集結
そして領土戦が開催される日、アユムとツボミは領土戦の戦場に行くためのポータルがある広場に集合していた。今回の領土戦に参加するプレイヤーも集まっている。傭兵の様な屈強な男から、戦争に行くには場違いな軽装の服を纏った女、小学校で勉強をしてそうな年齢の少年、少女も談笑したり、最後の装備の点検をしたり、居眠りしたり各々思い思いの方法で開戦するのを待っている。その中でツボミとアユムも談笑している。
「いよいよですね、ツボミさん。一人でも多く敵を倒して貢献しましょう」
「ううん。アユム参加するなら成績一位目指すくらいの意気込みで行こうよ。フィリアンとも組むんだから出来ない事じゃないと思うよ」
「そうですね。目指すのは自由ですよね。僕頑張ってみます!」
「その意気だよ」
と微笑ましい会話をしていた。その時広場にいるプレイヤー全員がざわついた。そしてある一方に視線を向ける。
そこには真面目な顔して槍を片手に持ち戦闘準備を整えたフィリアンが歩いてくる姿があった。
「なんかフィリアンさんこの前と雰囲気変わってませんか?」
「あれは公務用の姿だよ。要するにネコ被ってるの。しかもその被り方が凄いんだから普段の姿なんて御くびにも出さないもの」
呆れ顔でそう説明するツボミ。まだ領土戦は始まってもいないのにどこか疲れてるようだ。
「皆集まってくれてありがとう! 心より感謝する。だが戦争は勝たなくては意味がない! 全員の力を全て出し尽くし勝利に導こう! もちろん私も全力を持って戦わせてもらう」
そして槍を高々と掲げ宣言する。
「勝利をこの手に!」
オォーと広場に集まったプレイヤーが一斉に歓喜の雄叫びを上げる。その熱に当てられたのかツボミもアユムも声を上げている。
「では行きましょう」
ストレージを開き一本の黄金の鍵を取り出し後ろの虚空に鍵を突き指し回す。すると一筋の光が空に伸び、左右に広がっていき光の扉を形作った。
気が速いプレイヤーは我先にと飛び込み、飛び込んだのを皮切りに次々にプレイヤーが流れ込んで行く。その流れに逆らう様にフィリアンがアユム達の元に歩み寄ってくる。
「やぁお二人さん。よろしくね」
「フィリアンさん! とってもカッコ良かったです!」
「ありがとう。ツボミはどう思った?」
「調子に乗らない。喜ぶのは後ででしょ。私はランカー二位の力を信頼してるんだから」
「もちろん。期待しちゃって!」
そう言ってフィリアンは予定調和に従う様にツボミに飛び掛かった。そして予測していたのだろうツボミが流れる様な滑らかな動作で腕を取り関節を固め、背中に回り動きを止める。
「もちろん、暴走した場合の約束も期待してるからね」
「ツボミちゃんそれ以上曲げないでもげちゃう……」
空いてる手でツボミの腕をタップする。
「ツボミさんそろそろ離してあげたらどうでしょう? 皆さん行ってしまわれますよ」
「そうね」
パッと手を離し、ウインドウを開きパーティー申請を送る。すぐにアユムとフィリアンの視界に申請メッセージが届く。アユムとフィリアンはすぐにYESのボタンを押し、視界の左隅に二人の名前が追加されたのを確認すると更にウインドウを操作しフィリアンをリーダーに設定する。
「私で良いの?」
短い問いかけを発しフィリアンだが、ツボミも当然と頷き、
「だって国を治めてるフィリアンがパーティーのメンバーじゃ他の人に示しが付かないでしょう」
「私は別に気にしないから良いのに」
「私が気にするのよ」
憮然とした表情で答えたツボミ。そんな遣り取りをしている内に扉を潜っていないプレイやーはアユム達と数人のプレイヤーだけだった。
「そろそろ行きませんか? 領土戦が始まる時間も近づいて来ていますよ」
それに気付いたアユムが促すと二人も頷いて扉に足を向ける。
「さーて、殺戮の時間ね」
「物騒な事言わないの」
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