罠
ダンジョン内には罠はつき物だと思いますが、落とし穴が一番対処が難しい罠だと私は考えます。
「随分ピーキーな力なのね。それだけに絶大、さすがソロを続けてただけあるのね」
「そういうツボミさんだってソロじゃないですか」
「私はしょうがなくソロだっただけだよ」
眉根を下げるツボミ。アユムは触れて欲しくないのだろうと勘づき、話を逸らす。
「そう言えばこの先にあるレアアイテムって何だと思います?」
「そうね……別に何でもいいけど……ゲームなんだしお宝とかの方がワクワクするかな」
「お宝ですか……それもいいですが僕はエクスカリバーみたいな伝説の武器みたいなのも心躍ると思いませんか」
「アユムは武器に思い入れとかないの? さっきも予備の武器たくさん買ってたけど」
「もちろん愛着はありますよ。この刀だって苦労して手に入れた一振りなんです。ただ僕の場合は……」
そこでアユムは言葉を切り言い淀む。
「場合は……?」
先を促すツボミ。
「いえ、秘密です」
「気になっちゃうじゃない」
「すみません。でも秘密です」
いたずらを思いついたかのようなアユムの笑み。でもツボミは深くは訪ねなかった。
「そっか」
それだけで流したツボミ。そしてストレージを開いてドクターペッパーをアユムに渡す。
「とりあえず使ったMP回復しときなさい。またさっきのに頼ることもあるかもしれないから」
「そうですね」
アユムは渡されたドクターペッパーの缶を一気に煽り、炭酸の爽快感と合わさってやってくる薬のような味が混じり合って表現しにくい不快感を与える。プハッと息をついて回復エフェクトが身を包むのを見守る。ドクターペッパーはMPを回復させるアイテムだ。なぜドクターペッパーなのかは製作者の趣味としか分かっていない。
「何度も何度も口にしてるけど慣れない味ですよね」
「私もあまり好きじゃないけど、飲まないと回復しないからね。私が先に行くよ。後ろの警戒は任せるよ」
ツボミは次の通路に足を置く。ガゴッと何かが動いた音がする。次には足元が崩れ落ちツボミが崩落に巻き込まれた。
「ツボミさん!」
アユムは自分の身を返りみず穴の中に躊躇なく飛び込んだ。空中でツボミの手を取り、抱き寄せる。アユムはこの事態を抜け出す為の方法、アイテムを考えるがどれも確実性を欠くアイデアばかりだった。自分の不甲斐無さにアユムは舌打ちしてツボミに話しかける。
「ツボミさん少し荒っぽい方法を取ります! 舌を噛まないように気を付けてください!」
「ううん。大丈夫ここは私に任せて!」
涼やかなハープの調べが紡ぎだされる。一音一音強弱を付けた丁寧な調べは聞く者に感嘆と癒しを与える曲となる。荒々しくも生命の全てを包み込む海の様な慈愛に満ち満ちた曲。
ツボミは曲を演奏しながらもその音の反響からどのくらいの深さか、後どれくらいで下に到達するか、下の状況はどうなっているかを判断する。
ツボミは最後の一音を高らかに強く鳴らせ、腕を下に向け魔法を完成させる。
「海の領域」
ツボミの手から生まれるは怒涛の勢いで溢れる水の奔流、水は重力に従い、下に落下する。下には有象無象のモンスターが蠢き、今か今かと餌を待っていた所にこの水だ。重力と水自体の重量が合わさった攻撃はモンスター全てを圧殺するのに十分だった。更に下に流れた水はその場に留まり水のクッションを形作り落ちてくる二人を受け止める。無事に着水を果たした二人はずぶ濡れの格好で地に足を付ける。
「アユム、ホントにごめん。私があんなポカしなければ……」
「気にしても仕方ありませんよ。逆に罠をノーダメージで突破できたことの方を喜ぶべきです。それにしてもマスターの情報には罠の話はありませんでしたし……マスターの情報が間違っているとも思えません。いやそれともここまで来たプレイヤーはいないのかもしれませんね。皆あの〝スカルナイト〟のとこで引き返したとか」
「それはあるかもしれないね。自分の命優先で戦っていれば四人パーティーでもあそこは抜けるのは至難の業だと思うだけど……」
「もし僕たちと同様突破しているプレイヤーがいるとすればかなりの兵ということですね」
ツボミの言葉をアユムが続ける。
「ですが今はそんな事気にせず奥に進みましょう。このダンジョン思ったよりモンスターの出現は少ないみたいですから一気に踏破してしまいましょう。先行はツボミさんお願いします。一気に駆け抜けてください。しっかり付いていきますから」
「オーケー、敏捷力全開で行くね」
言うや否やツボミはその知覚能力と敏捷力に物を言わせて洞窟の中を駆ける。その後ろ姿を全く同じスピードで付いていくアユム。暗闇など物ともせず、途中で出現するモンスターはすれ違いざまにツボミとアユムで一撃ずつ叩き込み、ポリゴンと化していく。
パーティー時、倒したモンスターの経験値は均等に分配される。そのため前衛よりも攻撃回数の少ない後衛の回復士や魔術師にも経験値が入ると言う事だ。その為高速で移動しながらダンジョンを踏破もとい走破しながらモンスターを倒すうちに鐘の音が鳴った。
「あ、レベルアップしました」
「おめでとう。どうするちょっと止まって振っとく?」
「いえ、後でやっておきますからこのまま行きましょう」
振るとはレベルアップと同時に手に入るSPの事だ。このポイントをステータスに割り振る事によってプレイヤーは強くなることが出来、自分だけの強さを手に入れることが出来る。このSPを魔法に振る事によってプレイヤーはその属性の魔法を扱う事が可能となる。ただ魔法の属性は七種類もあるため普通のプレイヤーは一種類の魔法を極めるのが一般的になっている。ただ例外としてポイントのほとんどを魔法に割り振り、数種類の属性の魔法を使うプレイヤーを魔術師と呼ぶ。逆に魔法にまったくポイントを振らないプレイヤーのことを戦士と呼ぶ。
如何でしたでしょうか?
読んでくださった方ありがとうございます。




