ほんとうかしら 1986年6月20日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1986年6月20日号掲載
ほんとうかしら
まあ、聞いてください。6月4日、観察舎前の水路(丸浜川バードリバー)でゲンゴロウの一種とカダヤシ(メダカに似た帰化魚)を見ました。あの汚いどぶ川で、ちゃんと生きて泳いでいたのです。
5月3日にウナギ養殖用水車が指導してから一ヶ月余。バシャバシャと派手に水しぶきを上げて、水に酸素をとけこませている。幅三〇メートル、延長一・五キロもある丸浜川に、わずか一台の水車を入れて、どうなるものでもないと思っていたのだが‥‥‥。
驚いたことには、どぶ川の臭気がみるみるうちにうすくなった。川ばたでにおいをかぐという記録方法がきかなくなり、六月からは臭気記録の基準をずっと厳しくとることにした。今では、ポンプ排水で底の泥が露出した時さえ、気をつけなくては臭気がわからないことが多い。
変化はこれだけではない。水が黒くなるまで時間が余分にかかるようになり、透明度が増した。まっ黒に変色した泥底がもとの泥色にもどり、緑や茶色の微細な藻類が、うす皮のように泥の表面をおおうようになった。藻類のまわりにはミジンコ類や小さなハエ類の幼虫が集まっている。死にかけたどぶ川に生物が戻りはじめたのだ。ゲンゴロウやカダヤシはどこかの池から流されてきたのだろうが、いくらかでも生きのびてくれれば大したものだ。
あまりにも変化が急で、ちょっと信じられない気がする。でも、あれだけ雨が続いた四月にくらべ、五月の方が水の臭気が弱く、泥の黒変がほとんどなかったことだけは、疑いようがない。
ただし、行徳地区の福栄一~四丁目、湊新田一、二丁目、新浜一丁目と六千世帯以上、日に数千~一万トン以上も流入する家庭排水が、この丸浜川の水源そのものである。観察舎付近は浅く、自浄能力も高いが、下流の猫実排水機場前の水はまっ黒によどみ、くさい。水位が上がるにつれてこのまっ黒な水が逆流してくるのだ。丸浜川を生かすためには、このよどみをよみがえらせなくてはならないだろう。
それにしても、酸素混入は予想よりもはるかに効果的らしい。酸素を必要とするバクテリア、藻類、そして糸ミミズやユスリカ、ミジンコ、カダヤシまでもがふえてくれれば、おびただしい生物が総がかりで水の汚れを浄化してくれる。どぶ川それ自体が、きわめて効率のよい汚水処理場になるわけだ。
もしかすると、友の会はものすごい実験を始めてしまったのではないだろうか。ともかく今は、水質がもっとずっと悪化するはずの夏がむしろ待ち遠しいでも、ほんとうに、ほんとうかしら。




