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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第60話 圧倒的な才能の前には無力だよな




 あれから、学園祭が始まった。もちろん、参加はしていない。今日も屋上でネクラと仲良くサボる。これぞ青春。


 で、2日目の学園祭から、剣技大会が始まる。一応、レッドの剣技大会は見に行くと約束はしてある。行ってやらないと関係がこじれてしまいそうだからな、はあ、人間関係ってめんどいな。


 初日は屋上で時間を潰して、いつの間にか剣技大会日がやってきた。


「チー!俺の雄姿を見てろよ!」


「あ、はい」


 レッドはやる気満々だった。雄姿ってなんやねん。とりあえず返事だけはしておく。


「頑張ってね、レッド君!」


 ユリアも両手でガッツポーズしてレッドに応援を送った。レッドなら、最悪なパターンでもない限りは決勝近くまではいくだろうな。


 こう見えて、いや、見た目通り?でかなりの努力家だ。あとは、”中途半端な才能”というイメージがある。普通の生徒よりは確実に強いが、突出していない感じ。まあ、レッドの剣技見たことないんだけどな。


 レッドはワクワクした様子で抽選会場に歩いて行った。剣技大会はトーナメント形式で行われる。もちろん、トーナメント表の対戦相手は抽選で決まる。レッドは今からその抽選に行くというわけだな。


 で、さっき言った”最悪なパターン”なのだが、序盤にブルーと当たるパターンのことだ。ブルーとやり合えば、レッドでも苦戦を強いられるだろうな。ていうかすぐ負ける。まあ、さすがにそんな悪運は持ってないだろうさ。


 ネクラは俺にさらっと聞いてくる。


「師匠は誰が優勝すると思うんすか?」


「え、ブルーしかないですよ」


 俺は即答した。まあ、友人のレッドを立ててやりたいところだが、ブルーはそんな次元じゃないからな。


 あれからもブルーは死ぬんじゃないかってくらい自分を追い込む修行をしていたのを見た。あいつ、そんなに強くなって何を目指してるんだろうな。


 平和が一番。まあ俺の価値観を押し付けるつもりは無いが。


 しばらくしてレッドが戻ってきた。


「俺の番号は1番だったぞ!」


 1番か。なんかすごい数字だな。ってことは、恐らく1回戦ということになる。


 ちなみに、1年生の参加人数は20人ほどだ。こんな大々的に行われるわけだし、ましてや1年生だから、怖くて参加を躊躇する人も多いのだろう。2年3年は1年の倍以上の参加者がいるらしいからな。


 掲示板のトーナメント表がどんどん更新されていく。やはり、1回戦はレッドだ。相手の2番はまだ空白のままだった。しばらくして、俺は謎に緊張しながら、トーナメント表が更新されていくのを眺めていたが、ついにレッドの対戦相手が張り出された。


「あ」


 ――”最悪なパターン”だった。




 ------




「対戦相手は、ブルーか。いきなりやばい奴だな。でも、ここを乗り越えないと剣聖にはなれない」


 不安になる俺とは対照的に、レッドはブルーと当たっても、やる気は十分で変わらない様子だった。さすがポジティブ思考。


 本気で剣聖を目指しているのだろう。俺ならブルーと当たった瞬間に棄権するわ。


「それじゃ、会場に行ってくる」


「あ、はい」


「頑張ってね、レッド君」


「……」


 ネクラは特に何も言わず無表情でレッドを送る。ちなみにネクラはあの暑苦しい性格が合わないのか、そもそも陰キャ君だからなのか、レッドとは全然しゃべったことがない。


 俺を師匠と慕ってるだけあって、俺とは普通にしゃべる(ただし声は小さい)し、ユリアとも俺ほどじゃないが話せるようだ。


 まあ、陽キャは陰キャの天敵だ。とはいえ、レッドはフレンドリーでまともな陽キャなだけマシか。


 それから俺たちも会場へ向かう。




 ------




 会場は、体育館のようなドーム型の施設だった。俺は見たことないけど、野球とかサッカー場みたいな雰囲気か?それくらいのかなりの広さだ。まあ、学園内の生徒数百人以上が全員入るくらいの広さだしな。それに、護衛や騎士、冒険者としてのスカウトのために学園外部からもいろんな人が見に来るとか。


 席に座るまでの道のりが長い。観客席は人でごった返していて人混みにもまれる。ざわざわと人の話し声や歓声がうるさい。蒸し暑い。うっ、人混み気持ち悪い。何とか空いている席を見つけて座る。やっぱさぼればよかった。


