朝食
アーサーとクロムはセバスに連れられて長い廊下を進んでいく。
王城の長い廊下の窓からは花が咲き誇る美しい庭園の姿を見ることができるが、彼らの誰一人としてその光景に見入る者はいない。
日常的に見ている景色だからだ。まぁ、全員が男性であるために花の素晴らしさをわからないのかもしれないが。
長い廊下の突き当たりの扉をセバスが上品に開く。
扉の開け方などに気品が出るのか、と思われるかもしれないがセバスはそれは上品な流れるような所作で扉を開きアーサーとクロムが中に入っていく。
「おはようアーサー、クロム、いつもありがとうね。…なぜ立ったままでいるの?ほらっ、早く座って!せっかくのご飯が冷めてしまいますよ。」
少し残る無邪気さの中に気品を持つ女性がアーサーとクロムに話しかける。
その女性はブロンドの髪ときれいな碧眼をもっていて、かわいらしくもあり美人でもあった。
「おかあさん、おはようございます!」
アーサーはそういうと金髪で茶色の目をしたスリムでイケメンなおじ様の対面の席に座った。
「クロムも早く座れよ。飯がまずくなるぞ。」
「あんたは一応国王なんだからさ…もっと言葉遣いどうにかしたほうがいいんじゃないか?」
「それをいうならお互い様だろう?なぁ、エリー?」
突然話しを振られたエリーはむっとした顔をした後、
「アーサー、手を合わせて」
「うん」
「「いただきます」」
二人のことを無視して愛する我が子と食事を始めるのだった。
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アーサーは食事をおいしくいただいているときにふと、クロムとの約束を思い出した。
(そういえばクロムとやくそくしてたなぁ。でもクロムを家に帰らせてあげてっておとうさんに言ってもダメっていいそうだし… そういえばクロムが『ガヴェに会わせるわけにはいかないなぁ』とかいってたっけ。僕はまだ友達いないし…ちょうどいい機会だから約束を口実に友達を作ろう!)
アーサーのなかでのクロムとの約束は、いつの間にか果たすべきことから友だちを作るための口実となっていた。
「おとうさん」
「なぁ」
アーサーとクロムの声が重なる。
「なんだ、クロム?」
クリスは食事を続けながらもクロムの声に応えた。
「そろそろよ、俺も家庭を顧みるべきだと思うわけよ」
そういいながらクロムは朝食をすべて食べきり紅茶を飲み干す。
「で?なんだ。休暇か?休暇がほしいのか?」
「まぁそうなんだが。なんであんたがけんか腰なんだ…」
「絶対にアーサーから離れるなんて許さないからな。これは国王命令だ。」
クリスは黙々と食事を続けなながらも平坦な声でそう言った。
「なにムキになってるんだよ… あんたらしくないぞ。」
「ほんとですよ、いったいどうしたんですか。」
クリスの様子を見て心配したのかエリーも会話に参加する。
「ねぇ、おとうさん」
アーサーの声を聞きクリスがそちらを向く。
そしてアーサーの顔をじっとみてから突然クリスはクロムに頭を下げた。
「クロム、頼む。この通りだ。アーサーを守ってくれ。」
「……?!……おいっ!やめろよ!頭なんてさげるんじゃねぇ。おまえは国王なんだぞ」
頭を下げたクリスにクロムは慌てる。
「それでも、だ。自分でだってこれが自分のわがままだってわかってんだよ…」
「いや違うね。王子を守るのは俺たちの仕事だ。わがままじゃない…」
「ならっ」
クロムが言った言葉を聞き希望の光を見たとでもいう表情になっていたクリスだったがクロムの言葉には後があった。
「けどそれは俺"だけ"を縛り付ける理由にはならない。なんせあくまで、俺"たち"の仕事だからな。俺のほかにだってトリスやマルクスもいる。ほかの将軍は…まぁあいつらは子守には向かないが、それでも騎士団の連中で十分だろ?正直一人で警護するのは結構大変なんだよ」
クロムはこんなことを言っているが実際はそんなことは…それなりにしか思っていない。
嘘ではないというのが重要である。
(あ~休みほしい!ガヴェにも会いたいしルイーナにも会いたいな)
これがクロムの内心である。
(アーサーを任せられるのはおまえだけなんだぞっ。くそっ。泣き落としも通用しなくなってきているか… これはこちらの負けかな?あぁ~悔しいな。ま、しょうがないか。さて、その間どうしようか。信用できそうな傭兵でも雇うか?冒険者よりはましだろうし。一番いいのは兵士たちに頼むことなんだがどうも胡散臭い貴族との関わりとかもあってめんどくさいしなぁ、近衛騎士団は信用できるが…)
これがクリスの内心である。
簡単に言えばクリスは子供が心配で仕方のない親父を演じていたのである。
「仕方ないな、休暇あげるよ」
「よっしゃぁ!じゃあ何日もらおうかな…」
クリスが折れクロムは休暇を勝ち取った。
「おとうさん」
とそこに、アーサーは見るからに不機嫌そうな顔でクリスの横に立ち袖を引っ張っていた。
「なんだいアーサー?」
今にも泣きそうな顔から一転、クリスの顔は何事もなかったようにいつもどうりの表情になっていた。
「この狸め…」
クロムがそうぼやくのも仕方ないことかもしれない。
「えっとね、ぼ…じゃなくて 私は友だちがいないです」
「ん?なんだ?」
「(アーサーもういいからっ)」
ここにきて休暇を勝ち取ったクロムが嫌な流れを感じ、アーサーを止めようとするが、
もう遅かった。
「私はガヴェと友だちになりたいです。だからクロムと一緒にクロムの家に行ってもいいですか?」
「ちょっ?!」
「え?あっあぁ。いいぞ。ちょうどよかった。クロムが休暇をとって帰るらしいからさ、行っておいで」
「ノオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!」
「クロム。うるさいですよ?アーサーはまだ『ごちそうさま』してないでしょう?しなきゃだめじゃない」
「ごめんなさい」
アーサーは自分が座っていた元の席に戻った。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
「おとうさん」
アーサーがクリスに呼びかける
「なんだいアーサー?あと『おとうさん』じゃなくて『父上』って呼んでくれるとうれしいな」
そうニコニコしながらこたえる。
「おとうさんはクロムが何日お休みするかわかる?」
が息子にその願い届かず。
「そりゃわかるがどうして?というかもう父上って呼んでくれないのか」
クリスは軽く落ち込んでいる。そしてその様子をエリーが生暖かい目で見ていた……しかし、
「だって着替えでしょ、それに歯ブラシとかほかにもっ……」
「「お泊まりは許しません!」」
かわいい息子のお泊まりに断固反対する、国王 クリス・マース・ノーヴェンと王妃 エリー・マース・ノーヴェンなのであった。
1話何文字程度が理想なのでしょうか?
私としては約2500~3000文字くらいなのかな?と思うのですが。




