11.コボルトの幼女 その4 (ドワーフと酒)
11.コボルトの幼女 その4 (ドワーフと酒)
ジュンは、ドノバン、ルードと一緒に、時間になったので、
受付横のレストランに向かう。
ロビーで先に来ていたリリル、ジュガと合流し、レストランの中に入る。
(レストラン、いや、小さな食堂だな。)
8人のテーブル席が1つ、4人のテーブル席が2つ、
そして、1人で食事ができるカウンターが4つ程の小さなレストランだった。
一同は8人席に座る。
座ってから10分ほどで、食事が出てくる。
食事を出すのは、20代後半の女性が1人で切り盛りしている。
今の時間レストランには誰もいなかったので、
この女性と少し話す。
話によると、この宿は家族経営で、
母が受け付け、父が調理や暖房の巻割り等の雑用、
そして、娘である私が配膳や掃除を行っているとのこと。
食事は3品、
キャベツと玉ねぎのサラダ、
ジャガイモと人参、肉の煮込みスープ、
何かの肉のローストビーフ
だった。
早速食べる。
「うーん、味が。」
「素朴すぎる味だな。」
「何も味付けしていないのよ。」
「やはり…。せめて塩が欲しい。」
どの料理も、味が材料そのまま、と言うより、味つけがされていなかった。
「ちょっと待ってくれ、荷物の中に、良い調味料がある。
ちょっと待っていて。」
ジュンがそう言うと、一同、食べるのを辞める。
シーザードレッシング、鶏ガラペースト、ステーキソース、小瓶、小さなスプーンを購入し、
これらを小瓶に詰め直す。
(彼らは、コンピュータプログラムなのに、俺は何をしているんだろう。)
一瞬そう思う。
準備が終わったら、小瓶を布袋に入れ、レストランに戻る。
「はい、調味料。
この白いのは、キャベツと玉ねぎのサラダに、
この黄土色のは、鳥スープの素で、煮込みスープに、
この黒いソースは、ローストビーフにかけてね。
入れる量には気をつけて。」
テーブルの上に布に入れたまま出す。
「私が初めに試してみるわ。」
ジュガが試しに、調味料をそれぞれの料理に入れてみる。
「!この白いソース、美味しいわね。キャベツの玉ねぎに合うわ。
それと、スープの味がすごく良くなった。コクが出たわ。
あとは、このローストビーフ、どこか甘いソースなんだけれど、
肉にこの様な味がつくなんて。おいしい!」
ジュガの言葉をトリガに、各人、自分の料理に、これらの調味料を加える。
「本当だ、美味しいわ。これ、レオンで出される料理の上を行くわ。」
「うん、ちょっとスープに調味料入れすぎたけれど、断然おいしい。」
「これは私も認める。こっちの方が良い。」
各自絶賛をする。
こうして、各自調味料を加えた料理を楽しんでいると、配膳係の女性が現れる。
「料理はどうでしたか?」
「うん、今までこの宿で出された料理の中では、トップクラスに良かった。」
「そうね。でも、もう少し濃い味がいいかな。」
「ありがとうございます。」
この配膳係の女性は、料理の味をとても心配していた様子だったが、
少し、我々の言葉で表情が明るくなったようだ。
食事を終え、各自の部屋に戻る。
部屋に戻ると、なぜか、ジュガがついてきた。
「ねえ、調味料も持っているなら、何か良いお酒はない?」
「お酒?」
「そう。」
ここで断ると、明日以降のドワーフの機嫌が損ねると思われ、
瓶のビールを10本調達し、布の袋に入れ替え、ジュガに渡した。
「ありがとう♥」
ジュガはビールを抱え、自分の部屋に戻っていく。
その後、宿屋の薄い壁の向こうから、1人騒ぎ声が聞こえ、
良く寝れなかった。
(リリルは…たぶん元気だろう。)




