17 僕と彼女とお昼のお悩み
さて・・・放課後瑠璃さんが予定があるとのことだが・・・実は僕にも懸案事項が出来たようだった。
「どうしようかな・・・」
昼休み・・・瑠璃さんが来るのを待ちながら、思わず呟いてしまうくらいには悩んでしまう・・・そんな原因は今朝の手紙。
そこに書かれていた手紙の主の名前がどうにも僕を悩ませていた。
あ、ちなみにまだ手紙の中身は読んでません。
いえ、決して瑠璃さんの朝からの猛攻に思わず存在を忘却していた訳では・・・ないこともないが、とにかく僕が昼休みなのにいまだに手紙の封を開けていないのには一応理由がある。
そこに書かれていた名前・・・手紙主が、記憶違いでなれければこの学校の生徒会長様の名前に見えたのだ。
普通の生徒会長様なら、そんなに悩んだりしないだろうが・・・この学校の生徒会長様は瑠璃さん並みに美少女で有名な人だから、マジで意味がわからないです。
「やっぱり見ないとダメかな・・・」
悪戯の可能性も高いけど、もし本当に大事なことなら読まない訳にはいかないし・・・とりあえず瑠璃さん来る前に読んじゃわないとな・・・
ため息をついて、ゆっくりと封筒を開けると、予想通り綺麗に折られた手紙が一枚入っており、中身を見て・・・さっと閉じた。
うん。関係ないな。
決して僕には関係のない手紙のはずだ。そうに違いない。
震える指先をなんとか動かしてもう一度手紙を読んでみるが・・・どうやっても内容に変化はない。
うん。気のせいでなければ、これは呼び出しを告げる文面なんだよね。
『放課後。屋上で待っています』
この1文だけなら普通に告白とかありそうなシチュエーションなんだけど・・・その後に書いてある『3年 藤堂遥』という名前は確実にこの学校の生徒会長様であり・・・尚且つとびきりの美少女なので100%違うだろう。
というか・・・この生徒会長様は超絶美少女なのに彼氏がいないので、同性愛者なんじゃないかと噂される方なので、気のせいでなければ瑠璃さん絡みの・・・ゆりゆりしい展開が予測出来てしまうわけで・・・
「どうしたもんかな・・・」
「何が?」
「それはもちろん・・・ん?瑠璃さん?」
「ええ。あなたの愛しい彼女の雲雀瑠璃だけど?」
みれば隣にはいつの間にか来ていたらしい瑠璃さんの姿が・・・き、聞かれてないよね?
「遅れてごめんね・・・それで、どうかしたのタツ?」
「な、なんでもないよ。ちょっと今日の・・・ゆ、夕飯のことで少し悩んでて」
咄嗟に出たのはこんな言い訳・・・隠せる自信がないので無理のない、尚且つ真実である嘘をつく。
瑠璃さんやたらと鋭い所があるから、変に誤魔化すよりも本当にあることで真実を隠す方が得策なのだ。
「夕飯って・・・今日は茜さんは?」
「茜姉さんはデートらしいから、今日は一人なんだよね・・・だからどう済まそうかと思って」
普段は姉さんと交代で料理をしたり、惣菜を買ってきたりする訳なのだが・・・本日は茜姉さんはデートでお泊まりコースらしいので、どう夕飯を済まそうかは本当に悩みどころでもある。
一人だと、なかなか何かを作って食べる気力も起きないし・・・かといって、コンビニとかで何か買うのもなぁ・・・基本的に、茜姉さんがいればそこそこしっかりと食事を作る僕だけど、一人になると面倒なのと気分の問題で夕飯は最悪いらないという、男子高校生としてはあり得ない現象(偏見)が起こってしまうのだ。
そんなことを考えていたら瑠璃さんは僕の言葉に納得したのかしばらく考えた後で何かを閃いたという風な笑顔を浮かべた。
「とりあえずはお昼だね」
ニッコリと頬笑みながら弁当箱を差し出してきた瑠璃さんからそれを受け取ってありがたく頂く。
瑠璃さんが何かを思い付いたようだが、今聞いても答えてくれそうにないので、とりあえずは誤魔化せたことに安堵しながら瑠璃さんお手製のお弁当に手を伸ばす。
手紙は・・・仕方ないけど行くしかないかな・・・
嫌な予感はするけど、無視するのはもっと不味いだろうし・・・唯一の心配は瑠璃さんに黙って他の女の子に会うことについて瑠璃さんがどう思うかだけだけど・・・まあ、瑠璃さんなら、僕には浮気なんて甲斐はないとわかってるだろうし、逆にこないだみたいに厄介事に巻き込まれたと思われそうだけどね。
・・・うん。自分で考えてなんか泣けてきた。
彼女に浮気の心配をされない男って・・・ある意味どうなんだろ?
そんな内心を悟らせないように本日も和やかにお昼を・・・
「はいタツ。あーん」
・・・・お昼を食べました。
ええ、「あーん」されて食べましたよ。逆に「あーん」させて食べさせてあげもしまさしたよ。
文面だけ見ると変な気分になるけど・・・和やかにお昼を食べました(多分)




