第7話 アントニーとの別れ
「さて、最後も笑かせてもらったしそろそろ帰るか? 続けるにしてもこの取り合いじゃ大した戦果は期待できないぞ」
「すでに取り合いに嫌気が差してますから今回はこれで帰ります。それとてめえ、やっぱり遊んでやがったのか!」
「案内人としての仕事はちゃんとこなしたぞ。野うさぎ相手に叫びながら華麗に技を決めるマーサルさんがかっこよくて、笑みがこぼれただけじゃねえか。プクク」
「だから、笑いながらそんなセリフ吐いても説得力ゼロなんだよ!」
「初めてづくしで緊張しちゃいけねえから、ちょいとほぐしてやっただけじゃねえか。マーサルのためを思ってやったのになー、遊んでると思われるなんて残念無念」
「次に担当する旅人のときは真面目にやれよ!」
「今回はマーサルだから問題ない。なかっただろう? 女の子には紳士的に振る舞っているからな、安心しろ。さあ、王都まで走るぞ!」
逃げるように走り出したアントニーの後を追いかける。性格と言動に少々問題はあるが仕事はきちんとしてるんだよな。事実クエスト達成できたわけだし。
冒険者ギルドに戻ると、まだ窓口は混んでいる。しばらくはこの状況が続くんだろうな。順番待ちのボタンは押して呼ばれるのを待っていると、アナウンスがあり8番の窓口に案内された。受付はクエストを受けた時と同じお姉さんだ。
「お帰りなさいませ。ご無事でしたか」
「クエスト達成の報告をしたいのですが、手続きお願いできますか」
「ではこちらに手を置いてください。……はい、クエスト達成を確認しました」
『クエスト名:畑を荒らす野うさぎ退治の達成報告が完了しました』
『マーサルは1ポイントの冒険者ギルド貢献度を獲得』
『マーサルは50ポイントの経験値を獲得。500Gを手に入れた』
『マーサルのレベルが上がった』
「クエスト完了の手続きも終了しております。報酬はアイテムボックスをご確認下さい」
クエスト報告を終えたあと早々に窓口を離れる。ついでに次のクエストを受けてもよかったが、今はクエスト報告した時に流れてきたアナウンスが気になっているので早く確認したい。
「アントニー、報告したらレベル上がったんだが」
「おぉ、やったな」
「スキルポイントの上限が上がったんだが、どのスキルを取ればいいか相談に乗ってくれないか?」
「……わりぃな。その手のアドバイスは、次元の旅人にしてはいけない決まりになってるんだ。スキルは神殿で入れ替え可能だから、迷っているならいろいろ試してみるのもありだぜ、旅人同士で相談するのもいいんじゃないか?」
ゲームとしてのおすすめを知りたかったのだが教えてくれないのか。だが取りたいスキルはあるのでそれを聞いてみるか。
「わかったよ。スキルの件は旅人に相談してみる。ところで、鉱物採取スキルを取る方法を知らないか?」
「武器鍛冶やるのに鉱石を自力調達したいってことか……鉱物採取スキルなら採取者ギルドに行けば教えてもらえるぞ。王都内だから転移すれば場所はすぐわかるだろう。聞きたい事はそれぐらいか?」
「そんなところかな」
「さーてと、マーサルもこの世界に慣れてきたころだし、俺の案内人としての役目はここまでだ」
そうか、ここで別れてしまうのか。なんかさみしいな。思っていた以上にアントニーに感情移入していたらしい。これはゲームで、相手はAI搭載のキャラだと最初から分かっていたのに。
「そんなさみしそう顔は野郎より女の子にしてほしかったんだがな。まあ、マーサルと会えて楽しかったぜ!」
「案内、ありがとうございました。だが旅人をからかうのは、ほどほどにしておけよ」
「ああ、相手見てやることにするぜ」
こいつ……クレーム殺到して修正されても知らんぞ。
「じゃあそろそろ行くわ。なーに、またすぐ会えるさ。たぶんな」
「ああ、またな」
アントニーと別れた。これからどうしようか。このまま採取者ギルドに行く気分になれない。
一度ログアウトするか。脳内の体感時間が三倍に加速しているとはいえ、キャラ作成からだとけっこう時間使ってるしな。リアルではお昼の時間だし、休憩するにはちょうどいいだろう。




