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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第5章 ギルド編

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第225話 全部あいつの策略だったのか?

 



 ……でも、俺はもういいわ。だるいし。


 だって、今の俺って、もう幸せじゃん。イケメンに生まれて、環境も遺伝子も恵まれて、性格はチー牛なのに、まさに人生イージーモードだった。


 それに、ユイという、俺をずっと支えてくれた人もいる。そのどれかが欠けていたら、俺はこんな幸せ手に入らんかった。


 もう、どうでもいいわ。結果的に、俺は棒緑を強さで追い詰めてたんだろ?俺の勝ち。今はこいつよりも充実してるし、その点でも俺の勝ち。それを見せつけられた俺の勝ち。


 まあ、一応このクソみたいな棒緑にも、感謝は1ミリくらいしてんだぜ?


 もし、前世で俺があいつに絶望させられていなければ、そのまま死んで成仏してたのかもしれない。ジンは俺の絶望が大きかったから転生させたと言っていた。もし普通に死ねば、俺はユイたち仲間に出会えなかった。


 こいつのやったことや思想は殺したくなるくらい不快だ。でも、ユイたちとの出会いのきっかけなのはまあ、間違いはないだろう。


 それに、殺してしまえばそこで終わりだ。復讐するなら、殺さずに痛めつけるのがベスト。てか、まあすでに、こいつはお陀仏寸前まで痛めつけられているが。


 だから、俺の答えは――


「いや、もういいっす」


「ほう、なぜ?」


 う~ん、なんか綺麗ごとっぽくなりそうで恥ずかしいから、とりあえずこう言っておく。


「マーケンの時も言いましたけど、殺すより、拷問にかけたほうが良いじゃないすか。人殺しってのも嫌ですし。もう、こいつの事なんかどうでもいい、今は俺の方が幸せですから、俺の勝ちです。」


 チハルは俺をじっと見続ける。……こ、怖え……。


「……へえ、すばらしい。やはり僕が見込んだだけはあるね!もし君が怒りに任せ、殺しを選べば、ユイ達との関係にも、傷がついてしまうかもしれなかったからね。君達には仲良くしていてほしいんだよ。いやあ、感心感心」


 チハルは真顔になったと思ったら、すぐに笑い始める。何なんだよこいつ、俺を試していたのか?もう、こいつといると常に内心バクバクだよ……。


「さて、じゃあ君はおとなしく拘束されていてくれるかい?」


「ごふ」


 チハルは魔王を殴って気絶させ、縄の魔道具でぐるぐる巻きにした。そしてチハルは立ち上がり、周りの固まっている魔族に向かって叫ぶ。


「で?君たちの王はこのざまだけど、まだやる?」


 魔族はだんまりしている。戦意喪失しているのは分かるのだが。と思っていたのだが、いきなり魔族たちの間で歓声が上がる。あれ、魔王が倒されたのに、ずいぶんテンションが高くね?


 俺もチハルも、魔族以外のみんなはあれ?って感じでその様子を見ていた。魔族の一人がチハルに話しかけてきた。


「もちろん降参ですよ。私たちは魔王様に従うしかなかったんです。新しい王が生まれ、その王に従うのが我々魔族のしきたりです。現魔王は力こそ正義を掲げ、人間領に攻め入りました。私たちは本当はそんなことはしたくなかったんです。


 魔王に反抗したくても、あの魔王の力はとてつもなく、誰一人として手を出せなかった。逆らった者も殺されていった。そして今、恐怖政治からやっと解放されたのです!


