第32話 模擬戦後のいろいろ
リーファはチーとブルーの模擬戦を見守った後、職員室へと戻った。
「はあ、またお前は変なことを企てていたのか」
「あ、学園長。あ、そのだな、理由があって……」
「どうせ、ただの興味……と言いたいんだろう」
リーファの席にはなぜか学園長が座っていた。改めて見ても、学園長のオーラはほかのものと違う。なんと言えばいいか、寄せ付けないというか、絶対的自信というか……。その傷のついた鋭い目でリーファを呆れて見ていた。
リーファはとりあえずすぐに言い訳を並べた。
「あ、いえ、もちろん興味もありますけど、彼らのためです」
「ほう?彼らのためと。なぜ」
「まずブルー。彼は、どこか、自惚れている雰囲気があった。確かに実力は本物だが、少しその自惚れを正してやろうと。逆にチー。ブルーと同等の実力を持ちながら、必死に隠し、自信の欠片も無かった。この二人をぶつければ、互いに課題も見つかるだろうと思いまして。とりあえず、どけてもらえますかね?帰って晩酌したいので」
学園長はフッと笑いながらゆっくりと席を立つ。
「がっはっは、相変わらず言い訳は上手いな。で?どうだったのだ?」
リーファは自分の席で帰る用意をしながら、学園長に話す。
「あの二人は、いずれ、私たちの役に立つでしょうね」
「ほう。そりゃ楽しみだ」
学園長はそのままリーファの横をスッと通り過ぎて、職員室を出ていった。リーファは静かに、含み笑いを浮かべていた。
「面白くなりそうじゃないか……いずれ最高の力を献上してくれる……いや、とりあえず帰って酒飲むか」
リーファも、カバンと剣を背負って、あくびをしながら職員室を出ていった。
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ブルー視点 チーとの実戦後に遡る
僕はチーとの戦いで、初めて敗北感を味わった。あの模擬戦は引き分けだった。確かに、負けたわけではない。それでも――。
僕は剣聖の息子として生まれ、父にはひたすらに強くなれ、と言われ続け、毎日、道場で剣に打ち込む日々を送っていた。
道場では負けなしだった。みんな僕より弱かった。僕が強すぎたのかもしれないが。
父には負けは死を意味すると言われ、絶対に負けることは許されなかった。感情は戦いにおいて不要、むしろ死につながると父は口酸っぱく言ってきた。僕には、笑うことも、怒ることすらも許されなかった。
父の人生に何があったのかは分からないが、とにかく強くなることにこだわりを持っていて、父とは会話らしい会話はしていなかった。
僕は13歳になり、学園に通う時期を迎えた。だが、父は本当は学園にも通わせたくなかったらしい。義務教育だから、仕方なく。
もちろん、「友達など作るな」「学園でも絶対に負けるな」とも言われた。僕も、誰にも負けるつもりはなかった。
しかし、今日、なぜかはわからないが、教師の気分でチーというやつとの実戦をすることになった。僕は最初、どうせ、こいつも弱いだろうと思っていた。だが、初めての引き分け。初めて、僕と対等に戦った相手だった。
その時点で、実質的な敗北感を味わった。僕は今まで同じ年代なら最強だと思っていた。すべてを捨てて、こんなに苦労してきたんだ。だが、引き分けた。
僕はまだまだだな。
次は、余裕をもって勝てるくらいにはならないといけない。負けてはいけないし、もちろん引き分けてもいけない。もっと強くならなければ……。
だが、なぜだ。なぜ、僕は強くなろうとしているんだ?父の言いなりなのか?まともに父として接してくれたことも無かったあの人に?
いや、そんなこと考えるな。いまは、強くなることだけを考えろ。意味なんか後からでも分かる。
今夜からの鍛錬は、倍にしなければ。僕はそのまま立ち上がり、座っているチーを一瞬見て、次は負けないと誓い、寮へと帰った。
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チー視点に戻る
翌日、一般常識と魔法、剣技、それぞれ試験が行われ、その数日後には、ほかのクラス含め全員の点数が張り出された。こういうの見て思うんだけどさ、人によっては公開処刑だろこれ。
俺はというと、一般常識、魔法、剣技、全て80点だった。そりゃそうだ。もちろん、点数は調節した。赤点と満点は論外だし、一応魔剣士科も視野に入れるため、高すぎない程度にな。
赤点なんてありえないさ。俺は剣聖と大魔法師のDNAを受け継いだ息子で、吸収力の高いフレッシュな脳を持った小さい頃から、魔法や剣技を学んだ上に、前世の記憶を持った強くてニューゲームの状態で、学園の簡単な試験に落ちたら、それこそ才能だろ。
まあ、それでも80点は優秀な方の点数ではある。本当は50点とかに抑えたかったけどな。学年では10位だったな。まあギリ目立たない位置だとは思う。
1位は……違うクラスのリオという名前の女子生徒のようだ。まあ、1位は誰だって名前くらいは知りたいしな。俺も何となく気になってた。ちなみに、すべてにおいて満点だった。すげえ。才能だな。
さて、俺以外のメンバーは……と。ユリアは一般常識と魔法は満点、剣技は6割で難なく合格。ユリアは剣技は心配していたが、大丈夫そうだった。ちなみに、赤点は30点未満だ。順位としては俺より高い7位。なんか、姫に負ける騎士、点数調整したとはいえ複雑……。
ちなみに、魔法の適性の話はしたと思うが、初級までなら適性が無くても、誰でも5種類すべて覚えることはできる。まあ結局、初級とは言え適性による得意不得意は顕著に出るので、満点を取るのは、普通に難しい。
治癒魔法を使える人ってそもそもの魔法の才能が異常なので、ユリアが魔法満点なのは必然だね。
ブルーは、剣技満点の魔法0点だ。こいつそういえば魔法はからっきしだったな。使えない理由でもあるのか?魔素を保有してない特別な体質なのか?
でもおかしい、この世界の人間の、あのバカみたいな身体能力は魔素による産物だ。ブルーのあの異常な身体能力で魔素を一切持っていないのは、さすがにおかしすぎる。
隣で結果を見ていたユリアは不思議そうにブルーを見つめながら、ぽつりとつぶやく。
「ちょっと不思議なんだけど、なんでブルー君はわざと魔法を”使えない振り”をしてるんだろうね」
使えない振り?なんでユリアはそれを分かるんだ?
「え、それってどういうことっすか?」
「その、ブルー君は何らかの魔素を持たない障害を患っているのかと思ってたんですけど、今改めてブルー君を魔眼で見ると、魔素保有量はちゃんと人並み以上に保有してる。
魔素さえ持っていればどんなに適性が無くても少しくらいは発動できるはずなんだよ」
あ、そういえば、ユリアは魔眼をもっているから、人の魔素の流れが見えるのか。便利なものだ。つまり、ブルーは魔素を保有していることの証明になるな。じゃなきゃあの身体能力も説明が付かないし。
本人にしか真相は分からないが、ユリアが言うには、ブルーはわざと魔法が使えない振りをしているようだ。まあ、興味ないしどうでもいいけど。
他クラスのレッドは剣技90点で魔法は70点だ。まあ、剣聖を目指しているだけあって好成績だ。意外と魔法も使えるみたいだ。
そんなこんなで、1年生最初の定期試験は無事に終わった。




