第88話 暇つぶしの王都探検的な? 2
服屋を出て、俺はあたりを見回す。
まあ、異世界にしてはいろんな店があるよなあ。八百屋とか、飲食店、この服屋とか。
「チー君?何見てるの?」
「え、あ、いや、別に」
「ふ~ん?」
ただ街中を見てるだけなのだが。へえ、カジノっぽい施設もあるんだなあ。ギャンブルはどの世界でもあるんだなあ。
カジノ店の隣には、なにやら装飾やらで目立つ店がある。ほう、あれは……。
「ち、チー君見ちゃダメ!」
「うお」
急にユリアが俺の目を両手で隠してきた。なんなんだこいつは。俺は慌てているユリアに問いかける。
「え、なんですか?何を見ちゃダメって」
「あ、ああいうお店は見ちゃダメ!」
……あ、なるほど。カジノ店の隣の風俗店か。“えっちなのはメ!”的なノリか?別にいいじゃん。モテない男の唯一の救いの場だぞ。てか、どこの世界も性を商品にするんだな。
「別に見るくらいよくないっすか? いろんな店が視界に入るだけだし。なんでダメなんすか」
「え、いや、ダメじゃないんだけど……なんで、だろう。チー君がああいうの見るの、嫌っていうか……な、なんでもない!」
……なんなんだ?可愛いけどマジでめんどいな。
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その後も色々と見ていたのだが、ちょっと見たことのある道まで来ていた。ここら辺って、確かリングを買った魔道具店があったよな。
そういえば、あの魔道具店の怖そうな店主、「俺の店を紹介してくれよ?」とか言ってたし、ちょうどいいから、ユリアを連れてってみるか。
「ユリア、ちょっといいすか」
「ん?どうしたの?」
「ユリアに紹介したい店があるんすけど」
「え?なになに?気になるな~」
しばらく俺が先頭で歩く。道は何となく覚えているからな。一回行った店とかは、何となくの記憶を頼りにすぐ覚えられる。ということで迷わずに着いた。
「ここです」
「……魔道具店?」
ユリアは意外そうに店に入っていく。中は以前来たときと、ほとんど変わっていなかった。客もいまだに少ない……というかいない。よく潰れないな。店主が俺たちを見て、にやりと挨拶をする。
「いらっしゃい。おお、お前か。彼女いたんだな」
「違います」
俺は速攻否定する。ぐ、やっぱ二人でいるから勘違いされやすいな。ユリアも、いつも通り否定してくれよ。ていうか、街中でクラスメイトとでもすれ違ってたらどうしよう!夏休み明けに俺とユリアが一緒に歩いてるなんて噂が広まったら……それはまずい!目立ちたくない!
恥ずかしさで顔が赤くなってきたと思ったら、その後のことを考えて一気に血の気も引いていく。
「……お、おい、どうした、お前。めっちゃ顔青白いが」
「……あ、いえ、なんでもないです。えと、約束通り、その、知り合い連れてきました」
俺はすぐに正気を戻して店主と話す。
「切替速いな……にしても、嬉しいね。お前の事ちょっと信用無かったが、ほんとにひいきにしてくれるとはな。リングもお前に預けた甲斐があるってもんよ」
店主は嬉しそうに笑っている。まあ、普段ちょっと怖いけど、悪い奴じゃないしな。あと、ついでだよついで。ちょうど魔法師がいるから連れて来ただけ。厳密に言えば治癒師だが……。
ユリアはぐるぐると魔道具を見て回っていたが、感心してつぶやく。
「す、すごいね。このお店の商品、全部質が良い。チー君すごいお店見つけたんだね」
「人通りの少ない場所へと進んでいったら、たまたま見つけただけです」
「あ、あはは、そうなんだあ……チー君らしいや」
ユリアが苦笑しながら、一つの杖に目を付けた。
「じゃあ、この杖ください」
「おうよ。10万ウェンだ……お前の知り合いはみんな金持ってるんだな」
学生なのに、そんな大金を平然と出すユリアにちょっと引いている店主。まあ、元王族だし、帰省中もメイドからけっこうもらってたっぽいから。あ、護衛代メイドから強奪するの忘れてた。
ちなみにユリアが買ったのは、迷宮の中層で取れると言われる純マリョクコウ100%で作られた質の良い杖だった。マリョクコウは、ミスリルに次ぐ魔素伝導率を誇る。
ユリアはちゃんとそういうのも判断して買ったようだ。魔法の才のあるユリアにはちょうどいいだろうな。
「じゃあ、また頼むよ」
「ありがとうございました。じゃあ行こ?チー君」
ユリアに手を引かれたそのとき、店主が“待った”をかける。
「待った、お嬢ちゃん、ちょっとそいつ借りていいか?」
「え?はい、じゃあ先に外で待ってるね」
そう言ってユリアは店の外に出る。……めちゃくちゃ怖いんだけど……。何言われるん?俺なんかした?俺は冷や汗をかいて、どんどん鼓動が速くなる。
「おい待て待て、なんでそんなにビビってるんだ、ちょっと一言いいたいだけなのに」
店主が俺の様子を見て心配そうになだめてくる。なんの話だ?
「えっと、なんでしょうか」
「ずいぶんと珍しい客を連れて来たなと……」
「え?どういうことです?」
「治癒師だろ」
「え、なんでわかって……」
「それに俺は魔道具店のプロだぞ?金髪と碧眼を魔道具で変えてることくらい何となくわかる。ずいぶん珍しい魔道具を持ってたんだな」
なるほどな。それでユリアが治癒師だとバレたのか。う~む、これだといつユリアが王族だと学園でもバレて、神声教団に襲われるか分からんな。面倒なことになりそうだ。
店主はカウンターのものを整理しながら、また俺に話しかけてくる。
「ああ、それと、あの嬢ちゃんの事、大事にするんだぞ」
「……え、あ、なんで?」
「なんでって……その顔、まさかお前、あの嬢ちゃんの好意に……はあ。まあいいや、とりあえず頑張れよ」
「あ、はい」
「……」
「……あ、終わりですか?」
「ああ。それだけだ。引き留めて悪かったな。……はあ」
店主は手をひょいと振りながら店の奥へと姿を消した。何だったんだ……?
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その後、ユリアと一緒に、斜め後ろをキープしながら寮へと帰っていった。ユリアは俺に振り返る。
「今日はありがと。チー君の紹介してくれたお店で買ったこの杖、大事にするね!」
「え、あ、はい」
まあ、高い金出したんだし大事にしないともったいないわ。
「この杖に、名前つけてあげようかな〜」
なんでやねん。杖は杖やろがい。まあ、ユリアはいつも以上に楽しそうだしええわ。俺もまあ、暇も潰せたし、ちょっとは楽しかったかもな。




