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母難の相が出ています

大事なことは二度に限らず何度でも言ってほしいと感じるこの頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

着替えたのちすぐにお母さんは私の寝ていた部屋に私を連れてきた。


「今日からこの部屋はライカちゃんの部屋ね」

「あ、ありがとう!」


なんと、自分の部屋をもらえるなんてっ!

とっても嬉しい!

といっても今のこの空間はなんというか…


高価そうな調度品に

高価そうな調度品の数々


高価そうな調度品の数々!


私にとっては大事なことなので二回言いました。


右も高価、左も高価、上も下もみんな高価。


正直壊したらと思うとガクブルでございます。


とにかく根が庶民の私には馴染めない、というかなじまないといけないのかな?

無性に森の中にあった木の温もりを感じられる素朴な家具が欲しくなってきたよ…


そわそわして落ち着かないし。

それに


「シャンデリアはちょっと…」

「これは結構こだわったのよ?」


違う、このキラキラじゃない。

何というか体がキンキラを求めているようなっ。

落ち着け。金銀宝石なんてものには縁がなかったこの私だ。

きっと今は混乱しているだけに違いない。


でもシャンデリアを見てると……


「何というか…コレジャナイ感」

「何か言った?」

「う、うん?何も言ってないよ?」

「そう。じゃあこれからライカちゃんには令嬢として振舞うための方法を教えてあげるわ」

「は、はい。」


フェイリルさんの前例があるんだよなぁ…


あの淑女教育は……ダメだ、思い出せない…

いや、むしろ思い出さなくてもいいことなのかもしれない、多分そうなんだろう。

体に染み込むほど内容の濃い方法だったんだろうなぁ……ガクブル


「大体4カ月くらいでライカちゃんを立派な令嬢にして見せるわ!」


4…ヶ月?

あれ?確か前もそんな期間で…


「でもアーツクス家の結婚式前までには正式にお披露目したいからなぁ…大体2カ月くらいかしら」


は、半分?!

それって大丈夫なの?

過労で倒れたりしそうなんだけど…


そんな私をみてお母さんは励ましの言葉を送ってくれた


「心配しないで!大丈夫!回復系統の魔法が使える使用人がうちにはそれなりにいるわ!」

「それって……」


明らかにフェルとミーシャのことなんじゃないかと…


というか完全に回復魔法の使い方を間違えてます!



れ、礼儀作法の理!

これでもかと令嬢オーラを出して回避するんだ!

失敗したらお前は死ぬぞ!

頑張れ!ライカ・イース!


心の中で自分を激励しながら令嬢モードに徹する。

覚えてはいないけど…礼儀作法の訓練は無理だ…

体が、拒否している。


私は背筋を伸ばしつつも全身をリラックスさせ柔らかな微笑みを浮かべ、その場に立ち尽くす。

背筋とインナーマッスル、そして体幹を総動員し一ミリたりとも動かないようにする。


ど、どうだ!完璧な令嬢だろう!

だから礼儀作法の訓練だけは…


「まぁかわいい!ライカちゃんったら、そんなに笑顔で答えてくれるなら腕がなるわ!ちょうどよかった!今日の夜、早速お手本を見せてあげるわね!」


あれ?今日の夜はパパを相手にするって言ってたような……そんなっ。


そういう大人な教育を貴族は早くからするんですね……


異世界の、その、そういう方面の事情って意外とオープン、なのかな?


「ライカちゃん。顔赤いわよ?まぁその気持ちもわからなくないわ」


嘘ぉ!恥ずかしっ!

というかこっちはまだ純粋無垢な6歳児だぞ!

…ガワの話ですけど。

夜の営みの話とか……


「やっぱり獣人の本能がライカちゃんにもあるのねー。やっぱり血沸き肉踊る戦いを心のどこかで望んでしまうものなのよねー。ほんとこれだけはどうにもならなくて…ライカちゃんも戦闘本能と上手くお付き合いしていかなきゃダメよ?」


あ、れ?

血、沸き?肉、踊る?

戦い?


どこのヤサイ人?

それ…令嬢じゃないよ?


そんな私の気持ちは知らず、お母さんは若干顔を赤らめながら手を軽く握ってシャドーボクシングをした。

風切り音がするシャドーは軽くと言えるのかわからないけど……


ともかくイース家の夜の営みというのは殴り合いだったらしい。

なんて紛らわしい!

思わず、その…大人な感じかと


まぁ前世から色々と持ち越してきてしまっているので私は純粋なんですよ。

そういうのも後輩からちょっと聞くぐらいで…


いつか私にもそういう時が来るのかなぁ


「ライカちゃーん!おーい!」

「はっ…なんでしょうか。お母様」

「お母様…それもいいけど今はお母さんでいいわ。それよりも座ってお話しない?」


OHANASHI?

私には肉体言語で語り合おうぜ、という風にしか聞き取れないのですがっ?!


あぁ神よ…どうして私のお母さんは2回とも肉体言語を好むのでしょうか?

これは呪いなのでしょうか?


「ほら、ライカちゃんも早く座って!」


きっとこれは、全部クライブのせいだ。



ーーーーーーーーーーーー


「ん?」


神界で寛いでいたクライブは突如身震いをした。

もちろん神界は快適な環境に保たれたままだ


「どうしたの?クライブ?」


たまたま、そこを通りかかったマギナが声をかけた。手には何冊かの分厚い本を持っている。


「いや、なんかすごく謂れのない罪に自分が問われている気がしてね…多分気のせいだよ」


とクライブが笑いながらいうと少し笑っていたマギナの顔が急に真顔になった。


「その胸に手を置いてよく考え直しなさい」

「え?……え?」


クライブを冷たい目で見ていたマギナは本を持ったまま自室の扉を開きそのまま扉の向こうへと消えていった


ーーーーーーーーーーーー



さて、クライブを恨んだところで、何を今更、という話なのでとりあえず現状をとにかく打破しなければならない。


ま、難しいことは考えずにとりあえず座るか


よっこいしょ


間違っても口に出すわけにはいかないよなぁ。

麗しの?令嬢?な訳ですし。

あ〜めんどくさ〜。


「フェル、お茶とお菓子を」

「かしこまりました、奥様。本日の茶葉はトレース領のグレア茶とモレア領のアール茶、変わり種としてはサモア領のマチア茶がございますが誰にいたしましょう?」


ちょっと待った。

全然私お茶とか知らないんですけど!

