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第1章.冴えない毎日

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14.宗教部の誘惑

「そりゃひでーな!」

 

 いつもの中庭。西田は一連の話を聞いて、しおらしい学の代わりに憤慨した。


「廃部になりたいんじゃね?きっと続けたくないんだべ」


 それは違うと学は言いかける。


ーーボランティアにしか出来ないベルも、私はあると思う


 そう語った彼女の言葉に偽りはなさそうだった。


(藤咲さんはきっとベルを続けたいんだ)


学は考える。


(でもそこに、俺は要らないんだ)


 学はちらと調理室の方を見る。あれ以来、レイラはこの場所に現れていない。どこか別の場所で食べているのだろうか。


「ところで市さあ」


 西田が話題を変えた。


「宗教部に興味ねえか?」


 学はぽかんとする。


「……西田君、部活とかやらないんじゃなかったっけ」


 すると西田は急に得意気に語り始めた。


「岬が仕入れた話なんだけど、宗教部ってのはボランティア活動をする部らしくて、アレに入っとくと大学推薦に色々有利らしーのよ」


 へーと学は声を出して見せるが、乗り気ではない。


「活動日は火・金な。だからちょっと今日見に行こうかと思ってたんだけど、市もどう?」


 学は考えた。ボランティア……活動内容はいまいち分からないが、きっと誰かの役に立つことでもするのだろう。


 脳内でレイラの言葉がはぜる。


ーーボランティアにしか出来ないベルも……


「分かった。ちょっと覗いてみようかな」


 やった、と西田はにこにこ笑う。



 一年男子三人組が揃うのは体育以外では初めてのことだった。彼らが宗教部の部室に入ると、やにわに宗教部女子が騒いだ。教室の奥に、学には見覚えのある顔があった。


 石室先生だ。学は緊張したが、向こうはこちらのことを特に覚えてはいないらしい。


「どうぞ男子諸君、こちらへ」


 石室は昨日とはうって変わって優しい笑顔を見せた。三人は女子の視線を集めながら、おずおずと後方の席に座る。


「えー、新入生の皆さんこんにちは。私は聖書の教諭でもあり、牧師でもある石室と申します。どうぞよろしくね」


 女でも牧師になれるんだな、と西田がぼそりと呟いた。


「今日は簡単に活動内容を説明します。で、これを聞いてもしその気になったなら……ここから歩いて行ける距離に障碍者の作業所があるのはご存知?そこへ、皆で交流会に行こうと思っています。今週の日曜日ね。良かったら参加してちょうだい」


 石室の説明は、こうだ。


 その施設では簡単なキーホルダーを作る作業場がある。そこへ行き、知的障碍者との交流会、作業体験をするらしい。


 これもまた、未知の体験だ。高校にとりあえず「逃げに来た」学には、とてもやりがいのあることのように思えて来た。


 男子三人はとりあえず日曜に参加しようと約束し、それぞれ家路に着いた。

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