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GunZ&SworD  作者: 聖庵
119/185

シーン 119

前線を強引に突破するタラスクスを止めるため、六人のハンターが取り囲んだ。

顔ぶれを見ても皆実力者揃いだ。

知識と経験に基づいた無駄のない動きをしている。

チームのリーダーを務めるのは中年の男性で、距離を保ちながら襲い掛かるタイミングを計った。

そして、タラスクスの歩みが一瞬止まったところを見逃さず、仲間に指示を飛ばす。

攻撃は最大の防御と言わんばかりに、男たちは休みなく斬り掛かっていった。

中には槍を手にしたハンターも見える。

斬撃と突きが絶え間なく繰り返された。

通常、何かの手違いでもなければ破られる事のない見事な戦術だ。

素人目に見ても攻守のバランスに優れている事がわかる。


彼らを見守る別の同僚たちも安心して眺めていた。

ところが、戦っている男たちの表情に余裕は見当たらない。

むしろ、自分たちの戦術が思うように決まらず、決め手を欠いている。

何か決定打があれば形勢は一気に逆転するのだが、硬い皮膚が邪魔をして刃が通らなかった。

攻め掛かるハンターたちの顔に焦りの色が浮かぶ。

その刹那、攻撃を受けるだけだったタラスクスが攻勢に転じた。

まず、最初に犠牲者は三十代半ばの中堅のハンター。

硬い皮膚に覆われた尻尾が鞭のように振られ、男の身体が軽々と宙を舞う。

ネピリムの一撃ほどではないが、不意打ちのような攻撃に受け身が間に合わず、全身の骨がバラバラに砕ける音がした。

打ち所が悪かったのか、着地の瞬間に首の骨が折れ、呆気なく息を引き取った。

次に狙われたのはチームの紅一点。

ニーナよりも少し年上と思われるハンターの女性だった。


「逃げろーーーッ!!」


僕は咄嗟に叫びながらタラスクスを自動小銃で遠距離から狙撃した。

しかし、タラスクスは攻撃をものともせず、足止めをする事が出来ない。

次の瞬間、タラスクスは巨大な口を開き、目の前で女性が姿を消した。

生きたまま丸呑みにされ、腹の中でもがいている。


「わあぁぁぁーーーッ」


リーダーの男が悲鳴をあげた。

そして、危険を承知で彼女を助けようと必死に腹を割こうとしている。

それでも、皮膚を貫く事は出来ず、ついに持っていた剣が真っ二つに折れてしまった。

打つ手がなくなり、腹の中で動いていた女性の反応も見られなくなった。

残りは四人。

しかし、あまりの出来事に武器を持ったまま呆然としている。

もはや彼らに戦意は残っていなかった。

タラスクスもそれを理解したのか、強靭な尻尾で男たちを次々に薙ぎ倒していった。

残ったのは倒したハンターを餌と見る恐ろしい怪物の姿だけだ。


それを見ていた他のハンターたちは言葉を失った。

最初、戦いを優位に進めていると思っていたのは間違いで、現実は残酷なものだ。

精鋭のハンターたちがやられた事で、前線に不穏な空気が流れ始めた。

人間は強大な敵を前にして無力を実感すると戦意を喪失してしまう。

先ほどまで高まっていた士気は一気に冷め、絶望が支配しようとしていた。


「も、もうダメだ…」

「こ…殺される…」

「終わりだ…」


周りから次々にネガティブな思いが発露していく。

このままでは前線がいつ決壊してもおかしくない。

しかし、僕の銃ではタラスクスを止める事すら出来ない。

僕以外に助けが必要だった。

そんな中、タラスクスの侵攻を止めようと、二人の男が立ちはだかった。

それは、バリージェイとグラウンドの兄弟だ。

彼らは自分たちが担当していた持ち場を制圧し、ターゲットをタラスクスに絞っていた。

それを見て前線に微かな期待が広がっていく。


「へッ、ここは通さんぜ?」

「こいつはとんだ化け物だ」


バリージェイとグラウドンはそれぞれの武器を握り直し、タラスクスの左右に展開した。

そして、先に仕掛けたバリージェイは自慢のバトルアックスを横腹に叩き付ける。

以前使っていた斧は大会でクオルに破壊されてしまったため、今使っているのは新たに新調したものだ。

