神の御心と一人の黒猫
神様とショコラの回です。
神様の心情とショコラの性格が少し分かります。
キャラクター設定を忘れてしまう・・・駄目駄目な作者です。
頬を伝う涙が私の心に幾重にも鎖を巻きつけた。
マリー、君はそれでも私の為に手を穢すのかい?
何故このような私の為に・・・君達は願い、戦うのか?
私から派生した全ての生物。私が生み出した愛しい我が子。
それを手にかけるのは私でも辛い。
マリー、君ならば倍は辛いだろう。辞めても良いんだ。
「ショコラ。マリーが戦っているよ」
黒猫に話しかける。
これでも私は神だ。全ての言語を理解している。
「俺を拾ってくれたのはマリー様だ」
「それでは、マリーの勝利を願うのかい?」
「否、俺を傍に置いてくれたのはラディア様だった」
彼は亡くなった。
ガレッドの手により、外に放置された後に・・・
あろうことか鴉によって葬られたのだ。
その後、遺体は丁寧に埋葬された。人間の手によって。
そうして彼は私の許に来た。
生まれ変わりを命じるのは私の仕事。
何に生まれ変わるのか決めるのは私なのだ。
だから少しの間だけ彼を傍に置くことにした。
その人生は余りにも苦労に満ちていたのだからね。
「でも君を殺したのはラディアということになるんだよ?」
ショコラは逞しく、そして情に厚い猫であった。
「ラディア様は俺を友だと言ってくれた。
俺のことを大切に思ってくれた。それだけで命を預けるには十分だ。
俺の主はラディア様だけだぞ。だから、これで良いと思っている。
・・・例え貴様に背いても俺はラディア様の味方をする」
驚いたなんて話ではない。驚きを通り越して茫然とした。
仮にも神である私に喧嘩を売った猫なのだ。前例が無い。
その精神と強さには敬意を払うべきだろう。
「ありがとう。もう良いよ、ショコラ。
一つだけ訊いておこう・・・君は生まれ変わったら何になりたい?」
「ラディアを護れるのならば何だって良い。武器でも鎧でも」
忠誠心は猫にあらず。君は実のところ犬なのでは?
面白いものだから私は彼を人間にしてあげることにした。
それも記憶と年齢はそのままに・・・・。
彼の願いを聞き届けよう。私からのちょっとした礼だ。
手をかざし、生まれ変わった姿をイメージする。
神である私に儀式など必要ない。手間も時間も無駄だ。
その黒い毛並みは夜を称えるかのような黒髪に。
傷付いた片目はそのままに、片目の視力を倍にする。
緑のリボンは、首元を飾り、彼だということを証明する。
・・・思ったより筋肉質だ。それに中々の顔つきである。
年齢37歳、男性。身分は・・・暗殺者にしておこうか。
そんな神の悪戯としか思えない設定のショコラを転生させる。
「いってらっしゃい、ショコラ」
我慢したつもりが多少、表情に出てしまった。
ショコラは片方の目で覚えていろと睨み付ける。
何はともあれ彼は転生したのだ。私の手によって。
今までとは違う充実感があった。とても楽しい気分だ!
転生させるには惜しい黒猫だったよ、全く・・・。
少し悲しくなった。
実のところ虚しさと切なさが胸の大半を占めていた。
それを彼は全て理解し、和らげてくれていたのだ。
「いつまでも、私の愛すべき者達が幸せでありますように」
私は願う。私は微笑む。
誰も私を見てくれる者はいない。
全ては私が生み出したもの・・・
ならば私の意向によってしか動かない。
時は私を永遠へ誘う。
悲しみと共に私を閉じ込め、この心は幾度も折れている。
それでも飽き足りず、時は私を翻弄する。
誰かが私を殺すというのならば喜んで殺されよう。
しかし、私もまた不死身。死ぬことは叶わない。
だからこそ私は全てを見守る。善い事も悪い事も。
『神は独り死を願う。
その身は時に囚われて、その心は暗闇に沈んだ。
それでも神は全てに微笑む。全てが神の大切な我が子。
全てが神の大切な生き甲斐。その眼は未だ、未来を見つめる』
俺は駄目駄目な作者なので、更に努力します。
さて、今回は驚きの事実が・・・!
なんと、ショコラが人間に転生してしまいました!
今後どのように物語に関わってくるのでしょうか?
読んで頂きありがたく思っております。
お疲れ様です!今後とも宜しくお願い致します。




