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新浜だより 行徳新聞掲載再録  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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たなばたの日に  1988年7月22日号掲載

新浜だより(行徳新聞再録) 1988年7月22日号掲載


   たなばたの日に


 ひんやりとした夜風が網戸を通して流れこんでくる。

「新浜だより」にかかろうと思っていると、実にタイミングよくセイタカシギの声が聞こえてきた。昨夜からセイタカシギがしきりに鳴き騒いでいる。新しい池で無事に育った八羽のヒナが、先週からそろそろ飛び始めた。そしてどうやらきのうあたりから、親子があちこちを飛びあるき、新しいおちつき先を物色しているらしい。

 トヨタ財団の研究助成で造成された新しい池で、繁殖したセイタカシギは計八つがい。日本初のセイタカシギのコロニーで、最初に発見された巣では、卵がまったくかえらなかった。続いて四つの巣でそれぞれ二羽のヒナがかえり、順調に育ったが、残る三巣では卵がそっくりとられてしまった。どうもアオダイショウかシマヘビにやられたらしい。この三巣ではどれもすぐに産卵をやりなおしたものの、ふ化を目前にして、また卵がなくなった。かわいそうだが、まあ、そんなものなのかもしれない。

 八羽のヒナは幸いにぐんぐん育ち、ずっと新しい池にとどまっていた。卵の発見から九週間、ことしの繁殖期は、ふ化率がずいぶん悪かったものの、どうやら無事に終わったようだ。

 新しい池の成果は、セイタカシギの繁殖にとどまらなかった。太いホースを用いたサイフォンで、池からのささやかな排水路を作り、ちょろちょろではあるが、干潟に達する小さな流れができている。その流れを伝って、カニばかりか、シラスウナギやハゼの子が上がってきている。水に浸るところではセイタカアワダチソウが姿を消し、アシが復活してきた。

 もう一つ、少々地味な話題ではあるが、オカヨシガモという鴨の繁殖が見つかった。北海道では普通に繁殖しているが、本州以南での繁殖は国内で二例目のはずだ。昨年幕張が本州発の繁殖が見られたという話を聞いており、今年は冬鳥のはずのオカヨシガモが一〇羽以上もずっと残っているので、もしかして、という気持でずっと注意はしていた。

 ヒナが初めて見られたのは六月二十六日だが、日本全国で普通に繁殖しているカルガモとまだ区別できなかった。オカヨシガモの雌親と、カルガモのヒナとははっきり違う六羽のヒナを確認したのは二日後の二十八日のことだ。

 新しい池の水は、見たところ決してきれいとは言えない。底の泥も黒く、何となくなまぐさい。澄んだ水の中で、すいすい小魚が泳ぐような池にするのはむずかしいのだろうか。でも、とにかく生物は新しい池を受け入れてくれている。もうひと息、がんばらなくっちゃ。

 昼すぎ、観察舎前の餌場で丸浜川をおぞくと、おびただしいミジンコで岸近くがうす赤くなっていた。カダヤシやアメンボがいくつも泳ぎ、ふいに目の前にマスクラットが出てきて、ほんの1メートルほどのところで水にもぐった。イトトンボの青が鮮やか。

 うそみたい。



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