第87話 暇つぶしの王都探検的な?
帰省してまたすぐに1週間が経った。早いものだな。
結局、稽古とトレーニング以外はずっとだらだらしていた。ユリアとの会話の練習もしたし、たまにレッドも混ざっていた。まあ成果はほとんどないけど。結局今までと同じ受け身。
そんな感じで、帰省中、特に何かあったわけじゃないけど、田舎の自然は堪能できたし満足だ。
俺はのんびりできたし、帰ろうと思うが、レッドはまだ修行のために残るらしい。ユリアは俺と一緒に王都に戻るそうだ。
レッドは「それじゃ、また夏休み明けにな」とだけ言って、すぐに稽古に励んでいた。父さんは「また来年も来いよ」と俺たちに別れを告げ、稽古を再開している。
レッドがどれくらい成長するのか、楽しみじゃないけど……まあ、ちょっとだけ楽しみだな。
そして俺とユリアは朝日が昇り、光が照らす中、馬車に乗って王都へ帰る。馬車が動き始めて、父さんと母さんは俺に手を振る。恥ずかしくて振らなかったけど、頭だけは下げといた。
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ということで、王都へ帰ってきた。王都はいつも通り人でにぎやかだった。
久しぶりに戻ったし、王都のこのざわめきや賑やかさもいいかな……って思いたかったけど、全然そんなことなかった。また人酔いしそうで気持ち悪い。ユリアに念のため治癒魔法をかけてもらいながら寮に着く。
寮に帰ると、さっきとは変わって、懐かしさを感じる。やっぱ自分の部屋は落ち着くよなあ。俺は部屋に入ってすぐにベッドにダイブした。実家に帰っても、寮に帰っても、やることは同じ。ダラダラするだけだ。これが俺の生きがい。
ああ最高……。もう何もしたくない……。で、なぜかユリアも俺の部屋に入ってくる。
もうやめましょうよ!そうやって平然と俺の部屋に入ってくるのは!どうせ俺が勝手にユリアの部屋に入ったら訴えるんだろ!?男女逆転したらなんでこうなるんだ!
……と心の中で叫んではいるが、真顔を貫き通す。ユリアはだらけている俺を見て、さっそくため息。
「はあ……チー君は寮に帰ってきてもそうやってだらけてるぅ」
「え、いや、でも、やることないじゃないですか」
「やることって……」
ユリアは少し困ったように首を傾げた。ゲームがあれば間違いなく没頭出来ていた。この世界は剣技はあるからなのか、スポーツのような娯楽がない。とにかく娯楽が少ないのだ。
だから大体の人は、商売やギルド活動、料理、学園なんかで時間を潰してる。それと俺はユリアにも物申す。
「あと当たり前のように俺の部屋に入ってこないでもらえますか」
「別にいいじゃん……チー君も一人じゃ寂しいでしょ。それに話したいこともあるし」
「話したい事?」
「その、ね?一緒に出掛けたりとか、しない?い、嫌ならいいんだけどさ」
「え」
ユリアはちょっと目を逸らしつつ、サイドの三つ編みをいじりながら提案してくる。こいつ照れるといつも髪いじってんな。それに、まるでデートの誘いみたいだ。
でも勘違いはしない。そりゃ、俺はあくまで騎士としてしか見られていないし、誰だって誘う時は緊張するもんだ。しかも異性なわけだし、仕方ない。
ユリアにとって、気軽に話せる人が、今は俺しかいない。レッドは俺の実家に残っているし、ネクラもクラウドもサンも帰省中だ。俺はいつだって状況を見て分析するのだ。すぐに浮かれて失敗しないように。
まあ、誘い自体は、多少暇は潰せるしいいんだけどさ。少しくらいは。
「あ、はい。暇ですし、えっと、大丈夫です」
「……やった!そしたら行こ!?」
ユリアは目を輝かせて自分の部屋に戻り、準備し始める。う~ん、まあ喜んでくれてるっぽいし、いいか。ほんと、俺といて何が楽しいんだか……。未だに自分から何か話せるわけでもないのに。
俺はワクワクしているユリアに黙ってついて行った。
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俺とユリアは賑やかな王都の街をゆっくりと歩いて行く。セクハラや痴漢冤罪にならないよう、ユリアの斜め後ろあたりを、絶妙な距離感で歩いていた。しかし、行先は聞いてないので、どこに向かっているのか分からない。
「あの、ユリア……」
「なあに?」
「結局今ってどこに行ってるんですか」
「適当!」
はあ? 暇つぶしになるかと思って出てきたのに、ただの散歩かよ。しかもユリアを歩かせたら、超絶方向音痴が発動しかねない。
「あ、チー君はどっか行きたいところあったりする?」
「自分の部屋」
「お出かけの意味ないじゃん!?」
本当はゲーセンに行きたい。
「……とりあえず、適当にぶらぶらしよ?服屋とかもいいかも」
「え、あ、はい」
大丈夫かなあ……。
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今は、ユリアが目につけた服屋に来ている。
「見てチー君!これ似合うと思う?」
「あ、はい」
「じゃあこれは?」
「あ、はい」
「適当に言ってない?」
「あ、はい」
「ちゃんと見てよお!」
ユリアがいろんな服を見て、俺に似合うか聞いてくる。これ完全にデートじゃねえか。
で、人とまともに目を合わせることもできない俺は、ユリアを直視できるわけもなく、適当に返事を繰り返していた。
ユリアが拗ねてむくれている。可愛い。
「あ、そうだ、チー君の服も見ようよ!いつも制服着てるけどさ、もっとおしゃれしよ?」
う、それは嫌だ。制服が一番無難だろ。まあ前世はチー牛で何着てもきもかったし、親の決めた服しか着てなかったが……。
服もゲームも料理もなにもかも、「誰がするか」で結果が決まるんだよなあ。同じユリクロの服でもイケメンの方がかっこよく見えて、ブサイクは地味でダサく見える現象と同じ。
まあ、今世は俺は容姿に恵まれてるけど……今更めんどくせえよ。
「いや、あの、めんどいんで……」
「これなんかどう?」
「聞いてねえし……」
ユリアは楽しそうに、俺に服をいろいろと持ってくる。はあ……まあいっか。少しくらいなら付き合ってやろう。




