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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第30話 戦いは意外と面白かった




 リーファはグラウンドに戻って、生徒の前で話し始めた。


「気分が削がれた。模擬戦はとりあえず中止にする。期待させて悪かったな。今日の授業はここまでだ。明日の試験、とりあえず頑張れ。解散」



 クラスメイト達は急に何があったんだって感じで、顔を見合わせたりざわざわし始めて困惑していた。今日の授業は模擬戦だ、と思ったら中止だもんな。


 ユリアが俺のところに来て、俺の肩をちょんちょんとつついてくる。


「ねえ、一体何があったの?」


「先生を分からせました」


「え?ち、チー君って、そう言う趣味が……はわわわ」


「あ、いや、そういう意味じゃなくて、あの、ユリア?」


 なんでこの子はすぐ人の言うこと信じるくらい純粋なんだ……。まあいいや。少し放課後が鬱になる。




 ------




 放課後。


 とりあえずユリアには事情を説明して一緒に模擬戦に来てもらう。俺はユリアの騎士だから、少しでも離れてはいけない。まあ、本当はユリアにもあんまり見られたくはないんだが……。


 俺とブルー、リーファはグラウンドに集まり、リーファが俺とブルーの前で説明を始める。


「お前たちで模擬戦を行ってもらう。ルールはシンプル。相手に木剣を当てられれば一本だ。私の単純な興味に突き合わせてすまんが、よろしく頼む」


 ほんとだよ……。めんどくさい。ゲームの戦いは好きでも、リアルファイトは嫌なんだよなあ。怖いしビビるし痛いから。まあでも、この世界じゃ、戦いは避けては通れないだろうな。


 ブルーは眼鏡をくいっと持ち上げ、俺を見鋭いまなざしで見つめてくる。そして、キランと眼鏡が光る。なんかこういうの現実で見ると、ジワるな。改めて見ても、結構小柄だし、インテリ系な見た目もあって、魔法使ってきそうなのにな。まさか剣士とは。


 とりあえず、適当にやって、わざと負けてすぐ帰ればいいか。


 するとリーファが思い出したかのように、追加する。


「ああ、そうだ。もしわざと負けるなんてことしたら、試験減点にするからな」


 俺の思考読まれていただと!?ちくしょう、やるしかないのか。


 俺は対戦相手のブルーを横目でチラ見する。こいつは絶対強いだろう。逆に本気を出さざるを得ない可能性もある。


 父さん以外とは初めての対人戦だな。さすがに、父さんよりは、楽だよな?父さんは剣聖だ、動きもバカみたいに速かった。ようやく父さんの動きが見えてきたくらいの頃に、学園が始まった。


 とはいえ父さんも手加減していたのはわかる。だから、自惚れてはいけない。上には上がいる。


 俺は一番になれたことなんて一度もなかった。だから、ブルーは俺よりも絶対に強い。多分、負ける。だからと言って手を抜けば、絶対にリーファに見破られる。ああまじでめんどい。


 俺は木剣を持って、ブルーと向かい合う。ぐ、形式的だからか、謎に緊張して手が震える。だが、もちろん試合は待ってはくれなかった。


「では、始めろ!」


 リーファの指示で、両者お互いに構えを取る。


 俺はよく相手を観察する。剣を縦に構えている……あの構えは、水流型か?水流型は流れる水のように、相手の攻撃を受け流す、要はカウンターに特化した剣の型だ。


 逆に、攻めに特化した炎舞型も存在する。水流型と炎舞型、剣技の型は主にこの二つが主流だ。父さんは水流型が一番厄介と言っていたな。本当に極めたやつは絶対こちらからは攻めずに、相手の攻撃を誘い、確実に受け流して反撃してくると。


 水流型に安易な攻めはあまり良くないが、両者動かないこの状況も進まないし、俺から試しに攻めてみるか?


 一歩踏み出したその瞬間、空気が張りつめるような緊張感に襲われた。ブルーは一歩も動いていないのに、空気がピリつく。俺が一歩踏み出したのを見て、ブルーが静かに構えただけで、グラウンドの空気が数度下がったように感じた。


 静かに、駆け引きが行われている。俺が速攻で攻めたところで、絶対に受け流されるイメージしか湧かない。攻めたくても、攻めあぐねてしまう。やっぱりこいつは強い。


 勝ち負けなんて気にしてなかったけど、なんとなく、こいつに勝ってみたいと思えてきた。俺の才能がどこまで通用するのか。


 学園に来て、初めて、競い合える相手ができたような感じだ。むしろ、本気でやらないと一瞬でやられる気がしてくる。どうせやるんなら、本気でやって負けたほうが良いだろう。勝てない試合に本気を出すのはバカだけど、多分、実力的に勝てない試合じゃない。


 ブルーの目つきはキリっとひそめ、真剣な眼差しへと変わった。リーファは一言も発さず、ただ、腕を組んでじーっと戦いの行方を見ていた。


 さて、どう攻めるか。水流型を攻略するには、こちらが受け流せないくらいの力で対抗するか、あちらが認識できないほどのスピードで攻めるか、手数でとにかく攻めるか、この三つだろうな。


