12.コボルトの幼女 その5 (人助け)
12.コボルトの幼女 その5 (人助け)
明けて翌日、朝、宿屋のロビーで、
ドノバン、ルードと一緒にジュガとリリルを待っていると、
晴れ晴れした顔のジュガとは別に、どんよりした顔のリリルが2階から降りてきた。
「なんで、お酒をジュガに渡すのよ。しかも10本も。」
やはりリリルに詰め寄られた。
昨日の夜、いや夜中、一人で大騒ぎで飲んでいたそう。
しかも絡まれたそう。
リリルの目の下にクマができている。
宿を出てからも、リリルは辛そうだった。
ジュンは宿を出た所で、小回復魔法と微小状態回復魔法をリリルにかける。
すると少し楽になったのか、リリルの目の下のクマが取れる。
「?少し楽になったわ。ありがとう。」
一同は集落を出て、サザン村に向けて歩き出す。
王都への道が分かれ、しばらくすると、
山が現れ、やがて山間の道となる。
山間の細い道を時々鉱石を積んだ荷馬車とすれ違う。
「この辺は土砂崩れがあるからな。
その度に村と他の町とは隔離されるんだ。
土砂崩れで鉱石が途絶えると、武器や生活用品等の鉄製品の値段が上がるからな。」
とドノバンが説明をする。
道が崖沿いになり、鉱石を積んだ荷馬車がすれ違うのがギリギリの所が続く。
当然道は未舗装路で、雨によって、路面がえぐれている所がある。
(荷馬車を扱うのが大変そうだ。)
そう思った途端、前方で、何名かの物が崖の下を見つめている。
近寄って、崖の下の方を見ると、崖の途中で荷馬車が引っ掛かり、今にも落ちそうになっていた。
「御者は大けがを負っているが、何とか崖の下まで落ちずにいる様だ。」
周りの者が言う様に、崖から落ちひしゃげた荷馬車の車体に御者が挟まっている様だった。
(何とかならないか?)
ジュンは人だかりから離れると、モディフィケータで救助に使えそうな道具を探す。
(これはどうだ?)
ビニール紐の束とハサミを購入する。
御者の位置まではおよそ15m位。
ジュンは25m位の紐を切り何本か束ね、強度を確保する。
「これを使えないか?」
ドノバンやリリル達にその紐を見せる。
「この白い紐はなんだ?ツルツルしていて、軽いな。」
ジュガが聞いてくる。
「私の魔法で作り出した紐です。」
ジュンはそう答え、そういうことにしておく。
ジュガは紐を両手で持ち、強く引っ張る。
紐は切れずにピンっと張る。
「何とかなりそうだな。私が行く。
紐の端はみんなで持っていてくれないか?」
ジュガは紐を体に巻き付け、結び、ゆっくりとバランスを保ちながら、慎重に下に降りていく。
10分ほどして、御者の所に到着する。
ジュガは御者に声をかけている。
どうやら、荷馬車に乗っていたのは御者の1人の様だ。
御者は足を壊れた荷馬車の外れた板に挟まれている様で、
ジュガは剣をバールの様にテコにし、板の隙間を広げる。
そして、挟まれていた御者の足を引き抜く。
「大丈夫だ、紐を引っ張ってくれ!」
ジュガが大きな声で、下から合図をすると、
ドノバン、ルード、リリル、そして周囲の何名かで、紐を引き上げる。
ジュガが御者をつかみながら、バランスを取り、ゆっくりと上に上がってくる。
そしてついに御者を連れて、崖の上の道まで上がってくることができた。
御者は20代くらいのザールと言う名の男性で、サザンの村に住む者だった。
見物人の中に知人がおり、サザン村に行く荷馬車の1台に話をつけ、
運んでもらう様、手はずを立てている。
その様子を確認しながら、ルードは症状を確認する。
「足を骨折していますね、あと出血もある。」
ルードは魔法で、治療にあたる。
「骨折は直せませんが、出血だけは停めます。」
ルードが魔法で、患部にてをかざすと、一瞬その部分が光り、
傷口が徐々にふさがっていき、血が停まってくる。
ジュンは添え木になる太い枝を探し、モディフィケータで調達した包帯を巻く。
「ジュン殿は、この手の怪我の対処に慣れていますね。」
とルードが言う。
魔法で止血し、添え木を宛がった患者を、
数人がかりでサザン村まで行く荷馬車に乗せる。
サザン村まで行く御者が、
「一緒に乗っていかないか?」
と声をかけてもらい、けがをした御者の知人と、
ドノバン、ジュガ、ルード、リリル、シロ、
そしてジュンはその荷馬車で村まで乗せてもらうことになった。
荷馬車は2時間ほどでサザン村に到着した。