「あの、ユリアさん、治癒魔法、定期的にかけてくれませんか、暑くて、人が多くて気持ち悪い……です」


「え、だ、大丈夫?」


 そういってユリアは俺に治癒魔法をかけてくれて、数秒で霧が晴れるみたいに少し楽になった。いやあ、便利だよなあほんと。吐き気止めいらずじゃん。


 そう言えば、イケメンに転生して気づいたことがある。みんな、街中歩いていても、チー牛時代はだれも道を譲らず我が道を行く奴らが多かったのに、今世はすれ違う時に道を譲らない奴がかなり少ないのだ。


 もちろん堂々と歩いてくる奴もいるが、イケメンに転生してからかなり減った。やはり、前世はチー牛というだけで、相手からすれば「こいつ弱そうだし」「こいつが避けるだろ」という思考で、避けないで堂々と歩いてくるやつが多かったというわけか。


 だから、最初の内は俺がいつも避けていた、面倒ごとも嫌だしな。そうしていつしか、舐められてるのが、いつも俺だけが避けるのが嫌になって、俺自身も避けなくなって、避ける意思のない奴を見極めてわざとぶつかるようにしていた。


 避けないおじさんがたまにいるのも、多分こういう心理からだと思う。知らんけど。


 それで俺はいつしか、相手が避けないか避けるか、見ただけで何となくわかるようになってきたし、相手に避ける意思があれば俺も避けていた。


 で、ぶつかったら絡まれたこともあった。チー牛ってなんでこんなにハードモードなん。


 今は背も比較的高くかなり顔も整っていることからだろう、そういう人が減った。もし絡まれたとしてもある程度は戦える。ああ……これがルッキズム。感動だぜ。


 話は戻るが、戦場からは、まあまあ近い席だった。どこの席も、斜め上から見下ろすような、よくある構造だな。


 しばらくして、ようやく1回戦が始まるようだ。ネクラはこういうの興味なさそうなイメージあったが、意外にもワクワクしながら話しかけてきた。


「ついに始まるっすねえ」


「あ、はい」


「やっぱ師匠は、レッドとブルーなら、ブルーが勝つと思いますか?」


「まあ」


 そりゃあね。レッドも善戦でもすればすごいほうだと思うんだけど。そして戦場にレッドとブルーが入場してきた。


 ブルー目当ての人が多いのか、ブルーの入場で歓声が大きくなる。剣聖の息子という肩書は伊達じゃないな。こうしてみると、ブルーって、小柄で華奢ってイメージが強いんだよな。あんなに強いのに。


 確かに体は引き締まっている。だが、レッドと比べても、体格的には劣っている。それでもあんな馬鹿力が出せるのだからすごい。多分、力の扱い方や戦術、みたいなものを極めているんだろう。


 二人は数メートル離れた位置から、向かい合わせになる。俺もどんな試合になるのか気になって、ちょっと緊張してくる。


「それでは、始め!」


 審判の合図で試合が始まった。だが、その内容は一瞬で残酷なものだった。




 ------




 試合が始まり、レッドはすぐにブルーに突っ込んでいく!と思っていたが、両者ともに様子見していた。レッドならやみくもに突っ込みそうなイメージだったが。


 まあ、レッドも相手が流水型を極めてるのを知っていれば、やみくもに突っ込んでも負けるってことくらい、さすがに分かってるんだろうな。


 ちなみに、勝敗は以前俺とブルーが行った模擬戦と同じで、木剣を使用して、相手に当てられればその人が勝利だ。だから、よほど駆け引きが多かったり、実力が拮抗していないと、試合はすぐ終わる。


 しばらくにらみ合いが続いた後、ついにレッドは動いた。


「速い!」


「そっすね」


 レッドは閃光のように一瞬でブルーに接近する。ユリアはその速さに驚いていた。ネクラもユリアに肯定するが、余裕で目で追っていた。さすがネクラ、さすネク。


 にしてもすごい、レッドはあんなに速く動けたのか。それでも、ブルーには届かない。


 そしてレッドは目にもとまらぬ速さで剣を突きつけた。剣を振り払うより、突きの方が受け流すのは難しい……気がする。詳しくないから知らんけど。


 しかし、ブルーは自然に流れるような動きで、レッドの突きに対してなぞるように剣を縦に動かし、軌道をずらし、そのまま受け流す。


 そのままレッドの剣を弾き飛ばした。レッドは武器を失い、動揺とともに体勢を前方に崩す。ブルーはその隙を逃がすまいと、そのまま目にもとまらぬ速さでレッドのわき腹にひょいと剣を振り払った。バシンと乾いた音が響く。


「そこまで!」


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