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新浜だより 行徳新聞掲載再録  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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新婚さん  1987年4月17日号掲載

新浜だより(行徳新聞再録) 1987年4月17日号掲載


   新婚さん


 チイチイチイチイ、と甘えた餌ねだりの声が聞こえてきた。ニセアカシアの枝さきに雌のモズがとまり、しきりに翼をふるわせて、地面の方をのぞいている。たぶん雄のモズはそのあたりにおりて、けんめいに餌を探しているのだろうが、姿は見えない。雌のモズはさかんに餌ねだりの声をあげ、巣立ちしたヒナと同じしぐさで翼をふるわせている。この態度をみたら、男たるもの、何を置いても彼女に求愛のプレゼントをささげなくてはならないはずなのに、なんでぐずぐずしているのだろうか。

 他の仕事に追われて、結果はわからずじまいだったが、ニセアカシアと竹やぶに囲まれたあたりで、毎日モズの姿が見られ、雄が小声でさえずっているところをみると、彼氏はどうにかうまくやったと考えてもよさそうだ。この雄は冬中ずっと観察舎のまわりにいて、ゴミ穴を掘ったり、堆肥を動かしたりするたびにくっついて見守り、出てきた虫にありついていた。倉庫をたてるために地ならしをしてもらった時など、一日中現場を離れずに監督していた。まあ、生活力はあるようだし、歌唱力は今一つだけれど、恵まれた家庭を期待している。

 数年前に放して以来、ずっと居ついているコサギが見事な婚姻色を見せている。ひらひらした長い冠毛とレースのようなみの毛に加えて、目とくちばしの間の露出した皮膚が、ふだんのうすい緑色とは似ても似つかない鮮やかな紅色に変わり、黄色い足指も濃いピンクになった。

 こんなきれいな色が見られるのは一年のうちでもほんの一時期で、個々の鳥ではせいぜい1、2週間に限られる。それにしても、一向につれあいを連れては来ない。毎日餌をもらいに来ているのだから、嫁さん(婿さん?)の顔ぐらい見せてくれればいいのに。

 水路に放してあるウミネコにも、熱烈に言い寄る相手ができた。この冬1羽だけ残っていたウミネコで、飛ぶたびに少し翼の動きがぎこちなく、そのために外のウミネコと一緒に移動しなかったものらしい。最初は彼の方がしきりに求愛の声をくりかえすだけだったが、翼が折れて飛べない水路のウミネコも、次第に答えて鳴くようになってきた。

 このごろは2羽はいつも一緒で、もう1羽放してあるセグロカモメなどがとばっちりを受け、雄ウミネコに攻撃されたりして迷惑をこうむっている。ただし、この関係はあまり長続きしそうもない。例年5月には雄ウミネコは姿を消し、彼女は一羽残される。

 3月29日、小雨もようの中を、ジュニアの連中と狭山湖に行った。広い湖面の中央に集まったカンムリカイツブリが、すばらしい求愛のディスプレイを見せてくれたのに感激した。あの日、ほとんどつぼみだった桜がもう散りしいて、カンムリカイツブリたちも北へ帰ったことだろう。



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