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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第5章 自重が足りてないって言われたよ⁈
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68話 護衛兵リッセン

「何ですの?バルグ商会の者達が揃った?ああ、いつかの手紙を書いたアレですわね?分かったわ。今日は都合が悪いから、明日にでも来るように伝えてちょうだい」


「ハッ!」


威厳というにはまだ足りない、おそらくは王妃様の真似事みたいな態度で、堂々と振る舞う可愛らしさたっぷりの王女様に、彼女の護衛兵であるリッセンは、つい笑顔でにやけるのを必死に我慢しながら敬礼をやり遂げ、その場から素早く退室する。

(ああ、今日のミネルバ様も何とも愛らしい事か!)

入り口扉の横には、同僚のエドガーと、ミネルバ様専属侍女のマーレットが待機している。


「私はミネルバ様の用事で離れる。後は頼むぞ」


「ああ、任せとけ」


「畏まりました」


防具を脱いで私服に着替えたリッセンは、バルグ商会に向かう為に王城を後にした。


(バルグ商会のガルム=バルグ。前回会った時の印象は、ドワーフの商人とは思えない程の物腰柔らかな人物だった。しかし監視者の報告では、ここ数日、王女の人柄や風評を調べていたらしい。商人としての下調べだと思うが、今回は彼以外の者達が来る。私が王女に会うに値する人物かを見極めてやる)


バルグ商会王都店。王都でもその名を誇る大型商店だ。ラエテマ王国内にある、品質の良い様々な商品を揃えており、王室からも信頼されている。


「いらっしゃいませ~」


店内に入ると、仕事をしていた店員達は作業を止めて頭を下げる。少々謙り過ぎな気もするが、悪い気はしない。


「すまないが、ガルム殿は居られるかな?」


「社長ですか?面会のご予約はおありでしょうか?」


「予約?ああ、すまん。予約は無い。だが、そちらの準備ができたと連絡が来たのでね。ミネルバ王女様からの伝言を伝えに来たのだ」


「王女様…⁉︎し、少々お待ちください。確認を取って参ります」


ガルム氏は、普段から様々な者達と面会しているのだろう。その対策で予約が必要なんだとは思っていなかった。

つい王女の名を出してしまったが、準備ができたという見解は、こちらの監視者からの報告であり、ガルム氏から面会を求めて来た訳では無い。


(明らかに監視してましたって思われたな)


程なくして、先程の店員が戻って来て、応接室へと案内された。

扉を軽くノックして開けると、そこにはガルム氏以外にも数人同席していた。


「これはこれは、確かミネルバ王女様の護衛をなさっているリッセン様でしたな?」


「ええ、突然の来訪申し訳ない、ガルム殿。どうやら面談中の様子、もうしばらく待った方がよろしいか?」


「いえいえ、彼等は商談相手ではありません。気になさらず彼等も同席でお話を伺わせてください」


「うん?」


よく見ると女子供ばかりで、ガルム氏の身内といったところか。


「ミネルバ王女様より、貴方方の製造販売している商品の数々に感銘を受けたので、是非お話を伺いたいとの御要望でございます。しかし、誠に申し訳ないが、ミネルバ様のご都合により、明日なら座談会ができるとの事です」


「なるほど、では謁見は明日がよろしいという事ですな?」


「そういう事です。是非ともミネルバ様の為にご足労願いたい。しかし、ガルム殿以外の制作に携わった人物が、王都に着いたと聞いたのだが」


ガルム氏なら誰から聞いたとかは、言わなくとも分かっているだろうから説明は省く。


「ええ、この方がそうですよ。最近の我が社の新商品の開発、制作を担当しているアラヤ=グラコ殿です」


紹介されたのは、落ち着いた雰囲気の子供だ。前髪の一部が白髪になっている点以外は、見た目は普通の人間の子供だ。しかし、苗字があるという事は、貴族の家系だという事か。


「初めまして、リッセン様。アラヤ=グラコと申します。この度のミネルバ王女様との座談会への御招待、有り難く承りました。因みに、許されるのであれば自分の妻も同席させたいと考えておりますが、どうでしょうか?」


