神殺し
前回から引き続き書いています。
あと少しで終わるかな?どうだろう?
神様視点でお楽しみください!
目の前に懐かしい友がいた。
私のことを誰よりも心配してくれた優しい天使。
否、彼を天使と呼ぶのには語弊があるだろう。
とても懐かしい気持ちになって思わず席を立つ。
しかし何故か彼は傷付いている。
黒い翼には痛々しい傷があり、絶え間なく血が出ている。
「その翼の傷は?どうしたんだい?」
私は尋ねた。
もしかして天使にやられたのではないかと思って。
彼は昔から苦労している。私もそれは知っている。
だから昔から気に掛けていた。
彼は他の天使とは違うから、蔑まれるのだと。
けれど私にとって彼が他の天使と違うのは喜ばしいことだった。
アゼルより優しい天使を私は見たことがなかった。
彼は天使達に仕返しをしたことがない。
それが唯一の問題であったし、彼の長所でもあった。
私は考えた。どうすればアゼルを救えるのかを。
考え抜いた末に一つの決断に至った。
彼を地上に向かわせたのはその為だ。
彼が天使の座を降りたいと願えば代わりを見つけるだろう。
そして、そのまま帰還すれば高い地位を授けることが出来る。
しかし思わぬことが起こっていたのだ。
帰ってきた三人の天使から聞く限り彼は裏切ったと。
勿論、それを信じることは無かった。
何か理由があると考えて、真相を探ることにした。
調べた結果、三人の天使が彼を戻れなくしたことを知った。
アゼルが堕天使になった原因は三人の天使にある。
その日から私の話し相手は居なくなった。
幾ら待ってもアゼルが帰ってくることは無い。
そう思っていたのに、彼は戻ってきた。
黒猫とラディアを引き連れて、帰って来たのだ。
とても嬉しかった。
どれだけの時が経ったのだろう。
彼等は私の希望であり、唯一無二の友だ。
私を救いに天界にまで来てくれた。
私は全ての天使に彼等の邪魔をするなと伝えた。
それでも数人の天使はそれに逆らって彼等を襲う。
だから彼は翼に傷を負っているのだろう。
だとすれば本当に申し訳ない。私の力不足だ。
「お気になさらず。今から起こることに比べれば軽いものです」
平然と言葉を返すアゼル。
だけど、その悲しみは隠しきれていない。
「そうだね。君が戻るのを待っていたんだ」
本心だよ、これは。
私は本当に心の底から君達を待っていた。
私を解放してくれるんだろう?
しかし、それは許されることなのだろうか?
君にそんな大罪を押し付けて良いのだろうか?
「お疲れでしょう?私は休んだ方が良いと思うのです」
「確かに、私は疲れたよ。出来ることなら休みたい」
それを口に出しても良かったのだろうか?
本心を言えば君は救われない。
それでも私は寂しくて、そして疲れていたんだ。
休みなんて無かったから。
そう考えるだけでも恐ろしくてね。
私は事実から目を背けたいんだ。知らないって。
でも私がそうしてしまったら、皆が傷付くだろう。
だから出来なかったんだ。どうしても・・・。
「貴方を今でも愛しています。どうか私を許さないで」
「・・・困ったな」
私は出来るだけ微笑んで見せた。
アゼルの事を愛しているから。見放したりしない。
出来るだけ曖昧にして、欺いて見せる。
そうすれば少しは彼に私の意志が伝わるかな?
彼の手は震えている。
思えば彼は武器を持っていなかったな。
考え付いた私は素知らぬ顔で彼に魔法を掛ける。
白い光が彼を包み込む。
その傷は治り、服は真新しい状態へと戻る。
彼の手には一切の銀を除いた拳銃がある。
剣より銃の方が言い訳がつくだろう?
彼は一瞬、驚いた顔をしてすぐに目を閉じる。
覚悟を決めているようだ。
私は静かにそれを待っていた。
静寂が暫く続いた後、彼は目を開き銃を構える。
「君を許せそうにないな」
悪戯っぽく語りかけて、笑ってみる。
勿論、嘘だよ。君のことを恨んだりする筈がない。
寧ろ感謝してるんだ。ありがとう、アゼル。
「丁度良い時間帯だね。十時・・・聖なる時間だ」
「その通りです。十字架は貴方の印ではありませんか」
「さぁどうだったかな?そんなことも忘れてしまったよ」
顔を見合わす。
もっと君と話せれば後悔も無かったのにな。
「それでは、おやすみなさい・・・」
「君も無理はしないようにね」
銃声の音が反響して聞こえる。
嗚呼、結構・・・痛いんだね。
倒れる私を、アゼルは抱きかかえる。
その頬を涙が伝っている。
悲しまなくても良いのにな・・・。
これが当然の報い。受けるべき罰だったんだよ。
それにしても幸せだった。私を想ってくれる人がいる。
「私は君を疑ったことはない・・・アゼル」
最後に一言だけ伝えたかったんだ。
君は無実であり潔白。それが私の見た真実。
神として、これは断言出来ることだよ。
大きな広間には静寂だけが残る。
アゼルは神をその座へと座らせた。
そして跪き、その亡骸へと告げる。
「私が全ての罪を被ります。どうぞ安らかに」
堕天使アゼルは今日、「神殺し」という大罪を犯した。
しかし、それを責めるものは何も無かった。
「神殺し」という大罪を犯しても何も起きなかったのは何故なのか?
天使に代わりは居ますが、神の代わりは誰なのでしょう?
次回も宜しくお願いします!




