三啓使
ラディアの母でありケルビムの現当主マリー。
国随一の美男子、セラフィムの現当主ルカ。
二人は国の緊急指令に馳せ参じ会議を開く。
三啓使の人柄とは?アンリ殺害事件の真実を知った時・・・マリーは?
――時は午後二時
三啓使と呼ばれる我々は王城の一室にて会議をしていた。
「お聞きになりましたか?マリー殿」
「嗚呼。無論だ」
三啓使の一人、オファニムのアンリが殺された。
それは今では周知の事実となっていた。
最も重要な幹部の間ではの話ではあるが・・・。
私の目の前に居る、この者はセラフィムのルカという。
三啓使の中でも最も高い地位に在る者だ。
私より二つ年下というのに、何とも恐ろしい奴である。
異国の血が混ざっていると言う噂もあるが・・・真相は知れず。
国随一の美男子とも呼ばれ、女性からの支持も厚い。
早く結婚し、世継ぎを作れば良いものを。
「それでは本題に入りましょうか」
「嗚呼。さっさと終いにしよう」
正直、私は王城が好きではない。
この広過ぎる一室。大きすぎる窓。美しい装飾の数々。
何一つ、役に立っているものがない。
部屋は広すぎると目が行き届かぬ。
大きすぎる窓からは日光が目を眩ませ、体を焼く。
美しい装飾は只の飾りだ。邪魔だ。武器にも劣る。
それに・・・私は心配なのだ。我が子、ラディアのことが。
つい先日までラディアがオファニムの屋敷に泊まっていたと思うと
心境が計り知れない。早く話しかけてやりたい。
しかし、今し方の緊急指令だ。王に文句を言いたい。
私とラディアの時間を返せ。
私は、国よりも我が子が大事であるぞ!
そう思えば思う程、怒りが湧いてくる。
「何が緊急指令だ。私の時を返せぇぇ!」
怒声が広すぎる部屋に響き渡る。
女性だからと見くびるな。
私はケルビムに相応しい当主で在る!
そこらの男共より私は強いのだ。しかも賢い!
「落ち着いて、ケルビムの当主様。ほら、王城ですよ」
毎回の如くルカが良識を以て私を宥める。
「ぐっ・・・仕方ない。始めろ!」
「はい。それでは、最初に事件の犯人は確認されていません」
「何?確認されていないだと!」
「はい。確認されていては僕達の仕事ではありませんからね」
言われてみれば確かに、その通りだ。
しかし、国民は三啓使に頼りすぎだと思う。
おかげで私は休みが週に一回しかない。
気晴らしに外へ出ると・・・憧れと羨望の眼差し。
それが酷くなると・・・・
「好きです。ずっと尊敬してました!付き合ってください」
と女性に言われる始末なのだ。どうにかしてくれ、天使様。
「また、私の出番か?」
「はい、その通りです。ここは皆の為にも!」
「そこに、お前も含まれてないか?」
「何故、お分かりになったのですか?では、僕の為にも!」
主に事件を解決するのは私の仕事。
セラフィムの仕事は怪我人を癒し、秩序を正すことだ。
ケルビムは裏で手を回し、セラフィムは得たことを皆に告げる。
ケルビムは権威を持ち、セラフィムは抑止力を持つ。
不公平とは思っていない。何の不満も無い。
只、私が事件解決に尽力するのは・・・お前の為ではないぞ!ルカ
「口を閉じろ。お前の為に未解決にしてやろうか?」
「申し訳ありません。お願いします、マリー殿」
仕方ないな。嗚呼、全く・・・。
「私は家に帰る」
「はい。では、そのように伝えておきます」
「頼んだぞ」
「分かっています」
我がケルビムに伝わる金細工の箱。
我が一族しか開けてはいけないパンドラの箱。
それは神の声を聞くことが出来る奇跡の産物。
『どんな事件でも神の手にかかれば真相が暴かれる』
我が剣は高らかに勝利を告げるだろう。
真実と静寂と変わらぬ運命を以て・・・。
ケルビムが所持しているのは炎の剣と金細工の箱です。
今後マリーが事件の真相を知ることになれば・・・。
想像も出来ないことですよね。⇦「作者だろ!」
今回は、少し番外編として三啓使のことを書いてみました。
今後もお楽しみに!ありがとうございました!




