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スキルが美味しいなんて知らなかったよ⁉︎  作者: テルボン
第12章 御教示願うは筋違いらしいですよ⁈
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177話 姉弟

 アラヤ達とは違い、ただ待たされている精霊達は、窓の外を眺めながらソワソワとしていた。


『うう、力を試したいぜ!』


『ダメ。火精霊(サラマンドラ)だと、村無くなっちゃう』


『な、何だよ、そんな事する訳無いだろー!』


『ここには風精霊が多いわね~。私達がいろいろしたら、あの子達が張ってる結界壊れちゃうかもよ~?』


『うん、止めておくべきだな』


『落ち着きまちょう』


『…サラマンドラだけ、外に行けば良い』


『ちょっ、酷くないか⁉︎エキドナ』


 精霊達がワイワイ言い争いで戯れている横を、エルフ達が温かい目で見守る一方で、アラヤ達はイシルウェとの出会った経緯を説明していた。


「…そうですか。イシルウェがそんな事になっていたなんて…だから、外は危ないから出るべきでは無いと言っていたのに…。しかしこれも、私が目を離したから起きた事…」


 イシルウェが仕事中に大河に落ち、ラエテマで捕まった事実を知ったアルディスは、目に涙を溜めて当時の自分の不甲斐なさを嘆き出した。


「確かにいろいろありましたが、今の彼は自由を取り戻し無事にムシハ連邦国まで帰って来ました。その際に彼を助ける為に匿い、逃走の手助けに尽力してくれた子が、養子となったチャコです。チャコは彼を大いに支え、彼は彼女を養子にと決めたんです。そんな彼等には沢山助けてもらった。今は私達の掛け替えの無い大切な仲間です」


「ええ、貴方様達はイシルウェの命の恩人という事ですね。村長という立場からだけでなく、唯一無二の肉親の姉としても、感謝の気持ちを述べたいと思います。ありがとうございました」


 彼女は深々と頭を下げて、真摯に感謝の意を伝えている。

 姉弟って、こんなに大事にされるものなのか。独りっ子だったアラヤには、少し羨ましく感じた。


「…それで今回、村からの御礼として、贈り物をご用意させて下さい。つきましては準備ができる3日程、村にお泊まり頂きたく思います」


「あ、いや、そこまでして頂かなくても…」


「まぁ、そう言わずに」


 長居する気は無いのに、アルディスは満面の笑顔で是非!と圧をかけてくる。どうしようか?と女性陣を見ると、彼女達も困ったですねと返答に迷っている様だ。


「そうですね、それじ…」


『アラヤ様!チャコちゃんが拐われました!』


 突然、ハウンからの念話が入る。あのシェルター内からは、簡単にはチャコを連れ出す事は出来ない筈だ。


『落ち着いて。状況を詳しく』


 アヤコ達には、直ぐにテレポートでシェルターに飛んでもらう。

 アルディスは、突然消えたアヤコ達に驚くも、状況を理解した様に大人しくなる。


『換気口からではなく、シェルター内に中位風精霊達が突然現れて、チャコちゃんを見つけると直ぐに取り囲み姿()()()()()したんです』


 姿くらまし…確か、精霊達が元々住んでいる別次元に飛ぶんだったな。という事は、シェルターへの侵入もチャコの誘拐も別次元を介して行ったか。そもそも、人がその次元に行っても大丈夫なのか…?


