怪物参上 1985年7月26日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1985年7月26日号掲載
怪物参上
ひき潮どきの浅瀬で、スズガモが何羽かしきりに餌をあさっている。例年のように越夏している三十羽あまりのうちの一部だ。散弾でもうけているのか、体調がよくないのか、くわしいことはわからないが、見たところは健康そうで落ちついている。今年はサギの数が著しく少ないので、ちらほら戻ってきたウミネコやアオサギのほか、鳥の姿があまり見られない。うっとおしい天気が続いているためか、どうもぱっとしない気分だ。
スズガモが水面の一点を注視しはじめた。それまで採餌していたものがみな首を立てて、より集まって気味の悪そうな様子をしている。望遠鏡を向けると、何だか得体の知れない物体が浮いて、ゆっくりスズガモの方に進んでいるのが見えた。黒っぽくて一見泥のようだが、じわじわと不気味に動いている。水面に出た部分が少しずつ大きくなってきた。潜水したカワウの背中かとも思ったが、いつまでも首を上げないのは変だ。よく見るとちょうど象の頭のようなへこみがあり、本体のまわりでしゃわしゃわとさざ波がたっている。
警戒してひとかたまりになったスズガモの近くで、怪物体は向きを変え、静かに深みへとすべりこんで行った。本体が水面から消えても、まわりのさざ波はしばらく見えていた。
気をつけて見回すと、同じような怪物体が三つ四つ見つかった。さしわたし五、六〇センチくらい。体側にぽっかりあいたえら穴が見えて、ようやくアカエイだということがわかった。
アカエイはまるで座ぶとんのような恰好をした平たい魚で、尾は細長くとがり、つけね近くに毒とげがある。カレイなどと同様、背面は暗褐色だが、腹面は青白くふちが黄色い。このあたりには昔から多く、干潟の潮だまりに取り残されてしまったものを踏んづけそうになったことがある。主食はアサリだそうで、不気味な姿の割に味はよいとのことだった。
これまで、青潮の時などに何度か姿を見かけたが、観察舎のまん前の鈴ヶ浦で、何尾も泳ぐのを見たのは初めてのことだ。餌となる会が増えて食べに来ているのなら、ありがたいお客様だろう。
前回、「売られているヒヨコはほぼ百%おす」と書きましたが、行徳水族館から抗議をいただきました。めすだけを売られるお店もあるとのことですので、おわびの上訂正させていただきます。