 まずは、できるだけ速く、見えないくらいの超スピードで攻撃してみよう。父さんに教えてもらったように、俺は思いっきり踏み込んで、地面を蹴った。


 そして一気に奴の懐へ飛び込み、横に木剣を振るった……はずだった。ブルーはいとも簡単に俺の斬撃を受け流したのだ。ギギーっと木剣がこすり合う音が響く。ブルーの鋭い目は、俺を捉えて離さない。


 その瞬間、脳内に危険信号が流れる。これは反撃されると。俺は反射的にブルーから飛び退いて距離を取った。予想通り、ブルーはすでに木剣を振っていた。あのままボーっとしていたら、攻撃を食らっていた。


 俺はスピードには自信があった、それを簡単に見切ったブルー、なんて恐ろしい動体視力と反射神経だ。それにまるで、ここに斬撃が来るのを分かっていたかのように、自然な動きだった。


 ただ、さっき剣をぶつけ合った感覚的に、ブルーのパワーはそれほどではなさそうだ。なら、今度は受け流されること前提で、思い切り力を込めて叩く。


 再びブルーに接近し、スピードと力を乗せて、今度は力を込めて振り上げる。いや、待て、これはまずい!俺が振り上げた隙を狙い、先にブルーが俺の空いたわき腹をとらえ木剣を振ろうとした。


 俺はブルーの木剣とは逆方向に横っ飛びしてなんとかブルーの剣撃を免れた。


 ダメだ、何をしても意味がない、多分、手数で戦っても無意味だ。全て受け流されるのが目に見えている。スピードでも、パワーでも通じない。


 どうする、十分な距離を取ったつもりだから、恐らく安全。あいつからは攻めてこないだろうから、考える時間はあるが――


「え?」


 いつのまにか俺の目の前に、低い姿勢から、今にも木剣を横に薙ぎ払おうとしていたブルーが現れた。


 水流型は自分から攻めない、その常識を突いてブルーから攻めるという、不意打ちを狙ってきたということか?


 俺は咄嗟にビビりの反射神経で反応し、体をひねりながら地面に転がり込んで、なんとかブルーの攻撃を避けきった。俺はもう心臓バクバクで冷や汗もかいていた。なんかここまで来たら、負けたくねえ!


 そのまま今度は俺から攻めようとしたが、すぐにブルーはシュッと高く飛び退いて、距離を取られてしまった。


 ……にしてもさっきは危なかった。もう少し反応が遅れていたら、負けていた。前世は鈍くさかったのに、やはりこの身体は恵まれている。


 怖い、でも楽しい。まるでゲームで自分で攻略法を考えながら、強キャラと戦っているかのような、そんな感覚だ。少し口元が緩んでしまう。俺ってこんな好戦的だったか?いや、ただ楽しいだけだろ。


 リーファは変わらず腕を組んで、戦いの行方をじっと見ている。逆にユリアは心配そうに、自分の制服の布を握りしめながら見守っていた。


 さて、不利な状況は未だ変わらない。攻めても受け流され、攻めなくても俺の意表をついて攻撃して来た……。


 だったら、こちらも相手の意表を付けばいいのか。もう、剣技の型とか関係なく、動きやすいように攻める。俺は再びブルーに向かって飛び込んでいく。


 ブルーは相変わらず無表情というか、余裕を持っているのか、息1つ切らしていない。その無表情を焦りに変えてやりたい。人のこと言えねえけど、俺はイケメンが嫌いだ、恵まれたやつらに一泡吹かせてやりてえ。そう思うと、力が湧いてきたわ。


 俺は奴の左側から攻めていく。俺は木剣を左から右に薙ぎ払う。当然、ブルーは受け流すために視線も剣先も、その方向へと引き寄せられる。


 でもそれはフェイントだ。振り下ろした木剣を寸前で止め、そのまま手を離して宙に浮かせる。 ブルーの目が一瞬だけ泳ぐ。その隙に、俺は足をひねってターンステップ。背後を取るように回り込む。


 再び柄を掴み、遠心力を乗せた一撃を背中めがけて振り抜いた。


 ——決まった。そう思った瞬間。


 ブルーの表情がわずかに歪む。しかし、すぐさま切り替わった冷徹さ。


 身体を滑らせるように反らし、紙一重で剣をかわした。


 ブルーは歯を食いしばりながら、すぐにぐるりと回し蹴りで俺を蹴り飛ばした。俺は視界が揺れ、そのまま地面に尻餅をついた。


 やばい。ブルーは逃がすまいと、すぐに俺の肩めがけて剣を突き出してきた。完全に負けか?


 いや、尻餅はついてしまったが、剣を持った腕はまだ動く。どうせ躱せないなら、せめて、引き分けてやる!


 俺はブルーの突きを食らう前提で、やつの脇腹めがけ木剣を薙ぎ払った。俺の肩に打撃の衝撃が走ったのと同時に、ブルーのわき腹にも俺の一撃が入る。


 バシン!という乾いた音が、二人の体から同時に響いた。


「そこまで!」




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