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夏休みの帰郷  作者: けろよん


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第6話

 海月の言葉に俺は深く頷いた。彼女と一緒にツチノコを追い求めることが決まった。それがどんな運命を引き寄せるのかまだ分からない。でも、今はただ彼女と一緒にこの謎を解き明かしたいという気持ちが強くなった。


「行きましょう。私と一緒に」


 海月は微笑みながら俺を見つめた。その瞳には少しの不安と、けれど確固たる決意が込められている。


 俺たちは公園を後にし、静かな町の道を歩きながら何も言わずに歩を進めた。

 暗くなるにつれて街灯がぼんやりと道を照らし、周りはひっそりと静まり返っていく。

 前は夕方に歩いた道だったが、今は夜の静けさが不安を煽るような気がしてならなかった。


「海月、またあのツチノコの眠っていた場所に行くのか?」


 俺は思い切って彼女に質問を投げかけた。

 海月は歩きながら、少し考え込むように視線を前に向けた。


「ツチノコはもうあの場所にはいないかもしれない」

「ツチノコがいない?」

「あれはもう活動を始めたから。だから私は会いに行く事を決めたのよ」

「じゃあ、どうやって見つけるんだ?」

「ツチノコを見つける方法は実は決まっているの。私にはそれが分かるパワーがある。ツチノコが現れる場所には何か特別な『印』が現れて私にはそれが分かる目があるってこと」

「ツチノコの付けた特別な印?」

「そう。ツチノコはただの幻の生物じゃない。彼にはある種の力が宿っていて、それが特別な痕跡を残すの。あれはもう目覚めてしまったけれど、真の力を引き出すためにはその力を覚醒させる神聖なる場所に行かなければならない」

「力を覚醒させる神聖なる場所?」


 俺には分からないことばかりだ。海月は厳かに頷いた。


「ツチノコが目覚める時、その真の力が覚醒する場所があるんだ。その場所を私達は今から突き止める」

「そんな場所が、この町のどこかに隠されているわけか……?」


 海月は少し黙ってから、ゆっくりと答えた。


「多分、あの場所から遠く離れてはいないはず。同じ山のどこかだと思う。私たちはまずその場所を探さなければならない」


 彼女の言葉を聞いて、俺は心の中で何かが動き始めたような感覚を覚えた。

 ツチノコを見つけるためには、ただの伝説や噂に頼るのではなく、実際にその力が覚醒する場所を見つけ出さなければならない。それが、この町に隠された秘密を解き明かす鍵になるはずだ。


 俺たちは山へ向かう道を歩きながら、いくつかの場所を思い浮かべていた。だが、どこがその「ツチノコを覚醒させる神聖なる場所」なのかは分からない。

 前に会ったのはただの山の途中に流れる川だった。目覚めたツチノコはもうそこから別の場所へと向かったのだろうか。


「海月、どこか心当たりのある場所は?」


 俺が聞くと、海月は少し考えてから、ゆっくりと答えた。


「あの山の奥には、古い神社があるんだけど……そこかもしれない」

「神社?」


 海月は頷いた。


「その神社は誰も訪れないような小さなものだけど、何かしらの力が感じられる場所なんだ。私も何回か行ったことはあるけど、そこで何かが起こるのを感じたことがある。実際には起こらなかったんだけど、今ならあるいは……」


 俺はその言葉に、ひとつの確信を持った。

 神社……それはこの町で何か特別な事情があって建てられた物に違いない。お祖母ちゃんがツチノコの伝説を語ったこの町なら、ツチノコを祀っていたとしても何の不思議もない。

 もしそこにツチノコの真の力が眠っているのだとしたら、その場所を探すことが最初の一歩になるはずだ。


「海月はどうしてそこまで真剣になってツチノコを追うのか……」


 そんな疑問は前を向く彼女の顔を見ればすぐに消えた。俺は彼女と一緒に過ごし、彼女と一緒に行くと決めたのだから、些細な疑問など何の意味も持たないのだ。


「じゃあ、行こう。今すぐに」


 海月は少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んだ。


「ええ、行きましょう」


 俺たちは山の神社へと向かって歩き始めた。道は段々と静かになり、周りの家々もまばらになってきた。少し心細い気持ちになったが、それでも俺は海月と一緒に歩くことに心強さを感じていた。


 川を横目に見ながら山道を登っていく。ツチノコは前に眠っていた場所にはもういなかった。やはりもっと奥へと向かったのだろう。

 海月にはツチノコの残した印が見えているのだろうか。彼女の足取りには何の迷いもなかったが、腕が僅かに震えていた。


「海月、俺がついているから」

「ありがとう」


 やがて神社に着くと、そこは思ったよりは広くて静かな場所だった。周りには大きな木々が立ち並び、神社自体は古びているものの手入れはされているのだろうかしっかり建っているように見えた。

 その神社の入口に立つと、何かが空気を変えたような気がした。


「ここだ」


 海月が静かに呟いた。

 俺達は神社の境内に足を踏み入れ、周りを見渡した。小道を進み、社殿に近づくと、突然、冷たい風が吹き抜けた。その瞬間、背筋がゾクッとするような感覚が走った。


「海月、何か感じる?」


 俺は尋ねた。

 海月は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。


「うん……ここで間違いない。ツチノコの力が祀られた神聖な場所だ」


 彼女の声には、どこか不思議な確信があった。


「ツチノコはどこに……?」


 俺が探そうと足を踏み出しかけたその時、突然、社殿の前に立つ大きな石の柱が、かすかに震えた。まるで何かが動き出すかのように、空気が重くなり、俺たちの周りの景色がぼんやりと歪んだ。


 そして、その瞬間。土の中から、何かがゆっくりと現れた。


 それは、間違いなくあのツチノコだった。


「ついに……動き出す時が来てしまったのね……」


 海月が震える声で呟いた。

 目覚めたツチノコが俺たちの前に現れた。

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