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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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地獄の果てにあるものは3

 グリフィンの巨体がうねり、黒い体液が地面に垂れ落ちては蒸発して消える。


蒸発した体液が湯気のような黒い煙が溢れる。


「再生でほとんどの魔物達を使用してしまいましたが、まだ二つほど奥の手が残っています。さあ、とくとご覧あれ!」


グリフィンがそう言うと男の手のひらの上に二つの石板が現れ、その石板から二体の魔物が現れた。


一体は全身が白い皮膚に覆われた大きな人型の魔物、まるで祈るような姿で手を組み、そのシルエットは女性のような形をしている。


もう一体は成人男性くらいの大きさの人型の魔物で、全身に包帯を巻いており、フードのついたコートのような赤い服を着ていて、手には真っ赤な刀身のナイフを持っている。



「彼らは私の作品の中でも戦闘力は随一ですよ」とグリフィンは言った。


(まだ奥の手を隠し持っていたのか)智也は僅かながら焦りを感じた。


「さあ、いきますよ!」グリフィンは巨体に見合わぬ俊敏な動きで智也に向かって巨椀を振り下ろした。


智也は回避するが、グリフィンの巨椀が地面に叩きつけられたことにより地面に大きな穴が開き、土煙が大きく舞った。



 智也の回避した方向にはナイフを持った魔物がいた。魔物は赤い凶刃きょうじんを振るい、智也はその間合い外に避けた。


しかし、振るわれたナイフから赤い魔力の斬撃が智也に放たれ、衝突した。

その斬撃の威力は大木を切り倒すほどだ。


(この斬撃、かなりの威力だ。魔力量の少ない今、これに当たるのはまずい)智也は魔物を仕留めようと攻撃を仕掛ける。


その時、智也と魔物の間にわって入るように白い触手が伸びた。


(もう一体の魔物は遠距離からの支援タイプか)



「私も、お忘れなく!」グリフィンは俊敏な動きで智也に接近し、巨椀を振るう。そして、それを避ける智也を執拗しつように追尾し続け巨椀を叩きつける。


智也がグリフィンの攻撃を避けるのに手一杯になっている間にも赤い斬撃や白い触手が智也を狙ってくる。



智也は『空風そらかぜ』でグリフィンの頭上に転移し、その頭目掛けて蒼い拳を叩きつけた。


グリフィンの頭が地面にめり込み、大きな土煙が舞った。土煙の中から白い触手が智也に向かって迫る。


 白い触手が智也の腕に巻きつき、綺麗な弧を描いて彼は地面に叩きれつけられた。そこで防御魔術にヒビが入る。


その直後、ナイフを持った魔物が智也に迫り、ナイフを逆手持ちして彼の脇腹に突き立てた。


赤い魔力が脇腹で爆ぜた。それは防御魔術で防がれたものの、脇腹の部分に大きくヒビが入った。


智也は魔物の体を『流刃』で斬りつけ、距離をとった。魔物には致命傷を避けられたられたものの、腕を斬り落とすことは出来た。


魔物の腕の断面からは密集する黒い粒子のようなものが見えた。


落ちた魔物の腕から黒い粒子が本体に向かって動き、切り落とされた腕の断面部分に集まると、再び腕が形づくられてしまった。



(一撃は無理か)智也はその場を離れ、周りの状況を視認した。


その時、脇腹のあたりに痛みが走った。


視線を向けて見ると、防御魔術を破られ、何かが脇腹を貫通し血が流れ出ていた。


(不可視の触手か......!)

智也は口から血を吐き出した。



グリフィンは防御魔術が脆弱になっている脇腹の部分に不可視の触手を伸ばし、貫いたのだ。


そして、グリフィンの魔力特性【常態化】により、この傷は治らない。



 智也は触手を斬り落とし、さらに距離を取り止血しようとした。


(血が止まらない......爺ちゃんと同じ傷か、このままだと、僕も失血死する。早く決着を着けないと)智也は強い焦燥感を感じた。



 今の状況は三対一、加えて魔力量は残り少なく、癒えない傷を負ってしまった。決着を早期につけなければ、智也が敗北するのは確実だ。


(やるしかない!)


 智也は宙を飛び、グリフィンに向けて照準を合わせる。そして、魔術を唱える。


「蒼星の......」




智也がそれを唱えかけた時、グリフィンの目が"赫く輝いた"。


魔の目(イビルアイ)



 その瞬間、智也の体が内側から熱くなった。

智也はそのまま地面に落下し、さらに吐血した。まるで体の中の強大な何かが溢れ出そうと内側で暴れ、体が壊されるような感覚だった。


(なんだ.....体の内側が、痛む......)



