行徳上空をワシが飛ぶ 1991年2月15日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1991年(平成3年)2月15日号掲載
行徳上空をワシが飛ぶ
護岸堤に並んでいたセグロカモメの群れが、いきなり声もたてずに舞い上がった。岸の日だまりでうつらうつらしていたアオサギたちも緊迫した様子で一斉に首をのばし、空を見上げる。ただごとではない。
乱れ飛ぶカモメのはるか上空に悠然と舞う姿を見つけた。見慣れたタカのチュウヒにしては鳥たちの反応が激しすぎる。尾羽が短いのでトビではない。あわてて双眼鏡を取りに走った。はばの広い翼、いくらかくさび型になった尾は翼にくらべると不釣合いなほど小さい。おまけに巨大な黄色い嘴まで見えるではないか。
「ワシ!ワシが飛んでる!ほら、あそこ」
階段をかけのぼって観察室に知らせた。ワシは新浜鴨場から南新浜小学校上空のあたりをゆうゆうと滑空している。望遠鏡の視野にとらえた姿は、まぎれもないオジロワシの若鳥だった。次第に高度を上げて福栄四丁目上空を舞っていたが、やがてやや西よりに移動して観察舎からは見えなくなった。一月二十九日午後二時すぎ、よく晴れたおだやかな日。東北や裏日本では珍しい種類ではないが、関東ではめったに見られず、観察舎ではこれが二回目の渡来記録だった。それにしてもあのワシくん、ビルや高圧線や道路に埋めつくされた東京湾岸から、いったいどこをめざしていたのだろうか。
最近の話題がもうひとつ。観察舎駐車場のすぐ近くの路上から、アシにおおわれた水路をへだてた対岸の新浜鴨場外縁の木立をていねいに見て行くと、運がよければ、枯葉そっくりな色をしたトラフズク(フクロウの一種)がとまっているのが見えるのだ。夜行性のフクロウ類を日中目にする機会はめったにないもので、私もトラフズクをゆっくり見たのは初めてだ。午前中は逆光のせいもあるのか、まず目につかないが、お昼ごろから日あたりのよいところに出て来るものがいるらしい。
これまでのところ最大で七羽。およそカラスくらいの大きさ、ぴんと立った長い耳羽とオレンジ色の鋭い目がみごとで、フクロウ類の好きな私など、めろめろになってしまう。
とっぷりと日が暮れるころになると、枝からふわっと飛び立ち、獲物をねらいに出て行く。草原で眠っている小鳥などを主食にしているのだろう。春先の渡去の時期まで同じねぐらにいてくれるとよいのだが。
カモがさっぱり入ってくれず、鳥の世界までぱっとしないこの冬だが、オジロワシ、トラフズクと続いたグッドニュース。重苦しい世相を離れてほっと息をついているところ。




