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第1章.冴えない毎日

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9.取り囲まれた彼女

 昼は速攻で西田が学の教室に入り、学を外へ連れ出した。何だかんだ、あの中庭が気に入っているらしい。


 すぐに自己紹介ばかりの会話が始まり、何となく互いの経緯を知ることが出来た。


「何で入ったかって?よく聞かれるよ。簡単な理由だ。うちさ、おばあちゃんも母ちゃんも姉ちゃんもこの学院出身なんだ。だから俺も行ってみるかなあーって感じで」


 西田は食べながら元気よく学の質問に答えている。学はその簡単な理由に呆気に取られた。が、何だか羨ましい気もした。


「市はなんでこの学校に?」


 学は正直には答えられなかった。偏差値が……などと、はぐらかすのが精一杯だった。


「そうだ、西田君はどこか部活とか入るの?」


 学は話題を変えた。西田はうーんと唸ると


「いや、帰宅部!だってここ進学校だし、勉強付いて行くのでやっとだし」


と、飯をかき込んだ。


「それにここ、プールないじゃん」


 西田はかつて水泳部にいたらしい。この学校はプールがない。それで帰宅部になろうということだ。


「ていうか、何でそんなこと聞くの」


 尋ねられて、学は口をつぐんだ。金のベルが頭の中にちらついたが、あの大道芸をこなせる自信もなく、あの栗毛の彼女に話しかける勇気も特にない。


「ちょっと気になっただけ」


 弁当に目を落とした学を、西田はいぶかしげに見つめる。


「誰にも構わずやりたいことやれよ。三年もこの学校にいるわけだしな」


 もっともなことを言い、西田は弁当箱を閉じた。


「お?」


 突然西田が声を上げる。


 中庭からすぐの調理室の前に、五人ほどの女子が歩いて来た。皆手に弁当はない。その中に、栗毛の少女が歩いているのが見えた。彼女は壁を背にすると、じろりと他の四人を睨む。四人は彼女を囲んで、互いに何か言い合っている。


「うわ、何か恐ろしー空気だね」


 見てしまった手前目をそらすことも出来ず、二人は彼女らの会話に耳を澄ませた。

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