表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/118

第83話 夏休みのとある1日




 実家の滞在期間はひとまず2週間を予定している。夏休み自体は1か月(この世界では1か月=37日前後らしい)ほど。レッドのお気持ち次第で伸びるかもしれないが、別にレッドが残りたければ俺だけ王都に帰ってもいいしな。


 田舎は良い、野菜は美味いし、虫も可愛い。特にトンボ、この世界にもいるけど、マジで可愛い。あのキュートな目、あの凛々しい飛行中の姿、なぜか警戒心も無く指に止まってくる懐っこさ。


 人間と違って、本能で生き、何も裏表などないから、ほんと好きだ。動物はもっと可愛い。犬とか、鳥とか、飼い主に嘘偽りなく、懐いてくれる。嬉しいときは表情や行動で示す。怒るときは怒る。


 人間は嬉しそうでも、実はそう装ってるだけかもしれないし、言葉で優しくしてても裏では悪く思ってるかもしれない。めんどくさいんだよマジで。


 人間の世界ってのは、嘘でまみれた世界だ。みんな何かしらの嘘を抱え、人前では建て前で振舞う。


 悪口を言ってはいけないし、基本的に優しい、かっこいい自分だけを見せる。だから相手の本音は相手自身にしかわからない。特に家族や友人は、自分を傷つけまいと嘘をつく。本当に疲れる世界だ。


 この嘘で塗り固められた人間社会は果たしていいのかとも考えた。でも、その嘘があるから確実に”秩序”は保たれているのも事実。みんな自由に物事を言えば、争いは絶えないだろうしな。でも裏を気にしなくても済むから今よりは疲れない……と思う。ユリアやレッドだって、本当は俺をどう思ってるかなんてわからねえし。


 はあ。なんで俺は夏休み中にこんなこと考えてんだか。まあそれくらい暇ってことだわ。ゲーム以外の楽しみを見つけたいものだ。強いて言うなら魔法は楽しいけどな。ゲームほどじゃないが。


 そういえば、メイドがいなかったのでユリアが俺の父さんに聞いたところ、「メイドは王都で仕事があると言っていたぞ。たまに帰っては来るけど、基本は向こうだろうな。会ってないのか?」とのこと。


 多分、城でルイやシツジと働いてんだろう。元々城で働いてたメイドだしな。ユリアは少し悲しそうにしてたけど、今度会いに行くっぽい。


 で、夏休みの帰省中は、何かするということでもなく、ひたすらにだらだらとしている。しっかりもののユリアも落ち着くのか、のんびりと過ごしている。会話は特にない。窓の隙間からの風も涼しい。ああ、平和だー。


「おいチー、暇だったら久しぶりに稽古でもしないか?」


 ダラダラしてたら、窓からひょっこり父さんが顔を出す。覗くな変態。ええ、だるいなあ。でもまあ別にいいか。


「あ……はい」


「よし。こっち来い。お前の剣の腕もどれほど上達したか見たいしな」


 ああ、剣の腕は特に変わっちゃいない。魔法は伸びしろはあるが、剣は特になあ。いつの間にか自身の型みたいな感じになってるし。とりあえず、俺は練習用の木剣を持って外に出た。




 ---




 久しぶりの稽古は実に気持ちの良いものだった。


 学校の剣技の授業は学生のレベルに合わせているため、レベルが低いので、こうして剣聖の父さんの稽古を受けると、なんだかちょうどよく感じる。レッドはかなり疲れているが、まあ初めての本格的な剣技の稽古を受けたにしては、耐えられているだけ素晴らしいものだ。


「ちょっとレッドと組手してみろ」


「え」


 父さんにそう提案される。そういえば、レッドと戦ったことは無いんだよな。剣技の授業で動きくらいは見たけど。レッドは「俺からも頼むわ」と俺に向かい合ってくる。まあいいか、と俺は承諾する。




 ---




 結果はレッドの惨敗。正直、確かに。剣技大会のブルー戦の時のように、動きは速いし素晴らしい、実際に戦ってみるとすさまじかった。ただ、動き自体が単調すぎて読みやすい。まあ、脳筋スタイルって感じだ。全部受け流してやった。


 ただ、レッドのパワーはかなりの物で、レッドの剣を受け流す際の反動がかなり腕に響いたわ。さすが脳筋。実戦などで動きをもっと増やせばもっと強くなれるんじゃないかな。


 ……っていうのをレッドは稽古の中で父さんにも言われていたようだ。相手より速く動ければ問題ないと思っていたようだが、俺を利用して改善点を明確にしようとしたんだな。まあ、改善点はわかっても、直せるかはレッド自身だが。レッドはゆっくりと俺に近づき、手を差し伸べる。


「やっぱお前ってつええんだな……」


「え、あ、その、すいません」


「謝るな!悲しくなるわ!」


 どうこたえりゃいいんだよ……。




 ---




 昼過ぎ、リビングには俺とユリア。物音は一つもなく、寝返りを打つソファのギシギシ音が響くほど超静か。父さんとレッドは外で稽古、母さんは庭でガーデニング中。俺は適当にソファでゴロゴロしていたのだが……。


「チー君ってさ」


 椅子に座って本を読んでいたユリアが急に俺に話しかけてくる。


「え、あ、はい」


「話しかけてくることほとんどないよね」


「え、はい?」


 ちょっと言ってる意味が分からない。


「いや、チー君から私に話しかけてくることってほとんどないよねって。レッド君やネクラ君にすら自分からは話しかけないもんね。あるとしても、質問くらい?私から話しかければ、ある程度は話してくれるけど」


 ああ、なるほどな。コミュ障の典型的なパターンだからな、俺は。基本ユリアやレッドからの会話だ。絶対に自分からは話しかけない。正直言って、聞かなきゃいけない質問するときでさえ緊張してしまう。


 前世は俺がしゃべれば沈黙やクスクス笑いされる始末。てか俺がしゃべるの珍しくて注目されてたし、声真似されていじられた。ちなみに前世の俺は顔だけでなく声も中性的できもかった。だからしゃべりたくなかったってのもある。


 まあ今はちゃんと男らしいイケボで安心だが……。


「チー君ってなんで自分から話しかけてくれないの?やっぱり不安?」


 不安や。当たり前や。


「いや、だって、その、例えば『今日いい天気だね』と話しかけたとして、いやだから何?ってなりません?」


「へえ、じゃあいつも私の話、だから何って思って聞いてたんだ……」


 ユリアはじとーっと俺の顔を見てくる。やばい、地雷踏んだか?


 俺自身ユリアの話を聞いて、別にだから何とも思わないというか、むしろなんで俺なんかと話してくれるんだろうっていう謎のうれしさはあった。うう、でも言いたくねえな。俺は目を逸らして必死に言い訳を考える。


「いや、その……俺は思って、なくもないけど、いや、確かに、う、ああ……」


 ユリアはたじろぐ俺を見て口を軽く押さえて笑う。


「あはは、冗談だよ。確かに雑談とか会話ってあんまり意味ないものも多いもんね。でも友達との会話ってそんなもんじゃない?ただ話したいだけとか、繋がりのためとかさ。あ、迷惑だったら控えるけど……」


「いや、迷惑じゃない、マジで……あ、いや、はい……」


「ほんと?それならよかった」


 俺はとっさに言葉が出ていた。いやまあ、迷惑じゃないのは事実だから……。会話ってそういうもんなんだよな。


 でもどっちにしても、適当に生きてる俺には会話のネタが思い浮かばないからな!あはは!会話無理!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