67話 王都への道のり
王都までの道のりは、ムーブへイストのおかげで3日で王都付近まで来ることができた。道中の道は整備は行き届いており、魔物に襲われる事など一切ない。
時折、冒険者達を見かけた。どうやら、彼等が王都近辺の魔物を退治しているようだ。
国からギルドへの要請が一定の周期であるのだろう。
ただし、それは魔物に対してだけのようだ。
「クララ!それ以上はダメだ!あくまで生け捕りにするんだ!」
本日、2度目の盗賊の襲来にあっていた。
銀狼状態のクララは、持ち前のスピードで後方にいる弓使い達を次々と噛み伏せていく。
前方の敵は、アラヤとソーリンで難無く取り押さえると、サナエさんが手足を縛っていく。あっという間に返り討ちにあい、リーダーらしき男が一人で逃げようとする。
「ちくしょう!商人とガキ達だけだと思ったのにっ!」
なりふり構わずに背を向けて走るその男は、首元にチクッと何かが刺さるのを感じてそのまま前のめりに倒れた。
「よし、片付いたね。また荷台に乗せておこうか」
荷台には、前の野盗達が猿ぐつわと手足を縛られた状態で乗せられていた。新たに担がれて来た同業者達を見て、更に震え上がっている。
「荷台が、一気に狭くなってしまいましたね」
2組で30人くらい居る。こうなると、彼等を物のように重ねて乗せるしかなかった。
「見た目最悪だね。こっちは悪くないのに、罪悪感を覚えるよ」
「ご主人様、それなら、嚙み殺し捨てるが早い」
喋る狼の発言に、盗賊達は声にならない叫びを上げた。うるさいのでジャミングで音を塞ぐ。
「次来たら、ロープに括り付けて引きずるのはどうでしょう?」
「いや、それ拷問じゃない?」
「早いとこ、衛兵に引き渡そうよ」
これ以上、増えても面倒見切れない。馬車を急がせて早く王都に着くとしよう。
「いくらなんでも、流石にもう来ないよね?」
サナエさん、それフラグですよ?案の定、走る荷馬車の後方から、馬に乗った5人の野盗が現れた。
「来ちゃったよ。おそらく、前方で待ち伏せしてる奴等が居て、挟み撃ちにする気だよ」
「どうするの?」
「後ろは、アヤコさんがやっちゃって」
「分かりました」
笑顔で吹き矢を取り出すアヤコさん。くれぐれも間違えて猛毒の矢を使わないでね?
「クララは俺と待ち伏せ班を叩く。ソーリンはそのまま馬車を走らせていいからね。直ぐに追いつくから」
「分かりました」
気配感知に反応が現れた。その場所をクララも感知したらしく、アラヤを見ている。
「殺さずに気絶させればいい。ああ、武器は奪って捨ててね」
殺すことはできないが、無力化させないと、他人を襲うかもしれないからね。
「行くよ!」
一斉に飛び出して潜伏地に走る。馬車よりも速く向かってくる影に、潜んでいた盗賊達は慌てて武器を構えて迎え討とうと現れた。
「「アイス!」」
迎撃すらさせないように、アラヤと同魔法をクララも放つ。クララも、相手を殺さないようにアイスを選んだのだろう。数の半分が体の一部が凍りつき、戦う意欲は砕けたようだ。残りの盗賊も逃がさないように意識を刈り取り、盗賊達を一箇所に集めてロープで一括りにする。
「後で捕まえに来て貰おう」
最後に、逃げる気が起きないようにコラープス (虚脱)を掛けておく。
「さて、馬車を追いかけよう。ごめん、クララ。背に乗せてくれる?」
「もちろんです、どうぞ」
アラヤはクララの背に跨がると、己にグラビティを掛けて軽くなったので、クララがアレ?って思ったようだ。
「クララにもムーブヘイストを掛けてあげるよ。全力で疾走してみて?」
「私の最速、お見せします!」
踏み出した一足目で、全身に重圧が掛かる。次の瞬間には、風よりも速く道を駆けていた。
顔を上げていると息ができないので、低い体勢になる。自分がムーブヘイストを掛けて走るよりも、段違いに速い。周りの景色がスルスルと流れていく。と、そこで、
「あっ、馬車は?」
とっくの昔に追い越してました。馬車が追いついた時に、サナエさんは呆れた顔をしていた。
