貴族街の日常
短いです。
新生活が始まってからというものの
時間がない…(泣)
「セバスさんは本当にいつ来たのかわからないな…」
クロムは後頭部をぽりぽりとかきながらつぶやく。
と突然お腹のなる音が響く。
「ガヴェ、お腹減ってるのか?」
「うん…最近あまり食べる気が出なくて…さ」
ガヴェイルは横を向きながらブツブツと言った。
「ちゃんと食べないとダメじゃないか。それと、ルイーナ…少し痩せたんじゃないのか?血色も悪い…ちゃんと寝ていたのか?食べていたのか?」
クロムが指摘した通りルイーナは一見普通に見えるが髪は少し傷んでおり、また化粧でうまく隠されてはいるものの濃い隈が目の下にできていた。
「あなたがいなくなってから食事は喉を通らないし…夜は悪夢を見て寝付けなくなってしまったの…だから今夜は一緒に寝てくれない…かな?」
ルイーナはそう微笑みながらクロムに言う。
とそこに足音を立ててセバスが歩いてきた。
「皆さま。勝手ながら軽食を作ってまいりました。クロム様、ルイーナ様、ガヴェイル様はお飲み物はどうなさいますか?」
セバスはいつのまにかテーブルにクロスをひき、その上にサンドイッチが盛り付けられた皿を置いていた。
「じゃあ紅茶で」
「こーひーのぶらっく」
「水をお願いします」
紅茶を頼んだのはクロム、コーヒーを頼んだのはガヴェイル、水を頼んだのはルイーナだ。
「かしこまり…ました」
『ました』の時点で既に飲み物は出ているのであるがそこを気にしてはいけない。
「セバス!なんでコーヒじゃなくてオレンジジュースなんだよ!」
「申し訳ございません。間違えてしまいました。ではこちらはお下げした方がよろしいですか?」
「…間違えたのは仕方ないからこれでいいよ」
「ありがとうございます」
セバスはガヴェイルにコーヒーではなくオレンジジュースを出していた。
もちろんガヴェイルはコーヒーは飲めないしましてやブラックなんて飲めたものではないのだ。
しかしガヴェイルはコーヒーのブラックを飲むのがなぜかカッコいいと思っているのである。
本来の彼は大の甘党である。
そしてしばらくクロムたちが家族で談笑しているとアーサーが起きてきた。
「おはようございます…」
アーサーは目をこすりながら椅子に座る。
「こちらハルト領の紅茶でございます」
セバスが紅茶をアーサーの前に出す。
そのついでとばかりにクロムたちにもそれぞれ飲み物を追加する。
「ふぁぁ……今日はいい陽気ですね」
アーサーがあくびをしながら窓の外に目をやる。
暖かな日差し、空を白い雲が2割ほど覆う程度の晴れであり空の青と雲の白が美しい。
「そうですねぇ…」
「空なんて見たの久しぶりかも…」
「あぁ…そうだな…」
クロムたちもアーサーにつられて窓の外に目をやりながらそれぞれのカップを傾けた。
その時突如、どこかの遠くの家の上空に巨大な水球が一瞬にして発生し、それが落ちたかと思うとそこに畳み掛けるかのように雷が落ちた。それにより爆発が発生したのだが、その直前外に流れ弾が飛ばないように風による結界が張られたのだ。
もちろん全て頭おかしいレベルの魔法である。
「「「「ブッフォ?!」」」」
クロムたちは同じ方角を見ながら飲み物を吹き出した。
「…ごめんなさい」
「…大丈夫、私も驚いたから」
「…なんだ、あれ」
「…すまん、俺にもわからん…と言いたいところだがわかってしまうんだよな…はぁ…」
皆が呆然としている中セバスが皆の吹き出したものを拭いて……拭き終わっていた。
そして未だ魔法は使われているらしく時折爆発するかのような音が聞こえる。
「はぁ…あの人たちなんで将軍じゃないんだ?それにしても騒音被害を考えずまたドッカンドッカンと……」
「俺!あれ見に行きたい!」
「ぼ…私も見に行きたいです!」
「みんなが行くなら私も付いて行くけどどうする?」
クロムにみんなの視線が集まる。
「仕方ないな…じゃあ行くか…すぐ出発するぞ」
そうクロムが言ったのにアーサーが反応する
「相手は貴族でしょう?先に伺いの手紙や従者を向かわせるべきではないのですか?」
そうアーサーはクロムに尋ねる。
貴族社会では相手の家に向かう時先に伺いを立て相手の返答が来てそれから行くというのが普通である。
「あの家は特別なんだよ。いつ行っても事前に伺いを立てていたかのように準備がされてるからな。それにイース家の輩は貴族常識とかに寛容だからな。特にイース夫人が」
そう言いながらクロムは外行きの服へ着替えに行った。
「では着替えて来ますね」
「俺も着替えた方がいいかな?」
「アーサー様も着替えましょうか」
「わかった」
こうしてクロム達とアーサーはイース家に向かうことになったのだった。
貴族街では3日に一回イース家でそのような光景が見ることができます。
そのためマース王国の殆どの貴族は突然の爆発音などに怯えたり驚かない肝の座った人物ばかりです。