飲み比べてもジャスミンティーと烏龍茶ぐらい違うならわかるかもだけどおんなじ紅茶だったら多分、違いわからないよ!?


「じゃあマチア茶とそれに合うお菓子をお願い」

「こちらになります」


早っ!

というかもう注ぎ始めてるし。

蒸らしは?というか出来合いなのか?!


フェルがポットから注いだ紅茶はなんというか……入れたてでした。


白い陶磁器のカップは外側に綺麗な装飾がされていて、前世なら完璧にお客様用として自分じゃ使わずに棚の奥に大事にしまいこんじゃうようなやつだ。


肝心の紅茶は、素人でもわかるいい香りと色だった。

何をもっていい香りと断定するのか気になるところではあるけど。


そしてお菓子にはマカロンが出てきた。

なぜマカロン?

いや、マカロン好きだからいいけどさ。

異世界では飯テロもすでに起こっていたらしい。

この調子で醤油と味噌も発見したい!


それにしてもなんでマカロン?


それにしてもドレスとかを着て、紅茶を飲みながらマカロンを食べて、調度品に囲まれてる今ってだいぶご令嬢っぽくない?


カップを音が立たないようにそっと置きマカロンを食べる。

ここでも礼儀作法の理が生きてる!

あの4カ月は無駄じゃなかった!

よく覚えてないけど。


今、私はまさにっ!令嬢をしている!


「ライカちゃんはすごいわね…合格よ。100点!」

「ふぇっ?!な、何がです?」


ちょっと感傷に浸りすぎていたのか呼ばれて変な声が出ちゃった。

気をつけないと。


「カップを置いたり椅子に座ったり全部完璧にこなしてたわ!これなら外に出しても全然恥ずかしくないわね!」


「それじゃ」


礼儀作法の訓練は無くなるのかな?

無くなるとまでは行かなくても短縮くらいはするはず…


「あとはテーブルマナーと、目上の人への礼の仕方。あとはダンスとか、夜会のマナーとか暗黙のルールとか、他にも相手の心の読み方とかしつこい貴族のあしらい方とか自分が有利になるための交渉術とか色々あるわね〜」


え〜……


めんどくさい


「すぐ表情に出ちゃうのはライカちゃんの悪い癖ね」


そう言ってお母さんは笑った。

ポーカーフェイス練習しないとなぁ。

でもちょっとムッとした


「可愛いっ!このこの〜うりうり〜」

「ちょっ、ふふっお母さんやめてっふふっ」


お母さんは私のほっぺたとか脇腹を突っついてきた。

すごくくすぐったいと思った。

やり返さなかったけどいつかやり返してやろうと心に決めた。


「それにね…お母さんはライカちゃんのことが心配だから外にまだ出したくないの」

「?」


心配?

溺れず、窒息せず、毒も効かず、最近では裁縫中に指先に針が刺さったと思ったら針が変形していたこの私のことを?


「ライカちゃんの周りにはね怖い人がたくさんいるの!裏路地に子供を連れ込んだりするような人だっていないわけじゃないし言葉巧みに騙して奴隷にする人だっているのよ」


裏路地に集まってるような奴らが騎士団の強い奴らよりももっと強いならそういうのはあるかもしれないなぁ。奴隷って多分隷属っていう状態異常だから私には効かないしいざとなったら力技でどうにでもできる気がする。


やらないけど。


「他にもコソコソと隠れて隙を伺ってるような怖い大人で外はいっぱいなの!」


今も天井裏に3人。壁裏に2人。床下にも2人。

敵意はなさそうだからイース家の密偵とかそんな人たちなんだろうなぁ。


うん。見守ってくれる優しい人もいるし、めちゃくちゃ安全じゃん。


「だからね、やっぱりライカちゃんにもそれなりに鍛えてもらおうと思うの。まずこれが最優先。礼儀なんて後からでどうにでもなるし、王様になら多少の粗相くらいしても問題ないわ!己が身を己で守れないなら令嬢なんてクソくらえよ」


大問題じゃない?!いやもう色々と!

王様にならってどういう神経してんの?

やっぱり母難の相が私には出ているのかもしれない…

というか私のこのちっぽけなプライドにかけて粗相なんてしません!


なんて私が決意を新たにしている時、お母さんも決意を新たにしていた。


「そうと決まれば!ライカちゃん!問題よ!」

「え?何?」


いきなりクイズが始まった。

突然クイズを始められると戸惑ってしまうので事前に問題を出しますと言ってからにしてほしい。


「今!ここにはライカちゃんと私を含めて何人いるでしょーか!」

「10人」

「うん、やっぱり普通は10人って答えるよね…………ん?……10人?3人じゃなくて?

ねぇライカちゃん、もう一回言ってみて?」

「……………3人」


本当に紅茶とかよく知らない。

そもそも午後ティーやアップルティーですら飲めない私に紅茶のことなんて書けませんでした。

なので例えがジャスミンティーと烏龍茶……

まぁジャスミンティーも一度飲んだきりでそれ以来飲んでいないのですが。

一番好きなのは緑茶。その次が麦茶です。

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