 智也は地面に片膝をついた。


右目の視界が赤く染まる。彼の右目からは血が流れていた。


目だけでは無い。鼻や耳からも血が出ていた。


右腕は特にひどく痛んだ。内側から破裂するような、歪むような、奇妙な感覚と共に体に激痛が走っている。


智也は自分の体に何が起きているのかわからなかった。しかし、ここで倒れることは許されない。彼は力を振り絞り、再び立ち上がった。



 その様子を見て、グリフィンが嘲るように笑った。


「ふふふ、どうですか? 私の【魔の目(イビルアイ)】の能力、見た者の魂を暴走させ【魔物化まものか】させる力は? まあ、貴方の場合は『眷属化』してしまいますがね」



(そうか、この身体の痛みは、眷属化による"身体の変形"......)智也は流れ続ける血により、意識が朦朧もうろうとしてきた。



その様子を見たグリフィンは言った。

「貴方に『蒼星そうせいしずく』を放たれては、私も後が無い。決着をつけさせてしまいましょう!」


グリフィンの合図と共に二体の魔物が白い触手と赤いナイフで攻撃を仕掛けた。


ナイフを持った魔物は智也に素早く接近し、凶刃を振るった。




──その時、智也の周囲が歪んだように見えた。


まるで水面に波紋が広がるかのように波が空間を伝う。


歪みの波によって魔物が振るったナイフは湾曲し、水槽に入れられた赤い絵の具のように溶けて空間に広がった。



 そして、歪みの波がおさまり、現れた智也の姿は先程とは変わっていた。



 彼の右腕はミイラのように変化し、顔の右側には右腕から伝播するように蒼い樹木のようなあざが出来ていた。


その痣は右側の額の辺りまで伸びており、痣の通っている彼の右目は黒から蒼色に変わり、その右目の奥には虹色の光がうごめいている。



出血は止まったが、体は人間のものよりも遠ざかってしまっていた。


(右腕が、ミイラみたいに.....まるで、あの蒼白の化け物のような......それに、視界が変だ。右目と左目で視界がズレている、気持ち悪い)智也は自身の体の変化に驚ろいていた。


しかし、なぜか彼は冷静だった。自身の体を見て驚きはしたが、すんなりと受け入れてしまったのだ。まるで、慣れているかのように。




 直後、包帯の魔物は体から再びナイフを作り出し、それを手に持って智也切り掛かった。


それに続くように柱のように太い白い触手が彼に襲いかかった。


しかし、智也はその攻撃を身体強化魔術無しで軽く避けてしまった。



(とても、不思議な気分だ。相手の次の動きが見える。まるで、少し先の"未来を見ている"ような......)智也の右目と左目は見えているものが僅かに違った。


彼の右目には左目よりも少し先の動きが見えており、それが気持ち悪い感覚を与えている。しかしながら、少し先の軌道を見ることによって彼は魔物達の猛攻を軽々と避けられた。



(なんだ、あの姿は? 眷属化? おかしい、一瞬だけ【魔の目(イビルアイ)】を使った程度で眷属化するはずがない。まさか、元から眷属化する寸前の状態だったのか?)グリフィンはこの様子に焦っていた。




(奇妙な感覚と共に湧き上がる奇妙な感情、まるで、酷く後悔しているような、"自責の念"のようなもの、これは何だ?)



その時、グリフィンが魔物に向かって叫んだ。

「早く、決着をつけなさい!」


その瞬間、魔物達が変化した。


ナイフの魔物は全身から赤い斬撃のような性質を持つ魔力を放ち、白い魔物は触手を一本に束ね、その先端をアングレカムの花弁のような形に変形させた。


白い魔物は花弁の中心から白い魔力の光線を放ち、ナイフの魔物は赤い魔力を全てナイフにのせて巨大な斬撃を放った。






その時、突然、智也のミイラのようになった右腕がブルブルと震え出した。


そして、智也は右腕を前に突き出し、その正面に魔術陣が展開された。


彼は『不可視の衝撃』と唱え、正面から迫る二つの大きな魔力に向かって魔力の塊を放った。



その瞬間、巨大な蒼い魔力の塊が放たれた。

彼が使った魔術は蒼い魔力を使った魔術では無く、通常の魔術だった。


だと言うのに、その魔術から放たれたのは蒼く発光する可視化された魔力の塊。それは軌道上にある全てのものを削り取り、二つの魔力を容易く打ち消し、グリフィンに向かって直進する。


途轍とてつもない光と突風を起こしながらグリフィンへ向かって高速で接近し、男は死に物狂いで何とかそれを回避する。



(なんだ、この威力は、『不可視の衝撃』は初級魔術、これほどの威力は前兆でも出せなはいはずだ!)グリフィンは驚愕した様子で智也を見た。



智也自身、この力に困惑した。

まるで、底なしの魔力が湧いてくるような感覚だ。



(これが、眷属化の力......凄い力が湧いてくる......でも、力に身を委ねてはダメだ。意識を強く持て)智也は溢れ出る力に耐えて力強く立っている。


気を抜けば意識を別の何かに持っていかれるような、そんな予感がしている。しかし、彼にとって、その程度の障害は容易く超えられるものだ。



半ば異形と成った少年と、心も体も魔物となった男、彼らの戦いに決着がつこうとしていた──



本編とは関係ない設定

・ナイフの魔物

魔物化前は大量殺人を犯した殺人鬼であり、ナイフを用いて人を刺し殺し、○体を捌いて怪しげな儀式に使っていた。この男は野良の魔術師であり、人智の力を得ることを目的としていた。


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