 戦う理由などもうありません!あなたは英雄です!ああ、不干渉条約を破ったことは本当に申し訳ありませんでした。再び、お互い平和に暮らしていければと……」


 チハルはいきなりの英雄扱いに困っているようだった。


「あ、ああ、僕そう言うの分かんないから、まあ、お疲れ、あ、帰っていいから。うん。じゃあね」


「か、軽いですね……。じゃなくて、何のお咎めも無いのですか?」


「そりゃ、こいつの独裁体制に逆らえなかったんだろ?いいじゃん。そんなクズの言うこと聞かずに済んでよかったじゃん」


 魔族はチハルの言葉に感動しているようだった。しかし、そこに待ったをかける人物が現れる。


「ちょっと待ってください」


 すると、ギルド本部から歩いてきたのは、ギルドの会長だった。本などで見たことだけはある。一応、Sランク程の戦闘力を持つようだが、現役は引退して、会長を務めているとのこと。チハルと魔族たちに言い放つ。


「今回の襲撃で王都は、莫大な被害を被った。中央部はたしかに、彼らが守ってくれたが、そのほかの東部は、西部は、民も街もみな崩壊してしまっている。これをみて、許せるのか?」


 そうだったな、俺たちのいる中央部は俺が盾を張って最初の破壊光線の襲撃を免れたが、他の地域はどうにもできなかった。そりゃあ、許せないのも納得だが。チハルは時に気にすることもなく、会長に言う。


「んん、その辺はランが全部守っているはずだよ」


「な?だが、私はこの目ではっきりと見た。王都全体が光線により埋め尽くされているのを」


「住民の命は皆無事だよ。見てくりゃいいじゃん。お前は、何も見ずに決めつけるのかい?」


「な……」


 チハルの目を見た会長がたじろぐ。しかしすぐに冷静さを取り戻し、他のギルド員に状況の確認に行くよう指示していった。


「もし本当なら、すまない。だが……」


「まあその辺はあんたらが決めてくれよ。賠償金をがっぽりもらうでもなんでもしてくれ。僕には関係ない」


 まあ、チハルらしい判断だ。こういう政治的なこととか興味なさそうだし、てか、チハルは転移者だから、この世界の事情に詳しくないんだろう。と、チハルはいきなりニヤつき始める。何を企み始めた?


「ねえ、ギルドの会長さん」


「な、なんだ」


「そこにいるチーっていう人、この中央部の街を救ってくれたんだよ」


「あ、ああ、私もこの目で見ていた」


「とどめこそ僕たちが刺したけど、ほとんどのダメージはそこのチーが稼いでくれたんだよね」


「あ、ああ。もちろん、感謝はしている。その後感謝状を――」


「いやいやそんなものはいらないと思うんだ」


 おい。勝手に決めつけんな、いや確かにそんな感謝状やらなにやらいらねえけど。チハルは続ける。


「で、その働きに応じて、チーのパーティランクをSランクに昇格してほしいんだ」


「た、確かに、魔王を討伐した功績はSランク、いや、それ以上に値するが……」


 チハル、まさかそれを見越して、すべて仕組んでいた?俺たちを無理やりSランクに昇格させるために、てか、最初から王都にいたんじゃないのか?わざわざ俺を戦わせるために、ギリギリまで様子を見ていたんじゃ?


 チハルは周りにいる冒険者や皆に向き、大声で話す。


「ねえ、みんなもそう思わない?チー達のパーティこそ、Sランクにふさわしいと思うんだ!どうだろうか!?」


 周りの冒険者たちの答えは……歓声で返ってきた。みな、俺たちを敵意も何もない、尊敬の目で、英雄として俺たちを見ていた。


 そんな経験、今まで、一度もなかった。チー牛だった過去には、敵意の目しかなかったのに。チハル、こいつは、マジでなんなんだよ……。


 会長は腕を上げ、周りを静まらせた。そして宣言する。


「承知した。チー率いる無名パーティは、この王都を魔王の脅威から救った功績により、Sランクへと昇格とする!」」


 そして再び歓声が響いた。ユイやレッド達は明らかに困惑している。今日はなんだか不思議な日だった。悪い気はしない。そしてついにSランクへと昇格も果たした。ついに、迷宮へと入り、地球へ帰れるかもしれない日が近づくのだ。





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