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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第6章 味方は選べと言われたよ⁈
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82話 パーティープレイ

自分の2倍はある程の巨躯が、腹の肉が出た部分をタプタプとたゆませながら近付いてくる。片手には刃こぼれが酷い大きな斧が握られ、力任せに縦や横に振られるが当たる事は無い。


「コラ、アニ!遊んでないで数を減らすんだ!」


彼の放った強力な矢が、再び斧を振り上げたオークの腕を貫通して吹き飛ばした。


「分かってるよ、スタン。体も良い感じに温まってきた。今から上げていくよーっ!せいっ‼︎」


腕を失ってフラつくオークの腹に、彼女の拳がめり込んだ。その力は背中から破裂して抜けて、オークを絶命させる。

それからフットワークを活かして、次から次へとオークの攻撃を躱しながら、その巨躯を撃ち抜いていく。


「うぉっ⁉︎あれはシルバーファングか⁉︎」


オークの群れの中を、銀色の狼が駆け回っている。牙と爪で首や関節を切り裂きながら、オークの群れを翻弄していた。


「オークより厄介だぞ!今のうちに獲るか⁉︎」


動き回る銀狼の進む先を、照準に合わせようとスタンは意識を集中させる。


『お止め下さい!この子はクララ、私達の従獣です!』


突然、頭の中に思念が流れ込んできた。後方の馬車を見ると、1人の若い女性が御者台に姿を現して頭を下げる。

改めて良く確認すると、銀狼の首には確かに従獣の印が下げられていた。


「すると彼女は調教士(テイマー)か!」


「ねぇ、スタン!最近、狼ちゃんの噂聞いた気がするんだけど⁈」


駆け抜ける銀狼に負けじと、アニも攻撃のペースを上げならがら尋ねる。


「そういえば、つい先日にギルドで噂になってたな!狼を連れた行商人の護衛達が、盗賊団を幾つも壊滅させたとか。コイツ達の事だったか!」


「なるほどね、じゃあ、あの坊やがリーダーっぽいな。アルバス、お前も【弦月の牙】のリーダーの凄さを見せつけてやれ!」


ザップが派手にかませと、前方に居たオーク達の注意を引き付けてアルバスとスイッチ (入れ替わる)する。


「任せろ、孤月斬‼︎」


アルバスの渾身の一振りが飛ぶ斬撃となって、縦に並んだオーク達をまとめて真っ二つに寸断した。


「うわぁ、斬撃って本当に飛ぶんだ。漫画やゲームの世界だけかと思ってたよ」


その威力を遠目に見たアラヤは、エアカッターを頚動脈を狙って飛ばしながら、オークの群れへと飛び込んで行く。あそこまで威力は無くても効果はこれで充分だ。

ショートソードを鞘から抜いて、派手では無いが四肢の腱を狙って斬り刻んでいく。

体の自由が無くなったオーク達がバタバタと倒れていく途中で、周りから見えないように【弱肉強食】を使用して、一体のオークの首を噛み千切る。


『アラヤ君、感覚共有してないよ~⁉︎』


『あっ⁉︎ごめん‼︎』


一緒にいる時に特殊技能(ユニークスキル)を使用する場合は、アヤコさんとサナエさんにも感覚共有を掛ける約束になっている。

少し遅れたが、2人に感覚共有を掛けて染み渡る快感を共有する。


「ああっ!まだ食べ足りないけど、人目があるからなぁ!」


のしかかるオークの遺体を押し退けて、残りのオークに突進する。ショートソードは鞘に戻して、オークの装備する鎧をタッチして回る。もちろん、誘爆性付与のオマケ付きでだが。近くに居た全てのオークに触れ終わると、直ぐに距離を取って手をかざす。


「フレイム‼︎」


一体のオークに火炎が当たった瞬間、周りのオークに誘爆して大爆発となる。


「うぉぉぉっ⁉︎」


突然の爆発に、オークも冒険者達も大注目だ。少し気持ち良すぎて、やり過ぎてしまったかもしれない。


『今ので、オーク達が逃げ出しました。追撃しますか?』


『そうだね、皆んなで殲滅戦としようか!』


「良かった、留守番は退屈でしたからね!」


「私も久しぶりに体を動かさないとね!」


ソーリンとサナエさんも、待ってましたと言わんばかりに武器を取り出して飛び出した。

楽しそうに戦う彼女達を見て、アルバス達は呆気に取られていた。


「ふぅ、片付いたみたいだね」


馬車前に集まった皆んなに、ウォータを大量に掛けて血を流し、直ぐ様ホットブローで衣類を乾かしていく。


「何か滅茶苦茶な人達だな」


目の前で行われる一連の流れを、ただ呆然と眺めている。あれだけ派手に魔法を使ったのに、このような些細なことにも惜しみなく魔法を使っている。この少年の魔力量は、ひょっとしたらフロウと同じくらいあるのではないか?


