ヤゴくんがんばる 1988年3月18日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1988年3月18日号掲載
ヤゴ君がんばる
毎月二回の底泥水質調査は、私の休日の楽しみの一つだ。掃除やせんたくをおっぽり出してどぶ川でボートこぎをするというぜいたく(?)はさておき、どんどんたまるデータが面白くてたまらない。
定期的に底泥を分析しはじめてからようやく一年。水車による酸素供給の効果はたぶん間違いなく示すことができると思うのだが、更にあざやかに出ている結果は、底泥の汚れと水深の関係だ。ともかく汚濁が進んだ水域では深くなることは致命的らしい。丸浜川ではだいたい水深30~40㎝のところが境界線で、それより深いところは汚れが一挙に数倍から十数倍にはね上がる。浅いところでは酸素や日光が届き、汚れの分解が進むが、深いところはたまる一方になる。水の透明度とはっきり相関しているようだ。
新聞やテレビで、川や池の浄化のためにヘドロを浚渫するという報道があるたびに考えてしまう。私は水質の専門家でもなんでもないのだが、しゅんせつしてたとえばそれまでよりもほんの10㎝深くしただけで、水の状態が急に悪くなるというようなことは、わかっているのだろうか。丸浜川ほど汚れた水域も多くはないだろうが、調べれば調べるほど、どうすれば水がきれいになるかということで、これまで各地で行われている対策が疑問に思われてならない。
さて、私の「採泥器」は、マジックで目盛を書いた灯油用のポンプ。ちょうど60㎝の長さがあるので、うまく使えば90㎝近くまでの深さの泥や水がとれる。丸浜川のいつもの測点で泥をとり、保護区の中の新しい池にもまわった。
分析タイムは夕食後。簡易分析なのでリトマス試験紙を扱うのと大差はなく、ど素人の私にもできる。ずらりと汚らしいどぶ泥のサンプルを並べて、片端から硫化水素計に入れようとしてふと見ると、泥からもぞもぞともがき出てきた虫がいる。新しい池でとった50㏄足らずの泥の中に運悪く吸いこまれてしまったシオカラトンボのヤゴだった。1㎝そこそこだが、ユーモラスな大目玉とごつい体つきで、いかにも迷惑そうな様子。
新しい池の水源は丸浜川。この冬は揚水用パイプがしょっちゅう外れたため、ほとんど干上がりかけた。おまけにこのところ海水がまじってだいぶ潮からい。この分ではトンボは全滅かと心配していたところ。
ヤゴ君、ごめん。また池に戻してあげるから、がんばってトンボになってね。
丸浜川でも、きっとそのうちトンボが羽化する光景が見られるに違いない。




