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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第5章 ギルド編

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第203話 地獄の修行の成果

 


 アジトに着いた俺たちは入り口のドアを開け、中に入る。慎重にゆっくりと。何となくドア越しから人の気配がしていたので、かなり慎重に。


 ドアを開けつつ、俺たちは少し顔を出して、一歩足を踏み出した瞬間、いきなり矢が飛んできた。しかも的確に俺とクラウドの頭を狙っている。部屋も少し暗いため、クラウドは何も気づいていない。


 俺はその二本の矢を手でキャッチして、そのまま撃ってきた奴らにぶん投げてお返しした。見事に敵の頭に命中。


 天井に張り付いていたようで、そのまま次々と床に落ちていく。撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけやで。


 クラウドは異変に気付いて、俺に問う。


「な、今、何した?」


「え、矢を撃ってきたので、キャッチして、そのままお返ししたんすけど」


「は?あの矢が見えていたのか?俺は全く気付かなかったのに?」


「え、ま、まあ」


 正直あの矢は確かに速いし、風を切る音も静かだった。でも、なんで見えたか?それはそれは恐ろしい修行の成果で――。


 ------


 あのSSパーティの修行の時、チハルが興味本位で俺の魔法銃を手に取ったのだが。


「へえ、これ何?珍しい魔道具だね。銃?」


「あ、はい」


「へえ、すごいね。君が作ったの?」


「まあ、はい」


「試し撃ちしてもいい?」


「いいですけど、いった!?」


 チハルが俺の顔に向かって試し撃ちしてきた。あほなん?ランもそうだがなんで俺をサンドバックに撃ってくるん?


「なにするんですか!?」


「そりゃ試し撃ちするなら、人で試すでしょ」


「試さね……じゃなくて試しませんから!マジでやめてください本当にお願いします痛いのは嫌なんです」


「にしても、いいねこれ、本物の銃みたいに見えなくて、速い、速射性がある。威力も調整可能か。そうだ、君、これを避けられるようになれば敵なしじゃない?」


 聞いてねえし。……ん?なんか嫌な予感がしてきた。


「僕がこれを君に撃ってくから、躱してよ。大丈夫、威力は軽めに調整するから」


「……拒否権は?」


「ないよ?」


 このやり取り前もやったなあ。ほんとこいつ嫌い。


「でもさ、君って確か痛いのとかつらいのは嫌なんだよね?なら、この魔法銃を避けられるようになれば、ほとんどの攻撃は避けられるし無効化できるじゃない?そしたらこの先、痛い思いしなくて済むと思うよ?ね?」


 ね?じゃねえよ。まあ確かに回避盾になれば、攻撃を食らわずに済むし、痛い思いをしなくて済む。実際俺はずっとそんな感じの戦闘スタイルでやってきた。


 でも、魔法銃は話が違う。魔法銃から放たれる風魔法はまず見えない。発砲された瞬間にこちらを襲う。自分の作った武器ながら恐ろしい。ただそんなものを乱発されれば避けられるわけがない。どれだけ感覚を研ぎ澄ましても無理がある。


「じゃあいくよ」


「待ってください心の準備――」




 ------




「ていうことがあって」


「……SSランクパーティって怖いんだな。大変だったんだな……。通りであの矢も見えたわけだ」


 クラウドが同情してくれた。お前はそんな怖いところに俺を突っ込ませたんだ。反省してくれ。


 まあ、今のあの狙撃手の腕は見事なものだった。


 俺があの理不尽な修行をしていなければ見切れなかった。そりゃ、こんなに恐ろしい警備力なら、この依頼を成功させるどころか、ボスにもたどり着けないパーティが多いのも納得できる。クラウドですら反応できなかったんだ。


 俺たちはそのまま進んでいく。俺は精神力を極限まで研ぎ澄まして警戒する。またまたドアがあったので、俺が先にとりあえず開けて進む。今度は人の気配がない、狭い廊下のような場所に出た。


 うわあ、絶対罠とかありそう。うかつに進めば絶対に危険だし、ここはひとまず、錬成を使ってここら辺に罠が無いかを確かめていこう。


 床や壁、天井を錬成で土に変えて中を確認していく。ああ、棘とか鉄球とか色々埋まってましたねえ。俺はそれを錬成で破壊していく。


 クラウドは浮き彫りになる数々の罠を見て、つぶやく。


「な、なんだこの罠の数……」


「ずいぶんな重警備っすよねえ」


「チーは平然とその罠を処理するなよ……」


 痛いのは嫌だからね、危険なものを先に対処していくのは当然。これでだいたい片付いたので、そのままごちゃごちゃな廊下を慎重に進んでいく。


 すると少し広いスペースに出る。思ったんだけど、こいつらってどうやってアジトに出入りしてるんだ?俺たちが入った扉はブラフで、本当の出入り口はほかにあるのかもしれんな。と考えていると、再び矢が飛んでくる。少し明るい部屋だからか、クラウドも今回は見切ったようで剣で矢を切っていく。俺は素手でキャッチしていく。


