05 こうして自分はクビになった
嘘だろ、これ絶対に嘘だろ……
薄霧の立ち込めた空の下、河馬は久しぶりにその感覚を味わっていた。その感覚の名は――自由。
大学の同級生である林田冬は最後まで河馬に合理的な説明をしてくれなかったが、河馬もあえてそれを尋ねようとはしなかった。というより、中で何が起きたのかを尋ねる勇気など、そもそもなかった……
拘留所での長い日々の屈辱は……もう過ぎたこととして片付けるしかない。
そうでなければ……他に何ができるというのか?
拘留所を出た瞬間、かすかな清風が顔に吹きつけ、河馬は久しぶりの涼しさを感じた。額の髪が微風に揺れ、そっと震えている……河馬はアスファルトの道に立ち、果てしなく広がる空を見上げ、自分が自由になったことが信じられなかった……
まるで、自分がかつて刑務所に入れられたことがあるなんて信じられないように。いや、拘留所だが、まあ似たようなものだ。世の中は時として、あまりにも非現実的に見える……これまで自分がこうした暴力機関と何の関わりも持つはずがないと思っていた。
それどころか……自分が時に「悪人」という名の側の一員になるなど、信じられなかった。
もしかして、自分は悪人なのか?
河馬は首を振った。まさか……どこかで間違っているに違いない。
自分はただ誤解されただけだ。
きっとそんな誤解はすぐに解けるはずだ。
そんな自由にはまだ喧騒な車の轟音がつきまとうが、今は空気に混ざる排気ガスの匂いさえも香しく感じられる……
きっと、自分はすぐにあの連中の中にまた溶け込めるだろう。
エイミーのあのねっとりとした声を思い出す……きっと、すぐに元の日々に戻れるはずだ。
ただ、時として物事はそう自然には運ばない。
アパートに戻ったばかりの部屋は、やはりあの惨めな状態のまま。変わらぬ灰色の下で、どこか一層冷たくなった気がする。窓の外の空には冷たい薄霧が立ち込め、次第に本来の青さを失っていく。
河馬はこの寒々しい孤独にどうにも馴染めなかった。まるで世界に自分一人だけが残されたかのようだ。
テレビをつけ、それほど快適ではないベッドに横になった。
「報道によりますと、地元の指導者はさらなる独立を訴えており……私達は……」
次の報道を待たず、河馬はテレビを消した。
画面を真っ暗にした……
正直なところ、河馬はこういうものが大嫌いだった。こうした話は自分ような庶民にはあまりにも遠く、あまりにも無力に感じられた。
確かに、自分の運命すら左右できない、出所したばかりの奴に何ができる?
……
自分はただ、この世界に何かを求めているだけだ。自分が怯える心を……
河馬は首を振った……
身支度を整え、店の様子を見に行くことにした。
今、彼にとって最も必要なのは、誰かと話すことだった。
話すこと……
そう……
河馬の脳裏に、笑みをたたえた茶色の髪の姿が浮かんだ。エイミーは今頃、いつものように一生懸命働いているのだろう。そんな姿は、このひきこもりの自分まで感染させるに違いない。
よし……
今すぐ店に行こう。
エイミーのためにも、元気を出さなければ。
「うん……」
そんな思いを抱え、ゆっくりと街路を抜け、まるで何事もなかったかのように店にやってきた。
あの店は相変わらず、太陽の光を受けて眩しく輝いていた。ただ中は見えず、今頃あの連中も店の中で忙しくしているのだろう。
河馬はそっとドアを押し開けた。その時間がまるで一世紀のように長く感じられた。
すべての人が河馬を見た時、まるで固まってしまったようだった。
「おい、あれって河馬じゃないか?」
一人がイエユアンをつついた。まさにその暴力少女メイリンで、彼女は皿を端に持ち、イエユアンの服の裾を引っ張った。
イエユアンは河馬を見ず、ただぼんやりとしていた。
多くの店員が皿を持ったまま、河馬を見つめている。
メイリンは周りを見て、口を開こうとしたが、また閉じた……一歩踏み出そうとしたが、無限の束縛に縛られているかのように、もう一歩も進めなかった。
そして……
「あ、あの日、彼、警察に連れて行かれたんじゃなかったっけ……」
見たことのない、ウサギの耳をつけた店員がそう言った。
別の年上のお姉さんのような人がすぐにそれを制止した……
「余計なこと言わないで……」
「でも……本当でしょ……」別の店員も小声で話し始めた。
「彼、戻ってきたの?」
「何かやらかしたの?」
一人の店員が河馬を見てそう言った。
「まさか……何かあったのかもしれない?」
河馬は入り口に立ち、周りが何かを言っているのを感じていた。
聞き取れなかった……
しかし、その視線だけで十分に耐えられなかった……
その視線は、一体何を見ているのか?
異端者か?
俺は異端者なのか?
そうなのか?
