小さな違和感
お久しぶりです。。。すみません。あまりに久しぶりで、少し今までの分読み返して、ちょこっと変更しました。
なぜだろう。
最近、悟が冷たい気がする。
そんなことをミナは思っていた。
季節はもう秋、あれから6か月ほど経っている。
アジサイの季節には、青菜の湯がき方を教わっていたミナが今はキノコを使ったメニューいくつかにチャレンジできている。
悟は丁寧で、優しく、そして気が長く、じっくりとミナに料理を教えて行った。
ミナはそれに素直に応え、かなりの腕になった。
最近では、ミナが料理を作っているとき、悟が傍につきっきりということはない。
その間、悟は季節のものをつかったお菓子を作ってくれて、料理が出来上がると、そのお菓子でお茶の時間になるのだ。
優しく過ぎていく穏やかな時間。
ミナはそれがとても居心地よかった。
悟への恋心は、とっくに自覚していた。
だけど、居心地のよさを知ってしまったので、それが変わってしまうのが怖い。
でも、眺めるだけでいて他から横取りされてしまうこともあるのを身をもって知っているから、何もしなくていいのだろうか、とも思っていた。
その最中、悟が変わった。
いや、前から何だか距離を感じることはあった。
でも、それは、「偽物の」だからだろうと軽く考えていて、その距離をせばめようとミナから近寄るようにしていた。
遠くてよくわからないものが、近くに寄るとよく理解できるのは自然の摂理だ。
悟に近寄ったミナが感じてしまったのは、どこまで行っても交わらない平行線だった。
うーん、あれが普通に道なら、いつかはどこかで交わると思えるのに。
薄く壁を作って平行に。
そのため、ほとんどの人は彼が全然交わろうとしていないことに気付かないのだ。
「ちょっと遠慮がち」に思えて、そのうちもっと親しくなれば、と考えるのだろう。
ところで、最近、その壁が、私限定で厚くなっていってませんか・・・?
なぜだろう?
喧嘩をしたこともないし、嫌われたようには見えない。
どちらかというと、好意をもって接してくれているはずなのに、なぜか傍へ寄れない。
そんな時だった。
「お嬢さ~ん、君の運命、激しく変えちゃわない~?」
そんなふざけたセリフで、生徒会役員への打診があったのは。
この学園の生徒会はちょっと変わっている。
立候補、とか、選挙、というものがない。
必要なのは、現役員とのつながりやコネ、血縁関係などである。
会長は、当然、理事長の血縁からなるのだが、その他も選択基準がそんなものなので大体どんなものかわかるというもの。
そこへ、なぜミナが?である。
打診してきたのは、源九郎という隣のクラスの男の子で、彼は会計をするらしい。
・・・この人とは話したこともないような・・・?
とりあえず、聞いてみる。
「どうして、私ですか?」
答えは
「あんたが悟の恋人だから」
だった。
なんだ、それは?
考え込むミナの耳に、おいしい誘いが紡がれる。
「まぁ、あいつのこと、知りたくない?」
・・・古今東西、カレシのこと知りたくないオンナなんていないと思います・・・・
ということで、ミナはしっかり釣り上げられた。・・・はずだった。
「何を話してるの?」
突然かけられた声。
それはここのところ、ミナを避けていたはずの悟の声で。
なぜか二人してギョッとした。
「九郎、生徒会の決まりについてはお前はよく知ってると思っていたけどね?」
そう言われて、源くんは焦ったような様子になる。
「え・・? 生徒会役員の推薦ならなれるんじゃ?」
ミナは不思議に思って口にしてみたが、なぜか二人とも答えは返してくれなかった。
「・・・お前のカノジョじゃないか」
そう源くんが口にする。
「それ、フェイクだから」
あっさりと、実にあっさりとそんな言葉が悟の口から出た。
「でもっ」
それに何か言おうとした源くんに、悟が冷やかに「俺たちの仲はフェイクだ」と繰り返す。
ミナと悟の間を忙しく動いた源くんの視線だが、そのままその言葉を受け入れるように、「そうか」と言うにとどまった。
ミナは口がきけなかった。
どうして?と思う。
内緒でここまで付き合ってきて、ここで今、違うというその意味は何なのだろう。
何か月も前から偽であっても続いてきたのに。
少しでも自分に気持ちをもってくれていたんじゃなかったんだろうか?
今までの二人の間に流れていた時間を、心地よいと思っていたのは私だけだったってことだろうか?
混乱して、傷ついて、そんな彼女を振り向いて、悟はひとこと、告げる。
「もう、俺たち、これ以上フェイクを続けるのは止めよう。あれからかなり経つ。ミナの事情は解決したはずだよ」




