↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/10

最終話 「家路」

 夕方の柔らかな木漏れ日が差す森の中。虫たちの静かな声が響く緑の中に、軽い足音が駆け抜けていく。


 美しい銀色の髪を揺らす幼い少女。その手には、剣のようにも見える木の枝。少女はそれを、楽しげに振り回していた。


「あまり走ると危ないですよ」


 少女の背後から優しい声が掛かる。振り返った先には、穏やかな眼差しを向ける男──ハミルがいた。


「父さま!」


 少女が目を輝かせ、満面の笑みでハミルのもとに駆けて来る。その笑顔は、自分を救ってくれたあの人によく似ていると、ハミルは思った。


「そろそろ夕飯の時間ですからね」

「はーい!」


 手を繋ぎ歩く親子。ハミルは左手で握った手の温もりを心地よく感じていた。


「ねぇ、父さま?」

「なんですか?」

「わたしね、おおきくなったら、父さまみたいな剣士になる!」


 屈託のない笑顔で言う娘の言葉に、ハミルは一瞬だけ困惑の表情を浮かべた。

 剣を握るということは、いずれは誰かの命を奪う。自分のような血に塗れた道を、娘が歩もうとしているのかと。

 しかし、少女の続く言葉で、その認識は変わった。


「だって母さまが言ってたよ、父さまの剣はやさしい剣で、ひとをまもるための剣だって」


 ハミルはハッとした。そうだ、何も命を奪うだけが剣ではない。何かを、誰かを守るために振るう剣もあるのだと、あの人が教えてくれたではないか。


「だから、わたしも父さまみたいに、だれかをまもる剣士になりたい!」


 一切の曇りもない眼差しで、少女は力強く言葉を放つ。そこには、父への強い尊敬が込められている。

 ハミルが小さく笑う。少女の姿に、自らの迷いが全くの杞憂だったことを思い知らされ、自嘲した。


「分かりました、じゃあ、明日から稽古をつけてあげますね」

「うん!」


 自然と、娘の手を強く握っていた。今はまだ柔らかく、小さいこの手が、やがて誰かを守るために剣を握ることになるのだと思い、胸が熱くなった。かつては血に塗れていた自分の手を、娘は何の迷いもなく握ってくれる。


「では今日は早く帰りましょう。家で母さまが美味しい夕飯を作って待ってますからね」

「やったー!」


 ゆっくりと日が落ちようとする中、親子は手を繋いだまま、母親──エイミィの待つ家へと歩いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。