 今回は5人もいる。さっきより矢の数も多かったしな。俺はキャッチした矢を5人にポイっとお返しする。見事に全員にクリーンヒット。


 しかし、俺が油断しているところを、後ろから短剣使いが襲いに来る。とはいえ、矢よりも遅いので、簡単に見切れる。


 襲ってきたそいつ攻撃をひょいとかわしつつ、腹に拳を入れ込む。相手は痛みにもだえ苦しむ。そりゃ、内臓にもダメージを与えるよう、芯まで拳を入れ込んだからな。その痛みは壮絶だろう。レンの修行の成果だ。


「くそ!こいつらなんなんだ!今までの奴らとはちげえぞ!」


「くそ、とにかく攻めろ!」


 盗賊の幹部たちが動揺して焦りが見える。まだ数十人ほど残っている。さて、残りはどうやって処理してやろうか。


 ナイフを投げてくる奴には、風魔法で跳ね返す。近接戦を仕掛けてくるやつらには、躱して裏拳をかます。動揺してるやつらには、アイスニードルを飛ばして足を奪う。


 全員、殺しはしない。まあ、別にこいつらは俺に何かしたわけじゃないし、俺自身人助けをしたいわけでもない。


 こいつらも事情があってこういう悪事を働いているんだろうし。人間最初から悪に染まってる奴はほぼいない。まあ、こいつらは今日は運が悪かったんだ。もちろん、俺の恨みを買ったやつは遠慮なく殺す。


 という感じでここら辺にいるやつらはすべて片付けた。


「ふう、チー、ほんとに強くなったんだな」


「えと、まあ、地獄の特訓を耐え抜いたので」


「チーなら1人でも余裕でこいつら片付けたんだろうな……」


「どうでしょうね」


 軽く話しながら、人質として残しておいた一人にクラウドが近づいていく。


「おい、答えろ、お前らのボスはどこにいる。この先か?」


「あ、ああ。この部屋を出てすぐそこの部屋だ。お、教えたんだ、俺だけ許して……」


「ああ。夢の中で反省しろ」


「がはっ!?」


 クラウドは最後にそいつに腹パンして気絶させた。こっわ。クラウドはそのまま俺に振り返る。


「じゃあ、みんなを呼びに行こう。ボスは念のため、みんなで戦ったほうが良い」


「あ、はい」


 ここまでの敵や罠はすべて片付いている。なので安心して呼びに行けるというわけだ。さて、ボスか。


 ここまで幹部を鍛えてるんだ。そりゃ、ボスも相当ヤバいやつだろうな。




 ------




「えっと、こいつら全員、チーとクラウドだけで片付けたのか?」


「なんか棘とか鉄球とか色々地面とか天井から抉れてるし、これ全部避けたの?」


「矢とかもその辺にいっぱい転がってるけど、全部躱したの?」


「えっと、お二人とも無傷なんですね……」


 レッド、サン、ユイ、シオリーがそれぞれこの状況に、感想を漏らした。クラウドは肩をすくめながら答える。


「ああ。ほぼ全部チーが片付けたし、俺はまたチーに救われた。この矢なんか、チーが対処してくれなかったら、大けがじゃ済まなかったな」


「あ、えと、まあ、見えたので」


「チー、普通はな、暗い部屋で不意打ちの正確に狙った矢なんか見えないから……」


 クラウドになぜか呆れられた。ユイは逆に俺に笑顔で褒めてきた。


「さすがチー君だね!」


 ユイはそう言って俺に抱き着いてくる。可愛いかよ……でも、みんながいる前ではちょっとやめてほしい……。家では存分に甘えてもいいし、俺も存分に甘える。人目がないからな。


「今はイチャイチャはやめろ」


 ほらクラウドに怒られた。ユイはむぐ~と唸りながら、そっと俺から離れる。可愛い。クラウドは続ける。


「今は依頼に集中しろ。この部屋の先にこの盗賊のボスがいる。この罠とか、幹部の強さからして、相当頭のキレる奴だろう」


 この扉の先にボスが……。ここにいるやつらはスピード系の奴らが多かったから、ボスもそういう系か、もしくは普通にパワー系か。


「みんな、陣形は崩すなよ」


 前衛のレッドを先頭に扉をゆっくりと開け……ずに、扉を蹴り飛ばして入っていった。おいおいレッド君!?


 レッドは舌を出して笑顔で振り向く。


「いや、こういうのちょっとやってみたかったんだよな……」


 知らねえよ!陣形崩すなって言われたばっかやろが!


「チッ。行くぞ!」


 クラウドは舌打ちしながらも部屋に入っていく。地味にキレてんじゃん。


 そして少し広めの部屋に出る。なんか警察の突入みたいだな。周りを見渡すと、書斎や机など、いかにも偉い人がいそうな部屋だ。


 そこには、ワイングラスを片手に椅子に座る、どこかキザっぽい黒髪の男がこちらに気づいた。


「ほう、客人か。まさか、俺の幹部たちをすべて倒してここまでくるとはな」


 良~く見れば、見た目は若い中年っといったところか。盗賊らしい身軽な格好で、やはりスピードタイプに思える。奴はワイングラスを机に置いて、立ちあがり、後ろで手を組み、余裕の表情を浮かべる。


「ここまで来た奴は君たちが2回目だが……1回目に来たパーティは俺との実力差に絶望して帰っていったよ。で?君たちはどうなんだろうね?」





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