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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第2章 魅惑の生活が怖いって思わなかったよ⁈
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25話 貪る者

洞窟の出口に近くなるにつれて、外での声や金属音等が聞こえてくる。


「サナエさん!出過ぎだ!少し退がれ!」


「マワリコンデ、カズデオシコメ!」


おかしい。口の中がさっきから唾が沢山出る。口の中全体に旨味が広がっている感覚がある。何も食べてもいないのに。

頭も少しだけふらふらする。気持ち良い酔いに浸っているようだ。


『血液・唾液捕食による技能(スキル)吸収が100%に到達しました。言語理解を習得しました。感覚共有が40%亜空間収納が20%剣技5%と、捕食量不足により習得出来ません』


あぁ、アヤコさんのキスで言語理解を習得したのか。どうりで魔物の言葉が分かるのか。


『捕食吸収による技能習得が10種を超えました。条件取得により暴食王のレベルが昇華します。昇華ボーナスにより、特殊技能(ユニークスキル)弱肉強食LV 1を習得しました』


「特殊技能…?」


聞き慣れないワードに疑問符を浮かべるも、目の前の戦いに思考が切り替わる。


「エアカッター!」


守衛達が苦戦していたところへ、アラヤは、攻勢だったゴブリンを魔法で数体斬り飛ばして助けに入る。


「アラヤ!アヤは無事⁈」


「うん。大丈夫だよ!今、子供達と中に居る」


サナエさんは安堵の表情を見せる。うん、気持ちは分かるけど、まだ終わってないからね。俺もちゃんと集中しないと!


「キサマ‼︎イマ、マホウツカタナ⁈」


ゴブリンキングが、アラヤに向かって大剣を向ける。このゴブリンキング、実はかなりヤバイ奴だった。


「ソノスキル、オレサマモラウ!」


コイツの鑑定結果がこれだ。



????


種族 ゴブリン種 (キング) 雄 age ??


体力 806/806

腕力 311/311

耐久力 214/214

精神力 35/35

魔力 41/41

俊敏 163/163

魅力 12/100

運 31


状態 正常


職種 ???


技能 貪る者LV 1 鑑定LV 1 亜空間収納LV 1 言語理解LV 1 身体強化LV 2 物理耐性LV 1 魔法耐性LV 1 気配感知LV 1 威圧LV 1 一点突貫LV 1 剣技LV 1 槍技LV 1 弓技LV 1 自己再生LV 1 毒耐性LV 1


ステータスも高い上に、もの凄い技能の数だ。それに、コイツの言動も気になる。


「オマエ、カンテイデキナイ?ナゼ?マホウカ?」


しかも鑑定を使っているという事は、技能を理解して使いこなしているという事だ。


「ライナスさん!周りのゴブリン達は任せて良いですか?」


「ああ、任せな!サナエさんの踊りが有れば余裕だぜ?」


サナエさんの戦士達の鼓舞が、ライナス達を無双状態にしている。まぁ、相手がゴブリンだからだけど、舞が視界に入る仲間限定での能力上昇。やっぱり踊り子最高だよね。


ゴブリン達はライナスさん達に任せて、俺はゴブリンキングを引きつける事にした。洞窟から離したい事もあるけど、コイツには聞きたい事があるからだ。


「デカゴブリン!俺の技能が欲しいんだろ?こっちに来いよ?」


「キサマ!オレバカニシタナ⁉︎オレサマハオウダゾ‼︎」


アラヤの簡単な挑発に乗り、ゴブリンキングは追って来た。少し開けた場所に誘い込むと、振り向き様にエアカッターをお見舞いする。


「グォッ⁈」


首や腕に命中するも、その威力は魔力耐性で軽減されて、大したダメージになっていない。付いた傷も、時間が経つにつれて塞がっていく。


「グフフ、ソンナモノカ?」


魔法が脅威ではないと感じたゴブリンキングは、大剣を構えて間を詰めてくる。

アラヤは威力が少ないと分かりつつも、アイスとエアカッターで牽制して一定の距離を取る。何故なら、アラヤは防具を着けていない。理由は単に彼の怠慢なのだが、何者も俊敏の高さで彼に勝てなかった為、防具を着けない事に慣れてしまっていたのだ。

保護粘膜を体全体に纏わせているが、あくまでも衝撃緩衝材代わりでしかない。なので、ドワーフ並みの腕力のキングの一撃を受けてしまうと、アラヤもただでは済まないというわけだ。


「チョコマカト、ニゲルサルメ!」


ゴブリンキングは剣を地面に突き刺して、ガウ!と吠えると、目の前に黒い渦が出現した。その中に手を突っ込み、渦から抜いたその手には弓と矢筒が掴まれていた。


「亜空間収納⁈」


見惚れてる場合じゃない。キングは直ぐに弓を構えて、アラヤに矢を放ってきた。

その精度は高く、かろうじてショートソードで叩き落す。速さはまだ対応できる速さだ。やはり、職種が弓使いと違うからという事だろうか。しかし、弓技が脅威なのは変わらない。

