迷宮(ダンジョン)
迷宮攻略突入します。
二人は魔法円に触れる。すると更に輝きは増して二人は中に吸い込まれた。
次の瞬間には薄暗い洞窟の中にいた。天井からは水滴が落ち、それが地面に落ちる音が永遠に反響する。それはとても空虚で虚しい響き。
アユムはストレージから懐中電灯をオブジェクト化し、先を照らす。
「僕が先に行きます。ツボミさんは後ろの警戒をお願いします」
「分かった」
武器をオブジェクト化して抜刀し洞窟の奥へと歩を進める。
ポチャン、ポチャン、と上から雫が絶え間なく落ちる音と、二人の歩く足音しか音は存在しない。懐中電灯が切り取る洞窟はゴツゴツした岩肌を永遠と照らし続けている。単調な、だけどそこかしこに危険が隠れ潜んでいる可能性があるから少しでも気を抜くと不意打ちを食らうことになる。
「アユム!」
ツボミがアユムを突き飛ばす。その一瞬、アユムが立っていた場所を銀閃が煌めく。
ツボミはある方向にすぐに剣を振る。だが振りきる前に金属音と火花を散らす。
「いつの間に!?」
「ここは任せて!」
ツボミはそのまま弾き返し、一歩踏み込むと同時に四連撃叩き込む。振り下ろしで一撃、返す刀でニ撃、そこから横に一閃、と返しに一閃、これで四撃、ガラスの破砕する音が洞窟内に反響する。
「アユムダメージ喰らってない?」
「大丈夫です。助かりました。ありがとうございます」
「ううん。こういうとこは私の方が向いてるからね。任せちゃってくれていいよ」
「でも凄いですね。僕は全く気付きませんでしたよ」
「私に暗闇なんて関係ないからね。でもここちょっとおかしいんだよね」
「おかしいって何がです?」
「うん。モンスターって街以外じゃフィールドやダンジョンをフリーランしてるでしょ。だけどここのダンジョン、その気配がないのよね。普段の私ならあそこまで近づかれる前に気付くはずなんだけど……」
腕組みしながら考えるツボミ。
「なるほど。塔と似た仕組みをしてるみたいですね」
「うわ~私の感知能力が使えないのはきついな」
「大丈夫ですよ。今は僕がいるんですから頼ってください」
「ん~頼りないかな」
「えっ……あ……はい。そうですよね。僕なんかじゃ力になりませんよね……」
アユムは今にも泣き出しそうに眉を寄せ、肩を落とす。
「冗談だよ。さっ行きましょう」
アユムの頭をポンポンと叩いて、先に進む。
「ひどいですよ~ツボミさん~」
涙交じりの声でアユムはその後を追いかける。そういう事をするから幼く見られるのだろう。
二人はしばらく歩き続けると広い空間に出た。その空間に踏み込んだ瞬間、パッと明りが付く。いきなりの光にアユムは目が眩む。異変を勘づいたのはやはりツボミだった。
「アユム構えて!」
モンスター〝スカルナイト〟が何十体も現れる。〝スカルナイト〟は戦死者の骸骨が戦いへの執念により現れるモンスターだ。集団でプレイヤーを襲い、その数を持って圧倒するモンスター。その全てを倒す為には地道に一体一体倒すか、集団の中に紛れてる〝スカルナイトリーダー〟を倒せば一度にすべてを倒す事が出来る。
「〝スカルナイト〟ですか」
「戦力は大したことないけどこの数はちょっとまずいね」
「いえ、大丈夫ですよ。ツボミさんは後ろにいてください」
ツボミは疑問に思ったみたいだが、一歩後ろに下がる。
アユムは身を屈めて、右手を引き絞り剣尖を前にして左手を前に出して構える。
響く旋律、フルートの音色は次第に速くなりその音色が速くなるほどにアユムを包む風が激しさを増し、アユムの姿が霞み、消える。
「スキル〝絶影〟」
キンッと音と共に刀を納める。アユムの声はスカルナイトの群れの向こう側にいた。次の瞬間 〝スカルナイト〟の体に無数の線が入り、そこから赤いダメージエフェクトが迸る。みるみる内にHPバーが白くなっていき最後には全て真っ白になってポリゴンの欠片となって部屋中に雪の様に降り積もる。
「おお~アユムやるね~」
感嘆の声と拍手を送るツボミ。
「でさっきのは何? 一瞬だけど君の下にバフアイコンが出たように見えたけど」
「ええ、風の補助魔法その高度魔法〝アクセル〟です。効果持続時間は一秒にも満たないですけど相手に知覚させない程速く動く事が出来ます。あの一瞬で〝スカルナイト〟一体に付き十回以上斬りつけてたんですよ。けど消耗も激しくて今のMPじゃ三回が限度なんですけどね」
―――スキルとは〝楽曲システム〟と対をなすシステムで正式には〝武術スキル〟武器の動きをシステムに覚えさせ、それぞれにスキル名を付け、次からは名前と動作と条件を揃えるとシステムがその動きを再現してくれるシステムだ。普段できないようなこともこれを使えば漫画やアニメのように派手な技を手軽に使うことができる。ただスキルは使った後少しの硬直時間があり、使いどころも難しい。ただランカーともなるとスキルからスキルを繋げることが可能なプレイヤーも珍しくなくなる。今回アユムが使ったスキル〝絶影〟は動作として突きの構え、条件として高度魔法〝アクセル〟を使っておく必要がある。
―――高度魔法とはその曲が素晴らしいとシステムが判断して魔法に恩恵が付いた魔法を高度魔法と呼ばれるようになる。普通の魔法よりもMPを多く消費してしまうが効果はその三倍を得られると言われている。高度魔法を持っているプレイヤーは多く、そこそこのレベルに達している者なら一つは持っている。同じ魔法を何回も使うとか、曲を奏でる時、心を込めるなど色々な憶測が飛んでいるが高度になる条件は明確には分かっていない。
少し誇らしげに答えるアユム。納得したようにツボミは何度も頷く。
如何でしたでしょうか?
読んでくださった方ありがとうございます。