重さを生かすため、あえてテイタンではなく鋼鉄製を使用している。

肉厚の斧はタラスクスを捉えると、激しい金属音と共に火花を散らした。

同時に、タラスクスの腹が大きく陥没する。

どうやら重さを生かした打撃攻撃は有効らしく、皮膚を通じて内蔵にダメージを与えていた。

しかし、身体を覆う皮膚には少し傷がついた程度で、それ自体が致命傷には繋がっていない。

グラウドンも兄に習い、スイカほどある巨大な鉄球を横腹にお見舞いした。

こちらも大会でアルマハウドに破壊されてしまったため、新しく新調したもの。

身体の大きいタラスクスは、的が大きく動きもそれほど早くないため、攻撃を外すという事はほとんどない。

鉄球はバトルアックスよりも大きな打撃を与えた。

タラスクスの身体が真ん中から“くの字”に曲がった。


「へへッ、どうだい、こいつは利いただろ?」

「いくら刃が利かないからって、中身まで丈夫に出来ていないだろう?」


二人はそれぞれの攻撃に手応えを感じている。

確かに、先ほど相手をした六人よりはダメージを与えていた。

しかし、それだけでは決定打にはなっていない。

もっと、何度も攻撃する必要がある。


「手を止めるな!一気に叩き潰せ!!」


僕は駆け出して二人の援護に回った。

それを聞いて二人はニヤリと口元を緩め、再び攻撃を開始した。

外部から伝わった衝撃はジワジワと内臓を痛めつけていく。

何度も攻撃するうちにタラスクスの動きが鈍くなってきた。


「おうおう、そろそろ限界か?」

「兄者、一気に叩き潰すぞ!」


二人は息を合わせて同時に攻撃を仕掛けた。

僕も遠距離から自動小銃を撃って距離を詰めていく。

二人の攻撃が炸裂する瞬間、タラスクスの腹が急激に膨れ上がった。

一見すると蓄積したダメージが腹の中で一気に開放されたようにも見える。

しかし、その実態はタラスクスが大量の空気を吸い込み、腹を大きく膨らませていた。

その姿は風船のようにも見えた。

おかげで腹の中は空気で満たされ、内臓を守るクッション代わりになっている。

身体が膨らんだ事で別の効果もあった。

ちょうどトランポリンの要領で、二人の武器が反発し、行き場を失ったエネルギーが二人に襲い掛かった。


『ぐあぁぁぁッ』


二人の悲鳴が前線に虚しく鳴り響く。

持っていた武器がそのままの勢いで襲い掛かり、避ける事も出来ずに真正面から衝撃を受けてしまった。

二人を見ると自分たちの武器で胸や頭を強く打ちつけている。

特に酷いのはバリージェイだ。

バトルアックスは両刃になっている。

つまり、自身の方にも刃がついているため、着ていた鎧を粉々に撃ち砕き、胸から大量の血を流していた。

鎧を着ていなければ即死の大怪我だ。

グラウドンの方も巨大な鉄球が頭を直撃し、骨折こそしていないが脳震盪でその場に倒れ込んでしまった。

二人の元に駆け付けた頃には、タラスクスは再び歩み始めていた。


「止まれぇぇぇーーーッ!」


叫びながら自動小銃を連射する。

至近距離なら何とかダメージが与えられると期待をしていたが、そんな思いは儚く散った。

皮膚に僅かな傷が付いた程度で、まったく動じていない。

おまけに身を守る術を身に付けたのか、銃撃されている最中に頭を左右に振り、的を絞らせないようにしている。

おかげで一点に集中した攻撃が出来ず、ダメージが分散してしまった。


「レイジ、加勢するぞ!」


自分の持ち場を制圧したクオルが駆け付けてきた。

今まで一切能力を使わず戦っていたため、精神的な疲労がないらしい。

一人よりも二人で戦えば何とかなるだろう。

幸い彼の持っている魔具は炎を操る“ブレイズソード”だ。

以前の戦いで炎に弱いという事が証明されているため、有効な攻撃手段になる。


「クオル、こいつは炎に弱い。お前の能力で何とかならないか?」

「炎が弱点なのか!?わかった、少し時間をくれ。その間に精神を集中する!」

「わかった!」


クオルは一歩下がって精神を集中した。

タラスクスの全身を覆うほどの炎となれば、相当な精神力を必要とする。