「そこまで戦えて、何故一つの商会の護衛だけをしているんだい?冒険者としても充分通用すると思うけど」


「ああ、ギルドに縛られたくないので、冒険者にはなる気はありません。バルグ商会とは家族ぐるみで仲良くさせて頂いてますから、これくらいは当然なんですよ」


全員を乾かし終えると、アラヤはアルバス達にも一応尋ねる。


「良かったら、洗います?」


「あ、いや…」


「は~い、お願いしま~す!」


断わろうとしたアルバスを押し退け、返り血で赤くなった拳闘士のアニが、我一番とアラヤの前に出る。

先程同様に洗い流して乾かして上げると、サッパリしたと喜んでいる。他の皆んなは対して汚れなかったからと、遠慮して断った。


「さて、再び出発してもいいかね?」


ガルムさんが、荷台から待ちくたびれたと顔を出して言った。


「はい、そうですね。出発しましょう」


オーク達の遺体も一箇所に集めて燃やしたし、近くに敵の気配はもう無い。時間にして僅か20分程の戦闘だったが、辺りの地形は来た時より荒れていた。

再び動き出した馬車の中で、アルバス達の話題はアラヤ達の事で持ちきりとなった。


「後から出てきた御者の槍捌き、あれはハルバードだったか?中々の腕前だったぞ?」


「俺は輪っかを持った可愛い子に釘付けだったね。オークも見惚れながら斬られてたぞ?」


「全員が戦闘要員だったとはな。それは護衛は要らないわけだ。納得だよ」


「あの少年、アラヤ君だっけ?魔術士じゃなくて魔法剣士だったんだね~。ひょっとして、リーダーと同じくらい強いんじゃない?」


「1人でも良いから、うちのパーティに参加して欲しいものだな」


「それは無理っぽいな」


全員は残念そうにハァとため息をついた。聞き耳を立てていたガルムは、フフッと見えないところで笑っていた。




「他人の戦い方も参考になるね」


後ろの馬車内でも、反省会が行われていた。と言っても、反省する点はあまり無いわけだけど。


「クララは今回、魔法は使わなかったんだね?」


「はい、必要無い、思ったです」


「確かにね。でも、アイスを足場に使った戦闘訓練なんかもできたかもしれないよね?」


「ああ、盲点、でした」


気付かなかったと、項垂れるクララの頭を撫でてあげると、結果、直ぐに立ち直る。


『オークを食べて、新たに何を覚えましたか?』


『えっとね、新たに覚えたのは、鈍感痛覚LV 1、絶倫LV 1だよ。持ってて熟練度レベルが上がったのは、超嗅覚がLV 2になった』


『絶倫⁉︎』


突然サナエさんが咳き込んで、クララがビクッと毛を逆立てた。


『それは大変、都合の良い偶然ですね』


『ん?どういう事?』


『いえ、何でもないです』


含みを持たせたアヤコさんと、顔を赤らめるサナエさん。何か企んでいるのか?


「ご主人様?」


「うん、何でもないよ」


まぁ気にしなくても大丈夫だろうと、クララのモフモフに頭を埋める。はぁ、やっぱり気持ち良いね。

クララも嬉しそうに尻尾を振り振りしている。


「ふぁぁ…。あれ?ちょっと、暗いんだけど⁈」


カオリさんが目覚めたようで、木箱の中で蓋を叩いている。

蓋を開けてあげると、既に馬車に乗っている事に気付いて、安堵のため息をついた。


「良かったわ。無事に王都は出れたのね。嫁入審査会議中に寝ちゃった (仮死状態)みたいで、心配してたんだよね」


「は?何その会議」


「あ…何でもない」


思いっきり目を逸らすカオリさん。またもや、俺の知らないところで話が進んでいたようだ。これは少し、アヤコさんにもガツンと言わないといけないようだね?



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