よし、訪問診察という名目で抜け出そう。丁度、ベッドのマットレスとシーツが必要だから、村の織物屋さんへ行くとしよう。

診療所をそっと抜け出し、村の布製品を取り扱う織物屋にやって来た。

扉を開けると、奥から機織り機の音が聞こえてくる。

織物屋の店員は、裁縫師の職種を持つ二人の村人。ナーベさんと娘のナーシャさん親子だ。娘のナーシャさんはとても豊満な双丘を持つ18歳の美人さんだ。その胸で機織りは織り辛いんじゃないだろうか。


「すいませ~ん」


「あら?確か…アラヤ君だっけ?」


軽く頭を下げて、棚に陳列している商品を指差す。廃棄布を詰め込んで作ったマットレスレス(厚み5センチ程度)だ。


「ああ、三人分の寝具が必要なのね?分かったわ」


言葉が分からなくても、この程度のジェスチャーで伝わる。棚の商品とは別に、紐で結んである商品を持って来た。それは村人達が、三人の新住民に必要な物を前もって用意しているからに他ならない。初めから全て渡さないのは、面識を深めようという村長の思惑だろう。

しかも、村人なら全て無料ときている。だから、まだ一度もこの世界の通貨を見てないんだよね。


寝具一式を三人分受け取り、頭を下げて織物屋を後にした。自宅に帰って早速取り掛からなければ。

先ずはトイレの場所。自宅には、元々トイレが無かった。それは、少し離れた場所に馬房があり、そこに設置されていたからだ。しかし、馬房もトイレも崩れており使い物にならない。

なので、自宅に新たに隣接して作る事にする。先ずは土属性魔法のアースクラウドで、地面に溜桝や臭気穴を開けて、その上に基礎や柱を立てて板壁で囲む。

臭気穴の排気筒には塩ビ管が無いので太い竹の節?をくり貫いた物で代用し竹の換気扇を上部に取り付けた。汲み取り用の穴を塞ぐ蓋も、石盤で代用である。

トイレ内の床はフローリングにして、肝心の便器は和式タイプでは無く洋式の座れる便座タイプにした。和式では匂い止めになる蓋をし辛いからね。ただ、これはあくまでも試作第1号だ。だって、全て木製だもの。ニスを塗っても長持ちはしないだろうね。村長に頼んで、陶器の便座をいつかは作りたいと思う。その時には、浄化槽や水洗便器なども作れれば良いな。

自宅の壁を一部開けて、トイレへの入り口に改修する。木材の切り揃えはエアカッターで簡単だが、やはり魔法で出来ない釘打ちや研磨みたいな事は、物凄く時間と体力を使うなぁ。気が付けばもう夕方である。足音が聞こえて振り返ると、サナエさんが走って来ていた。


「やっぱり家に居たね!治療院に行ったら居なかったから、もしかしたらと思って探しに来てみたんだけど、正解だったね。もう夕食の時間だよ?アラヤを皆んな待っているから、早く行こう?って、そこひょっとしてトイレなの?」


「そうだよ。でも、汲み取りタイプだから少々の事は我慢してね?」


「これ、便座じゃん!他の家より全然良いって!早くアヤにも教えてあげなきゃね?」


「うん。それじゃあ、あまり待たせても悪いし、そろそろ夕食でも食べに行くか」


ベッドは完成しなかったけども、何とか最優先のトイレが出来て、とりあえず今日のノルマは達成だな。そもそも魔法が無きゃ、1日で完成なんて絶対無理なんだけどね。ラノベの主人公達に、やっと俺も一歩だけ近づけた気がするよ。

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