ひよこを飼わないで 1985年6月14日号掲載
新浜だより(行徳新聞再録) 1985年6月14日号掲載
ひよこを飼わないで
小鳥屋の店先に、ふかふかしたひよこがいると、思わず見とれてしまう。ほっそりした足ゆび、つぶらなひとみ、頼りなげで丸っこくて、こんなかわいい生きものはないと思いたくなる。
小さいうちはペットにも最適。飼主に頼りきって、ピヨピヨ鳴きながらついてくるし、手の中で暖めてやると安心して眠ってしまう。そして、おおかたは、踏まれたり、猫にとられたり、飼い方が悪かったりして、かわいい盛りに死んで行く。
ただし、何羽かに一羽はすくすくと順調に育つ。これは残念ながら当のひよこにも、飼主にも、たいへん不運なことと言わなくてはならない。
売られたり、景品にされるひよこは、ほぼ百%雄であり、雌の可能性はまずないと言ってよい。雄鶏は、生後数か月で必ずトキをつくるようになる。わが家の捨て鶏たちは、ふつう午前三時に一番どり、あとは約一時間おきにコケコッコーと高らかに鳴く。可憐なひよこを手にされたら、あとほんの四、五ヶ月後、ひとかかえもあるりっぱな雄鶏に育ち、あたりの事情など一切お構いなく、高らかにトキをつくる様子を思い浮かべていただきたい。
大きく育った雄鶏を受け入れてくれるところは、残念ながらまずない。観察舎では、毎年数十羽近い捨て鶏(捨てヒヨコ)があるが、困ったことにかわいがられて育った鶏ほど、自分と人間との区別がつかないらしく、小さい子や女の人をけんか相手とみなしておどしにかかることが多い。相手が逃げると、かさにかかって追ってきたり、けりかかることもある。逆に相手が強そうだと知らん顔をしている。この雄鶏たちには何の罪もないのだが、結局は犬などに殺されるか、やむを得ず処分するか、どちらかになる。
住宅密集地やマンションなどでは、ひよこは飼うべきではない。お小づかいで買ってこられたとしても、買われた店に返した方がよい。もしひよこを飼うのなら、近い将来にトキをつくろうが、手をつつこうが、ともかく一生を全うするまで面倒をみるか、さもなければ飼いきれずに殺すことになるまで責任をとる覚悟をもっていただきたい。中には、夜は室内に入れ、何重もの壁で近所に迷惑をかけない工夫をされたり、ご近所によく話をしてみんなでかわいがっておられるお宅もないわけではない。
四月以来、既に十羽以上の捨て鶏と、大半の死につき合い、更にこのところほとんど毎日、事情をお話しして鶏のもちこみをお断りしているものの一人として心からお願いいたします。
五月三日の朝、芝生のゴミをきれいに片付けてくださった方、それから八日(?)の午後、パンの耳どっさりとキャベツをとどけてくださった方、本当にありがとうございました。




