ねぐら入りのツバメ 1993年9月3日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1993年(平成5年)9月3日号掲載
ねぐら入りのツバメ
午後もおそくなると、丸浜川の水面近くを行きかうツバメがふえてくる。夕方羽化するユスリカや蚊がお目当てらしい。風がよどんで蚊柱がたまる観察舎正面玄関はよい餌場らしく、窓すれすれに上昇し、ついと離れてから旋回してまた戻ってくる姿をよく見る。
今年は天候不順のためか、八月も末というのに巣立ったばかりの若鳥が珍しくない。野鳥病院ではいまだに一腹分五羽の巣内ビナを養っている。めす親が死に、残ったおす親が餌を運ばなくなってしまったとのこと。巣立ちまであと三、四日はかかるので、野外に放してやるのは九月中旬になってから。そのころ、あたりにまだツバメが残っているかどうか心配だ。
ここ何年か、丸浜川ぞいに夕方西へ向かうツバメが気になる。西といっても、ツバメがねぐらをとるような大きなアシ原は荒川をあなりさかのぼらないとないので、おとなりの下水処理場の中にねぐらがあるのではないかと思っていた。八月十四日、ねぐらを突き止めたら標識調査をやりたいというHさんが観察台でねぐら入りを見張るというので、私もしばらくつきあうことにした。
午後六時すぎ。うすやみがせまる時刻だ。ツバメが次々に西に向かうが、戻ってくるものもいる。保護区内の池の上空にも何羽かが飛んでいる。そのうちに、湾岸道路のあたりでぐるぐるとダンゴになって上空を飛ぶツバメの群れを見つけた。百羽以上いることは確かだ。やがて群れは観察舎正面やや右手の鈴が浦上空にさしかかり、そのままの位置で飛びめぐりはじめた。高度は三十~五十メートルくらい。西へ向かう動きはまったく見られない。チュルチュル、ジュビジュビと鳴きかわす声が空から降ってくる。日が沈んであたりはだいぶ薄暗くなった。望遠鏡で姿を追うことはできるが、肉眼にはとらえられず、ただ声が聞こえてくるばかり。
二十分以上もぐるぐる飛びまわっていたツバメたちは、三々五々保護区内のアシ原に下りたらしい。声が次第に減り、午後六時四十五分にぴたりと途絶えた。
八月も末になると、日脚が毎日短くなってくる。ツバメたちはしばらくは保護区のアシ原でねぐらをとるだろうが、ねぐら入りの時刻も早くなった。今年育てて放した何羽かの子ツバメたちは、無事に仲間と合流して寝ているだろうか。
冬鳥のさきがけ、コガモがそろそろ姿を見せる時期。夏を味わうことができるのもあとわずかだ。じりじり暑い日があると、妙にうれしい今年の晩夏。