「妻だって?」


おいおい、子供のくせに結婚してるのかよ⁈うらやま…いや、本当かは怪しいものだ。疑いの眼差しでアラヤを見てしまう。


「はい、自分はこのような見た目なのでよく驚かれるのですが、17歳と成人はしております。妻というのも、ここにいる彼女達です」


彼の左右に立ち並ぶ二人の若い女性が、笑顔で一礼する。

二人も居るのかよっ⁉︎思わず突っ込みたくなるのを抑え、笑顔を返してみせる。


「開発と制作に携わっているのであれば、お二人だけならば大丈夫かと思います」


「ご主人様、私も行きたい」


突然、少年の足元から銀色の狼が顔を出した。思わず帯刀している剣に手を添えていた。


(シルバーファング⁈しかも、喋っているだと⁈)


「ダメだよ、クララ。私だって行きたいのを我慢しているのだから」


その銀狼を宥めるように頭を撫でるのは、ガルム氏に似たドワーフの青年だ。シルバーファングは魔物ではないが、野生の狼としては頂点に君臨する程の知能と攻撃力を持つ。この中にシルバーファングを従える調教士(テイマー)が居るのか?


「そ、それでは、四名での出席という事で宜しいか?」


「はい、よろしくお願いします」


「では、王女様にはそのようにお伝えします」


内心驚くばかりで、この少年がどういう人物かを結局見極められなかった。影達に再び監視を指示するかなと、リッセンは席を立って部屋から出た後に、中から聞こえた会話に足を止める。


「ガルムさん、自分はちょっと冒険者ギルドに顔を出してきます」


「ああ、トーマス殿に顔見せかね?無理に行く必要は無いと思うが、律儀だね」


(トーマス…冒険者ギルドのマスターか。どんな関係があるんだ?)


「私達も行こうかな」


「サナエさん達は遠慮してもらおうかな」


「え、何で?」


「だって、冒険者ギルドで女性を連れて歩いてたら、周りから反感買うのは目に見えてるからね。それに、顔見せとクララの従獣としての登録をしてくるだけだよ」


「アラヤ君、ソーリンは私の手伝いで一緒に行けないのだが、冒険者ギルドの場所は分かるかね?」


「道すがら、誰かに尋ねるので大丈夫です」


そう聞こえ、リッセンはこれだ!と商店の外に出て、物陰からアラヤ達が出て来るのを待った。

しばらくして出てきたアラヤと銀狼の後を、少し離れた地点から尾行して、アラヤが道を尋ねる素振りを見せたのを見計らって登場した。


「やぁ、アラヤ殿。一人で何処へ行かれるのかな?」


「あ、リッセン様。もう王城へとお帰りになられたのかと思っていました」


「お、王女への報告は代理に頼んだのだ。今日の私は午後からは非番でね。良かったら、王都の街中を案内するよ?」


「それは助かります!実は冒険者ギルドに行きたいんです。この子の従獣登録をしたいので」


「ああ、じゃあ冒険者ギルドに案内するよ」


よし、いろいろと探りを入れてやると考えているリッセンの後ろで、アラヤとクララは面倒だなぁと思っていた。彼が立ち聞きしていた事も、尾行していた事も気配感知で最初から分かったいた。

彼がアラヤ達を不審だと思うのは当然だろう。王女に怪しい人物を近づけるわけにはいかない。彼にはその責務があるのだから。


冒険者ギルドへと着くと、周りの冒険者達は少年に付き従うクララを見て驚いている。これが正常な反応だとリッセンは頷いていた。


「おお、来たかアラヤ殿!」


大きな声が聞こえ、アラヤ達の元へトーマスがやって来た。ギルマスが話しかけた事で、あの坊主何者だ?と更に注目を集めることになった。この場に、もしもサナエさん達まで居たらどうなっていたか…。思わず身震いしてしまう。


「とりあえず、こっちで話そう」


注目を集め過ぎている事にようやく気付いたトーマスは、アラヤを応接室へと案内する。その後に続くリッセンを見て、首を傾げた。


「この男は?」


「ミネルバ王女の護衛兵のリッセン様です。冒険者ギルドを案内して下さったんです」


「ほぅ、王女の護衛様ね…案内は済んだんだから、帰ったらどうだい?」


(まさか、アラヤを王家の護衛に引き入れるつもりか⁈そんな事はさせんぞ!アラヤはギルドに入ってもらう!)


「失礼な物言いだな。彼には街を案内すると約束してる。同席するのは当然だろう」


(このギルドマスター怪しいな。この少年とどんな関係か暴かねば!)


何故か二人は、勝手に火花を散らしていた。そんな二人をアラヤは気にせず、先に応接室に入ると、クララのモフモフで癒されていた。


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