三連射、追尾する矢と、次々と弓技を使用してくる。


「グラビティ!フレイム!」


アラヤは魔法で回避しつつ、反撃の機会を狙う。


「フハハ!オレハオウダゾ!ムダナアガキダ!」


「なぜ技能をそんなに持ってるんだ⁈」


「ソレハ、オレガエラバレタカラダ!オレハマモノノオウ、()()()()()()()ナノダ‼︎」


「暴食王?お前が?」


「ソウダ!オレサマガタベレバ、スキルヲウバウ!タベタラウバウ!マサニ、ボウショクオウタルユエン!」


おそらく、それは技能貪る者の能力で、これはきっと捕食吸収の下位互換にあたる技能だろう。


「お前はあの日、あの洞窟に居たクラスメイト達を食べて技能を手に入れたのか!」


「グハハ!アレハヨカッタゾ!カッテニキタ、ニゲマドウニンゲンドモヲ、ムサボリタベルダケデヨカッタノダカラナ!ヨウイシタアノモノタチニ、カンシャダナ!」


「用意しただと⁈」


「キサマニハ、カンケイノナイハナシダ!オレハヤツノイウトオリ、ボウショクオウニナッタ!アトハマホウヲオボエレバ、マジンドモニフクシュウデキル!」


「それで子供達を狙ったのか!」


「トウゼンダ!コノヘンノオオキイニンゲンドモハ、マホウモタナイヤツバカリ!ナラバコドモネラウ!オレサマカシコイ‼︎」


勝手にいろいろと答えてくれる。気持ちに素直な奴だな。しかし、勘違いは正してやらないと。


「悪いけど、暴食王は俺だから」


「フ、フハハハハハッ‼︎キサマ、ヨワイニンゲン。ボウショクオウ、ナレナイ」


うん。弱いのは分かってる。でも、ただ貪られるだけの存在ではない。

あの日、あの場に居たクラスメイト達。決して好きな奴達ではなかったけど、悪戯に蹂躙されて殺されるのを喜べる程、俺は憎んでもいなかった。

子供達もそうだ。あの教室に漂う血の匂いと壊された木箱は、まだ最近のものだった。ヤブネカ村以外の村の子も、攫われて食われたのだろう。


俺はコイツを許せない。しかし、それは殺されたクラスメイトの所為じゃない。


俺はコイツを逃がさない。しかし、それは大切な人々の為じゃない。


俺はコイツを喰らいたい。そうだ、これが今の俺の本心だ。体が、心が、魂が、俺にアイツを喰えと訴える。


俺は今、自分が自分じゃない感覚に捕われている。俺の脳内で、あの技能が浮かび上がる。


【弱肉強食】


「お前を喰らう!」


アラヤは勢いよく飛び出した。キングは弓を構えるも、その弦をエアカッターが切り裂く。キングは直ぐに亜空間から大剣を掴んで取り出した。


「フレイム!」


「グァァッ‼︎」


そのタイミングを狙って目をフレイムで焼いた。堪らず大剣を離して目を抑えるキング。暴れている間に、鎧の繋ぎを斬り装備を外してやる。


「グラッ‼︎キサマ!ユルサナイ!」


既に目も回復している。やはり、小さなダメージでは倒せない。

キングは大剣を掴んで斬りかかってくる。アラヤはショートソードで受け流しながら後退った。やはり剣撃は強く、まともに受ける事は出来ない。


「ヤハリ、ケンハヨワイナ!」


キングはこれだと、立て続けに剣撃を浴びせてくる。

隙を見て、再び目を焼こうとしたその時。


「ツカマエタ!」


その腕を掴まれ持ち上げられる。保護粘膜を貫く爪で左手に激痛が走る。


「キサマノスキル、ウバッテヤル!」


そのままその腕をガブリと噛み付いた。アラヤは痛みで叫び声を上げてしまう。


「アラヤ‼︎」


「アラヤ君‼︎」


後方で誰かの声が聞こえたが、それ以上に頭に声が響き渡る。


喰らえ‼︎ 喰らえ‼︎ 喰らえ‼︎ 喰らえ‼︎


腕を噛まれた状態で、ゴブリンキングの首元にアラヤも噛み付いた。


「グガッ⁈」


その顎の力に驚く。強靭な自分の体を、小さな人間が噛みちぎろうとしている。メキメキ、ブチブチと筋肉が千切られる痛みで、ゴブリンキングはアラヤを放り投げた。

おかしい。自分が噛んだ小さな腕は、歯型がついて血が滲んだ程度で終わっている。確かに噛み千切る寸前だったはずなのに。


ゴクッと喉を鳴らすアラヤは、光悦な表情を浮かべていた。その姿に、ゴブリンキングは無意識に後退る。


「ナ、ナンナンダ!キサマハ!」


「言ったろ?俺が暴食王だって」


後退りながら、痛みの引かない首に手を当てる。掌には大量の血が付いてきた。回復していない。なぜ?どうなってる?混乱するゴブリンキングは、木の根に躓き尻餅をついた。


「美味しかったぞ。じゃあな」


ショートソードを胸に当て、一点突貫で貫いた。ゴブリンキングは困惑した表情のまま、絶命して横に倒れた。


「アラヤ‼︎」


振り返ると二人が駆けてくる姿が見えたが、急な眠気に襲われ地面に倒れてしまった。二人が呼びかけているが、ごめん。今はこの余韻に浸らせてくれ。

ゆっくりと瞼を閉じて、そのままアラヤは眠りについたのだった。

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