『ハウンは、アヤコさん達の指示に従って、後から合流してくれ』


 アラヤはアルディスを見て、出来る限りの笑顔で問いただす。


「チャコを連れ出して、どういうつもりでしょうか?」


 敢えて誘拐という言葉を使わないのは、彼女の意図を探るためだ。


「せっかくなので、彼女も村へ招待したところです。イシルウェが、どうしても村に来たく無いと言うのなら、せめて彼女だけでもと思いまして」


 明らかに建前だと分かる。要はイシルウェを呼び出す餌にしようという魂胆だろう。

 彼女は全く悪びれていない様子で、逆に善意でやっているという表情である。


「ならば、せめて私達に話を通して頂きたかったですね。これでは、イシルウェが可哀想でならない」


 アラヤがパチンと指を鳴らすと、彼の周りにサラマンドラ達が姿現しする。前もってから、アラヤが精霊達を呼ぶサインとして決めていたのだ。


『チャコが、別次元経由でこちらに連れて来られている。皆んなで丁重に迎えに行ってくれる?』


『へっ!任しとけ!』


『分かった、丁重にね!』


『丁重にだな?』


『丁重、でいいの?』


『分かりまちた』


『…フフッ、()()()?』


 何かにやる気に溢れた精霊達は、姿くらましでその場から消えた。まぁ、別次元の行動は精霊達に任そう。


「あら、心配しなくとも、無事に此方に到着致しますのに」


「彼女は精霊視認も精霊言語も出来ない。心配するのが当然でしょう?それとも、…敢えて怖がらせようと?」


 少し語尾を強めて、アルディスを睨む。彼の姉なので敵対はしたくないが、事と次第によっては考えないといけないだろう。


「どうやら、お気を悪くさせてしまったようですわね?でも、彼女を招きたかったのは本当です。何しろ、イシルウェの養子という事は、私の子と同然ですから」


「はい?」


 そこは弟の娘だから姪じゃないのか?と、アラヤが首を傾げると、アルディスはフフッと笑い出す。


「イシルウェは、私の弟であると同時に、()()()でもあるのです」


「は⁈姉弟で婚約者⁈」


「そうなんですよ。実は…」


「誰が婚約者だぁ‼︎姉さん!チャコを返すんだ‼︎」


 テレポートで到着したイシルウェが、ズカズカと怒りを露わにして彼女に詰め寄る。


「あらぁ、久しぶりの再会なのに、お姉さんに酷くないかしら?私はこんなにも会いたかったのに」


 イシルウェの首に、スルリと腕を絡めてハグをしようとするも、彼からその腕を払われる。


「酷いわ…。まだ、私の気持ちには応えてくれないのね?グスン…」


 アルディスは、明らかに嘘泣きだと分かる演技で同情を誘っている。その態度にイシルウェはイライラしながらも、彼女から距離を取った。怒りがあるとはいえ、やはりまだ受け付けないのだろう。


「イシルウェ、チャコは今、精霊達の次元に居る。サラマンドラ達を向かわせたから、もうすぐ戻って来るよ」


 少なくとも、向こうに置き去りにされないと分かった事で、イシルウェはハァーッと安堵の溜め息を吐いた。


「アラヤ殿、ありがとう!」


 程なくして、サラマンドラ達が戻って来た。そこには、眠らされたチャコも一緒にいる。


『ただいま~』


『ちょっと、サラマンドラが、ハメ外したの』


『ちょっ⁉︎言うなよ、水精霊(シレネッタ)


『うむ、アレは爽快であったな!』


『止めれなかったですぅ…』


『…これで、しばらくは向こうに行けない…』


 一体何をやらかしたのかは分からないが、キュアリー以外の精霊達は満足している。


「チャコ!大丈夫か⁉︎」


 イシルウェは急いでチャコを抱き上げると、容態を念入りに確認する。


『私が一応、最初に眠らせてたわよ。というか、この子達、限度を知らないの⁉︎』


 遅れて帰って来たモースは、擦り傷だらけの状態で現れた。アラヤも一応、丁重にとは言ったんだけどね。


「まぁ、結果としては来てくれたのだし、当然、貴方も泊まっていくわよね?」


 アルディスの瞳は、期待と願望で輝いている。この人ブレないな…。


「イシルウェ、シェルターや別の地に戻るのは簡単だよ?送ろうか?」


 彼女が知らない場所にテレポートで飛べば、もうモースを使って追いかけては来れないだろう。


「……いや、せっかくだ。チャコに村の案内もしたいし、友にも久しぶりに会うとしよう。但し!姉さんの家には泊まらないからな!」


「ああ、弟が反抗期…。でも、それは愛情の裏返し…よね?」


 アルディスが再び近寄ろうとすると、イシルウェはチャコを抱き上げたまま、部屋を飛び出して行った。これは、かなり重症だよね…?

 それにしても、この世界では身内でも結婚できるとは知らなかったな。それとも、この村だけなのかな?どちらにせよ、イシルウェにその気は無さそうだけどね。

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