「クララの全力疾走、凄かったよ」
「私自身、魔法の効果に驚いた。あの速さ、初体験でした」
おかげで王都の入り口は目前にある。馬車を進めて門の前に行くと、衛兵達がやってきて身分証の提示を求める。ソーリンがいつものように対応している横で、アラヤは他の衛兵を呼んだ。
「あの、来る途中で盗賊達を捕まえたので、引き取ってもらえませんか?」
「ん?盗賊を捕まえただと?」
「はい、荷台に乗せています」
アラヤに連れられて荷台に回り込んだ衛兵は、その光景を見て思わず悲鳴を上げた。
「うわぁぁぁっ⁉︎」
「ち、ちょっと、落ち着いてください」
「コイツ等は、穴熊盗賊団に、鷹の爪盗賊団!最近、被害届が出てる問題の盗賊団じゃないか!お前達だけで、この盗賊団を倒したのか⁈」
「あ、正確には、縛った後、道中に置いて来た奴等も居ますけど…」
「他にも居るのか⁈た、ただの商人じゃないな?」
どうやら、少しは有名な盗賊団だったらしい。とにかく、奴等を下ろして衛兵達に引き渡す。後で放置してある盗賊達も捕まえに行ってくれるらしい。
そこでようやく王都に入る許可が下り、中へと入ることができた。
「うわぁ、これがラエテマ王国の王都かぁ」
見渡す視界に広がる、広大で味のある建物の数々。中でも、当然のように一番大きな存在感を放つラエテマ城は、王都の中央に座していて、その周囲には幅がある広い水路が侵入者を阻んでいる。王城への入場ルートは、跳ね橋が下りないと入れないという事だ。
「ソーリン、これからどうするんだ?」
「先ずは父を探しましょう。商工会ギルドか、バルグ商会王都店にいるでしょう」
ソーリンは、初めにバルグ商会に向かう事にした。王都の繁華街は、最近見かけたどの街よりも活気と人で溢れていた。
バルグ商会王都店も、五階建てでデピッケルの倉庫のような大きさの建物だった。
中に入ると、前世界のデパートを連想させるような広さと、豊富な品揃えが待っていた。
「いらっしゃいませ~。あっ、ソーリンお坊ちゃん!」
「お坊ちゃん?」
「そ、その呼び方は止めてくれ。私ももう成人してるんだぞ?そんな事よりも、父はここに来ていないか?」
「はい、社長でしたら奥に居ますよ。呼んで来ましょうか?」
「ああ、頼む。アラヤさん、今のうちに調達した積み荷を荷馬車内に出してもらえませんか?ここで一度、全部下ろしますので」
「分かった」
アラヤは荷馬車に戻り、荷台で、手に入れた塩や海産物、葡萄酒の樽を次々と亜空間収納から取り出して並べていく。
荷台は積み荷で一杯になり、足の踏み場も無くなった。
亜空間収納が無かったら、この量を運ぶのは無理だったかもしれないな。
「全部出しといたよ」
「ありがとうございます。後はここの店員が回収します」
店内に戻ると、丁度ガルムさんが奥からやって来た。
「アラヤ殿、奥方達も、成人式以来ですな。それで、行商人の旅はいかがですかな?」
「ええ、貴重な体験をさせてもらえてます。とても楽しいですよ」
「それは良かった。ここで立ち話も人目が気になります。奥の部屋へと移動しましょう」
ガルムさんに案内され、奥の応接間へと入った。全員が室内に入ると、ガルムさんは声の音量を下げて、アラヤ達に話し出した。
「先に着いたここ数日の間、私は少しばかりミネルバ王女とその御友人のイッシキ殿を調べてみました」
「王女達をですか?」
「はい。相手の事をよく知らずに会うほど、怖い事はありませんから」
「それは、確かにそうですね」
「それで、今回の招待された件で分かったのは、会いたがっているのは王女ではなく、イッシキ殿だという事。彼女の噂や王家からの処遇の状態は、はっきり言って不可解ですな。私の正直な意見として言わせて頂くと、あまり会いたくは無いというのが本音です」
ガルムさんのその表情は、関わる事が怖いというよりも、関わると面倒そうだという表情に見えた。彼女には、一体どんな噂があるというのだろうか?




