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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第5章 ギルド編

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第223話 俺の動く理由は単純なんだわ

 



 俺の動く理由は単純だ。


 やっと手に入れた最高の容姿、イージーライフな幸せ、そしてユイとのイチャイチャを邪魔する脳筋野郎に単純に殺意が湧いた。これだけだ。


 人のためじゃない。自分とユイのためだ。人間ってのは、基本は自分のために動くものだ。自分の名誉のため、自分の幸せのため、自己満足のため、必ず自分が入ってくる。


 相手のためだけ、みたいな聖人なんて存在しない。俺は何度も言う。俺の幸せを邪魔するなら、ぶっ殺す。絶対にその邪魔だけはさせねえ。


 まずはユイを避難させなければ。しかしふと横を見ると、長髪を結んだ見知った顔が俺の元に歩いてきた。この戦場を平然と歩いてくる圧倒的強者感……すぐに思い出した。青龍だ。


「やあ、久しぶり。元気だった?」


「あの、元気ですけど、その……今忙しいので」


「そうみたいだね。聞きたいことあるんだけどさ」


「あの、あとでにしてください。ユイ、こっち来て」


 俺は青龍を無視してユイを手招きする。俺はユイに離れるように指示する。


「ユイはほかのメンバーと一緒に辺りの住民を避難させて。俺はこいつを殺す」


「う、うん、分かった。絶対、死なないで」


「はい」


 ユイがこの場を離れようとした瞬間、青龍は待ったをかけて、俺にこんな提案をしてくる。


「ユイちゃんだけじゃ心もとないんじゃない?僕が一緒に付いていくよ。護衛だよ、護衛。悪くない話だろ?」


「え、あ、ありがとうございます……ユイに何かしたら分かってますよね」


「え、怖、しないよ……君も変わったなあ。ああ、僕だって仲間を失う気持ちは誰より知ってる。僕はユイちゃんを守り抜くよ」


 青龍の顔つきが少しだけ変わった。妹の事だろう。まあ、今回はごちゃごちゃ言ってられないし、任せるしかなさそうだ。


「お願いします」


「任されたよ」


「チー君、頑張って」


 ユイと青龍はそのままバリアを張りながら住民たちの避難誘導をしていく。俺は再び魔王に振り返る。魔王が俺を見下ろす。


「ああ、危なかった、怒りに任せてユイも巻き込んで殺してしまうところだった。殺したいのはてめえだけだからなあ、チー」


「奇遇ですね。俺もお前をぶっ殺したい」


「てめえ……言うようになったな……何も言い返せないチー牛だったくせによお!」


 再び拳、拳。俺は、再び飛んでくる拳をかわしながら考える……こいつの動きは、素人そのものだ。


 前世でもこいつは別に格闘技を習っていたわけでもないし、この世界でも恐らくその恵まれたフィジカルだけで魔族の頂点にたどり着いたように見える。


 ただ殴ってくるだけだが、速いし、威力も高い。才能だけに恵まれたやつってのは、己の強さに溺れ、技を得ることを怠る。最低限の努力すらしない。本当の努力不足はどっちなんだか。


 俺は隙をついて、奴のみぞおちに拳をめり込ませた。これは、内臓に入ったか?しかし、こいつのフィジカルはやはり異常で、全く効いているそぶりが無かった。奴の身体は思った以上に硬い。まるで重い鉄の塊を素手で殴ったような……。


 魔王は多少、口元をわずかに固くするだけ。魔王はすぐにニヤリと笑う。


「はん、今何かしたか?」


 俺はちゃんと、レンの教えを意識して、いつものように身体の内部までダメージが加わるように、拳を打ち込んだはずだ。上手くできなかったのだろうか。


 俺は焦っているのか?いや、そんなことは無い。俺は今、驚くほど冷静だから。いつものコンディションなはず。やはり、こいつの身体能力がおかしいだけか。


 その後もずっと、こいつの拳を躱しつつ、俺も拳で反撃していく。だが、やはり俺の攻撃は通じないように見える。なんでなんだ?このまま殴り続けても、火力不足過ぎて埒が明かない。


 俺は魔法銃を最大威力で奴の顔にぶっ放した。


「ごふ!?」


 最大威力で放っても、こいつは顔を少し背ける程度にしかダメージを受けていない。まあ、距離を取るためにひるませるのが目的だから、ダメージは今はどうでもいい。


 魔法で対抗しようと思って、距離を取った。物理がだめなら、魔法で……。


 しかし、奴は狂ったようにすぐに追いかけてきて俺を殴りかかる。くそ、超級魔法を詠唱する隙もねえ。ただ、別に超級魔法でなくても、練度の高い魔法を放てばそれ以上の火力を出すこともできる。


 俺は無詠唱でファイヤーボールを発動させる。人一人を覆えるほどの大きさにまで膨れ上がり、それを奴に放つ。しかし、奴は平然とそのファイヤーボールを受けつつ突っ込んできた。


「んなもん効かねえよ!」


 なんて魔法耐性だよ!?俺はギリギリで奴のタックルを躱し距離を取った。魔法もダメ?魔素に適合した魔族には効かないとか?


