第221話 魔族の襲来
今日もいつものように依頼を受ける。ただ、今日は妙に空が暗かった。少し、紫がかっているような気がする。まるで、世界が滅びるのかと思わせるような。
「今日の空、なんか変だよね」
ユイも心配そうに空を見つめる。街の雰囲気はいつも通りだ。こういう時って何も起きないなんてことないんだよな。フラグか?王都の住民も次々と空を見上げ始め、指を指してざわざわし始める。
「な、なんだよあれ」
「人が、空を飛んでる?」
「翼も生えてるぞ」
俺も空を再び見上げる。あれは、なんだ?ユイはびくびくと怯え始めた。どうしたのだ……?ユイとクラウドが明らかに動揺している。クラウドがつぶやく。
「あれは……魔族だ」
「え、あれ?」
「ああ。やはり、噂は本当だったようだ。凶悪な魔族が生まれ、近いうちに人間領を襲ってくる可能性が高いと。それなのに勇者も動いていないとなると、本当に召喚されていないか、すでに殺されているようだな」
あれが魔族。悪魔のような翼で羽ばたいていて、何百もの魔族で空は覆いつくされていた。
ていうか、何をしに来たのかが分からない。挨拶?まあそんなわけないだろうけどな。
もちろん、悪い予感は的中した。魔族が全員、詠唱を開始したのだ。そして空の中心を陣取る、リーダー格らしき大柄の魔族が大声で叫ぶ。
「雑魚の人間ども!ずいぶん幸せそうに暮らしてんじゃねえか!俺たちにこの王都すべてをよこせ!まあ、よこせと言わずとも、力ずくで今から奪ってやるがな!やれ!」
魔族の詠唱がもうすぐ完成する。おそらく、光の上級魔法だ。破壊光線ってところか?
「まずい!逃げろ!」
クラウドがすぐに判断し叫んで指示を飛ばす。何千もの魔族から繰り出される破壊光線はさすがにどうにもできないしな。
てか、王都が欲しいなら、こんな王都ぶち壊すような攻撃してくるか?普通。あいつ、頭悪いのか?
ユイが逃げようと俺の手を引こうとするも、俺はあえて動かない。
「チー君!何してるの!?はやく逃げ――」
「いやもう避けられんよこれは」
「でも!」
「できるだけ多くの魔素を、俺に付与し続けて欲しい」
「え?……うん、分かった!」
俺はユイから、できるだけ多くの魔素のバフを貰う。すでに詠唱も完成してるんだ。あんな上空からの多数の破壊光線はもう避けられんよ。
俺が今からしようとすることは無謀かも知れんが、土魔法を無駄に極めた俺なら、できるはずだ。
俺はすぐに錬成でこの王都の地面を利用して、それを大量の魔素を含んだ地面を使って鋼鉄に変える。魔法の発動位置を空の真上に指定して、空を鋼鉄のドームで覆いつくした。王都は真っ暗になった。
そして魔族から、大量の破壊光線が放たれた。真上から、ゴゴゴゴゴッと、ドームに破壊光線が直撃する音が響く。鋼鉄のドームが耐えられるかどうか、地味に緊張していた。
しばらくして、轟音が鳴りやんだ。見事に俺たちのいる地域は破壊光線をすべて防ぐことができた。
ただ、さすがに広い王都をすべて錬成で覆うには限界があった。だからせめて王都の中心部は守ろうと、かなり巨大なドーム型の鋼鉄の盾を空に発動したのだが、王都の東部や西部は光線の餌食となっただろう。
中心部を守っただけでも、許してくれ。ユイのバフを大量に貰ってもこれが限界なんだ。あと、このサイズの錬成盾を数秒間維持するだけでもかなりきつい。俺は錬成魔法を解除する。ま~じで疲れた。
鋼鉄のドームは消え、空が明るくなった。すると、リーダー格の魔族が俺の前に降りてくる。げ、俺に目つけられたか。
「ほう、てめえ、やるじゃねえか。俺たちの部隊の光線を防ぐとは、少しお前たち人間を過小評価してたわ」
「え、あ、はい」
「……チッ。なんだそのしゃべり方。声もちいせえし。それにその自信のなさそうな態度。見ててイライラするぜ」
ああ、この魔族は陽キャ気質があるようだ。陰キャは暑苦しい陽キャを嫌い、陽キャはもじもじした陰キャを嫌う。陰キャで悪かったな!
すると、隣にいたユイが魔族のリーダーに話しかける。
「あなたはなんなんですか!?なんでこんなことをするんですか!?」
ユイが臆することなく叫ぶ。ユイってほんと、勇気とか度胸はすごいあるよな。魔族のリーダーも感心しながらユイに答える。
「ほう、そこの女、俺を見ても臆することなく聞いてくるとは、良い度胸じゃねえか。俺が何者か?教えてやるよ。俺は魔王だ」
「ま、魔王?」
「ああそうだ。親父を殺して俺が魔王となった。この世界は力こそが正義。強い奴には逆らえない。今もまさに、お前らは俺に屈服するしかない」
恐ろしいほどの魔素量を持つこいつは、魔王だったようだ。魔素が見えなくてもなんとなく分かる。
それに力こそ正義。言ってることは分からなくもない。強いものが生き残っていく世の中だ。俺の前世は弱者で、ひたすら妨げられてきた。まあその理論で行けば、こいつも力でねじ伏せれば逆らえなくなるってことだが。