下手をすればバレルゴブリンと戦った時の以上の火力が必要だ。

そうなれば精神的な疲労は計り知れない。

恐らく丸一日眠ってしまうほど精神を一気に消耗するだろう。

それでも、彼は町を守るという決意は固く、そのリスクを気にする様子はない。

僕はその間、タラスクスの注意を引くため、銃を絶えず撃ち続けた。

ダメージは与えられなくても、タラスクスが首を振って回避行動を取る間は、足止めをする事ができる。

通常の銃なら手の感覚がなくなるほどの連射だ。

これがエーテルと同調した武器で本当に良かった。

でなければ今頃、腕が上がらなくなっていただろう。


「ま、まだか!?」

「…行くぞぉぉぉッ!!」


クオルは刀身にこれまで見たことのない巨大な炎を灯した。

長さが二メートル以上もある火柱だ。

天すら焦がすような激しい炎は周りの空気を暖め、気流に変化を与えている。


「燃えろぉぉぉッ!」


腹の底から声を発し、火柱をタラスクスにぶつけた。

炎はまるで意志を持った蛇のように全身に巻きついた。

タラスクスは炎に包まれ明らかに苦しそうだ。

微かに肉の焼ける香ばしい匂いもしている。

いくら皮膚が硬くても熱を通さないという事はないようだ。


「効いてるぞ!」

「あ…あぁ…さすがに精神力を使い過ぎた…」


隣を見るとクオルが苦しそうにしている。

左手を額に当て、遠くなっていく意識を何とか保っていた。

立っているのもやっとなのだろう。

早く安全な場所に移して休ませてやらなければならない。

しかし、タラスクスは業火の中、全身を振って炎を振り払おうとしている。

きっと、近くに水辺があれば飛び込んで難を逃れたかもしれない。

幸い近くには炎を消す水辺も砂地もないため、炎が徐々に身体を焦がしている。

それでも、このまま全身を焼き尽くすだけの火力はない。

炎の効果が切れれば再び動き出し、前線を突破しようとするはずだ。

満身創痍になっても強い生命力で邪魔するハンターたちを薙ぎ払っていくだろう。

そうなる前に倒す必要がある。

僕はポシェットから“炸裂弾”を取り出した。

前回、タラスクスを倒した実績のある道具だ。

今回も似たような状況のため、口さえ開けば投げ込み、内側から爆破する事ができる。

しかし、タラスクスは硬く口を閉ざし、一向に開く気配は無い。

そうしている間にも、炎の勢いが徐々に弱くなってきた。


「チッ…そう都合よくはいかないか」


思わず舌打ちが漏れた。

どうにかして口を開かせたい。

何か外側から衝撃を与えられればいいのだが、何か無いものか。

何気なくポッシェットの中に手を入れると、“火薬玉”が出てきた。

元々これは爆発で被害を与えるものではない。

むしろ、音で驚かせて足止めをするものだ。


ここで脳裏ある映像が浮かんだ。

それは、生前の僕と母親とのやり取りだった。

母親は驚くと口を大きく開けて目を見開いていた。

これが他の人や魔物に適応できるか不明だが、何もしないよりはマシだ。

試してみる価値はある。

火薬玉を思い切り投げつけると、炎に引火して大きな爆発音を発した。

それに驚いてタラスクスは大きな口を開けた。


「今だッ!」


その瞬間を見逃さず、口に向けて炸裂弾を投げ込んだ。

すると、導火線に周りの炎が引火し、口の中で大爆発を起こした。

同時にタラスクスの頭部が大きく弾け飛び、辺りに肉片が飛び散っていく。


「や…やったぞ!」

「…さすが…レイジ…だ」


遠くなっていく意識の中、クオルはタラスクスの死を見届け、そのまま深い眠りについた。

どうやら明日くらいから急激に忙しくなりそうです。

今後も可能な限り毎日投稿する予定ですが、予期せず(?)投稿できない事態が起こるかもしれません。


個人的には、ここまで毎日続けて来たので、最後まで同じペースで走りきりたと思っています。


出来る限り頑張ります!




ご意見・ご感想・誤字脱字の指摘等があればよろしくお願いします。

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