 念のため、逃げながらライトニングランスの高速詠唱を行う。魔王は詠唱中の俺に何度も突っ込んでくる。


 そしてちょうど、奴が突っ込んできた瞬間に詠唱が完了し、ライトニングランスを放った。以前のランとの特訓の時よりも高い威力で放ったはずだ。雷が落ち、すごい轟音が響いた。だが、魔王には効いていない。しびれることもないのかよ。


 なら、剣は?あいつの腕を切り裂くことができれば……。


「雑魚が!」


 奴は飛び蹴りをしてくる。俺はそれを両手で受け止めたのだが、奴の力が強すぎて少し肺が苦しくなるほどの反動が来た。一瞬気持ち悪くなってえずく。


 やばいな、こいつの攻撃をまともに受けたらさすがに死ぬ。


 なら、鍛えたスピードで、奴の腕を切り裂く。俺は地面を踏み込んで、風魔法で高速で移動し、その辺の建物の壁を足場にしながら加速していく。


 自分でも速すぎると思うほどだ。なのに、なぜ、俺を目で追える?俺は奴の隙を見計らうも、なかなか踏み出せない。くそ、どうにでもなれ。


 俺はそのまま奴に突っ込み、剣で切り裂こうと、勢いよく薙ぎ払った。だが、剣は奴の手に止められていた。そしてバキッと剣が簡単におられてしまう。


「ご自慢の剣もつかいもんにならなくなったが、どうする?チー牛」


 クソ。どちらにしても俺の剣はずっと使ってきた父さんの中古の剣だ。簡単におられても仕方がないとは思うが。あの報酬金でミスリルの剣でも買っとけよかったか?いや、どちらにしても足りないだろうし買えなかった。


 こいつに勝つにはどうすればいい?剣が折れた以上、もう肉弾戦しかない。だが、さっきだってダメージを与えられた感覚はなかった。こいつの攻撃をよけ続けるくらいなら余裕だが、これではジリ貧だ。


 すると、少し力がみなぎってくる。これは……。ユイのバフか。俺は後ろを振り向く。


「チー君、住民の避難は完了したよ!思う存分やって!」


「あ、はい」


 流石ユイたん。思う存分、か。結構最初から本気は出してるんだけどな……。でもバフのおかげでまだ戦えそうだ。


 奴は再び俺に突っ込んできた。また、単調な殴る攻撃、俺は左に避け、奴の腹に拳を叩き込んだ。先ほどよりも強く、貫通させる勢いで。奴の腹にかなりめり込んだ、はずなのに、奴の顔はまだ余裕だ。


「何度やっても無駄だぜ?」


 奴は長い腕を伸ばして俺につかみかかるが、すぐに風魔法を地面にぶっ放してその場を離脱する。


 今度は殴るのではなく、俺を捕まえようとする戦法に変えてきた。くそ、こっちの方が地味にやりにくい。伸ばしてくる腕を躱しつつ、奴のみぞおちや腹を殴り続けるが、すべて平然と耐えてくる。


 何なんだこいつの恵まれた体は。俺のパワーが足りないだけなのか?


 俺は焦りからか、足を滑らせ、その隙を奴に頭を掴まれた。そのまま俺を持ち上げる。


「捕まえたあ」


 うわ、口くっさ。顔近づけんな畜生……。俺は最大威力の魔法銃で奴の顔にぶっ放す。


「ぐお!?」


 奴の握力が弱まった隙に俺は奴の拘束から逃れて距離を取った。


 にしてもおかしい。こいつ、さっきよりも疲れが見える。息が荒い。棒緑は膝をついてつぶやく。


「て、てめえ、チー牛……クソが……」


 こいつの体力不足か?いや、違う?ずっと疲れやダメージなんて見えなかったのに、急に?


 だが、奴はすぐに立ちあがって、腕に力を籠め始める。


「ああ、もういい!てめえごとこの王都全体、ぶち壊してやる!」


 棒緑が拳を振り上げた。まずい、奴のパワーなら王都全体を崩壊させることくらい余裕だ。これはどうにもできない、奴にダメージも与えられない以上、止めることもできない。


 ユイを連れて逃げるしかねえ。俺は後ろにいたユイを呼ぶ。


「ユイ!逃げる!全力で!」


「え!?チー君!?なんで!?」


「いいから!俺の手を握ってくれ!!!」


「僕は?」


「青龍は勝手に逃げてください」


「連れないなあ」


 ユイがこちらに来て、俺の手を握った。だが、奴の拳はすでに振り下ろされそうになったその時だった。


 魔王の真下から、地面を突き破って巨大な火柱がドカンと吹き出した。俺は動揺しつつも、ユイとすぐに距離を取った。なんなんだ、これ、ここまで巨大な火柱、相当の魔法の実力者だろう。


 魔王も驚いているので、こいつの魔法ではない。ここまでこいつは一度も魔法を使っていないから、恐らく使えないんだろう。じゃあ一体、この威力の高すぎる魔法は誰が。


「やあチー、間に合った?」


 この声って。チハル?


「あんたに死なれちゃ困るのよ!勘違いしないでよ!チハルのためなんだからね!」


 ランは顔を赤らめながら叫ぶ。


「今のあなたでここまで耐えたのは素直にすごいと思うわよ。あとは私たちに任せて頂戴」


 リンが刀を鞘から抜きながら歩いてくる。


「久しぶりに骨のあるやつがいるじゃねえか。チー、よく見ておけ、俺たちの戦いを」


 レンはギラギラした目で大剣を地面に突き刺す。


 聞き覚えのある声。俺は後ろを振り返った。そこにいたのは、SSランクパーティの4人だった。





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