たぶんそうだろう……
一人の女がまだ言っている。
「事情があったら手錠をかけられる?普通、目撃者はそうならないでしょ……」
そのお姉さんは首を振った……
「でも……」
またつつかれた。
「気をつけて……」
その人は河馬をちらりと見た。河馬がその女を見ると、女は思わず数歩後退した。
それに河馬は手を伸ばしたくても、できなかった……
その表情はまるで、河馬が危険人物だと言わんばかりだった。
河馬は口を開こうとしたが、一体何を言えばいいのか?
わからない……
まったく思い浮かばない……
難しすぎる……
音はあまりにも静かで、針一本落ちても聞こえそうだった。
「彼、仕返しに来たんだ……手錠をかけられた人間だ……」
その声ははっきりと河馬の耳に届いた。
その女も失言に気づいたようだった。
口を押さえた……
河馬は彼女を見て、視線が少し迷っていた。
メイリンは口を開いたが、うつむいて何かを思いついたように。
最後には背を向けて行ってしまった。その目は異様に冷たく、まるで全く関係のない人を見るかのようで、相手にする気もなく、ただ黙ってテーブルを拭いていた。
しかし周りの人々もどうしたのか、ただ呆然として、まるで河馬を見ていないかのようだった。
何の問いかけもない……
「あの、今日新しく開いた店、いい感じだね……」
「そ……そ……そうだね……」
二人の店員がもっともらしく会話を始めた。
河馬はうつむいた。何を言えばいいのかわからなかった。
前に進みたかったが、誰一人として関わろうとしなかった。
話したくない……
あるいは……まったく見えていない。
なぜ?
自分が何か間違えたのか?
違うだろう……
間違えてないはずだ……
たぶん間違えてない……
そう……だろう……
今、河馬はどれほど望んだだろう……
どれほど望んだだろう……
しかし……
「あ……河馬……」
その声は最後の抵抗の中で、笑みを引きつらせた。すべての人がその人を見た時、彼女の眉が思わず痙攣した。
「あなた……戻ったの……」その声はまさに――エイミー。
ただ今は、もうあのねっとりとした声ではない。
まるで言葉を発するだけで、とても無理をしているようだった。
しかし……
河馬は理解していた。彼女はもう十分に努力している。
本当に……
十分に努力している……
甚至、彼の目には涙が浮かびそうだった……
「うん……戻ったよ……」
その人はうつむいた。茶色の髪は、それほど可愛くは見えない。
あるいは……彼女はとても無理をしているようだった。
最後には顔を上げ、ゆっくりと言った。
「刑務所の中は、楽しかった?」
そんな言い方があるか?
その顔はとても敵意がなさそうに見えるのに。
ただそんな言葉を発する……
しかし……
河馬はわかっていた。彼女は本当に十分に努力している。
「大したことない……憂鬱になるよ。」
エイミーはもちろん自分が失言したことを知っていたが、何を言えばいいのかわからなかった。
「そ……そ、そう?」
河馬はうなずき、他には何も言わなかった。
しかしそんな動作は、誰の注意も引かなかった。彼女たちはただ自分に注意を向けたくなかった。
河馬も周りが何を言っているのか聞こえなかった。
「毎日、獄友と体操して、それからご飯?」
エイミーはゆっくりと言った。自分でも何を言っているのかわからないようだった。
「それは軍隊だよ。もしそんなことができたら、もしかしたら俺は優秀な兵士になれたかもしれない。」河馬は彼女の言葉を聞いて、体操……あの暗い部屋に閉じ込められれば、善人でも絶望して極端な思想を持つようになる。
「ぷっ……」エイミーはそれを思って、かえって笑った。
そして振り返って大声で言った。
「みんな聞いた?河馬が、もし軍隊に行ったら優秀な兵士になれるって。」エイミーはそう言った。
彼女も笑っていた。しかし……
この冗談は少しも面白くなかった。
ただ空気は冷たく、エイミー一人の笑い声だけが響いた。
河馬はうつむき、本当に穴があったら入りたい気分だった。
一秒……
二秒……
三秒……
河馬にもエイミーの声の中の泣き声が感じられた。一秒……
二秒……
「はは……ははは……」
最後にメイリンは振り返らず、ゆっくりと笑い出した。
そして突然……
詰まった……
「はは……はははは……」
そんな笑い声……
とても突き抜けるようで……
周りの人々も、思わず笑みを浮かべた。
最後にはみんなが笑い出した。
「そうだよ……優秀な兵士だってさ……」
「このガリガリの体じゃな……」
ただ半分まで言って。
その笑みはまるで突然止まったかのようだった。
この時間はあまりにも長く、絶望的に感じられた。
刑務所の中よりも暗く、絶望的に……
なぜ?
「そうだね、彼は優秀な兵士にはなれないよ。ただの脱走兵だと思う……」
「そうだ……彼が兵士なんて……似合わない……」
「全然……」
エイミーの口元が微かに動いた。彼女は周りを見た。
すべての人が自分の仕事に忙しく、店にはほとんど誰もいなかった。
あるいは……
こんなに人が少ない時は滅多になかった。
まるで……人がみんな消えてしまったかのようだ。
最後には……
人が消え始めた……
一人……
二人……
エイミー一人だけがホールに立ち、河馬に背を向けていた。
彼女は河馬に何を言えばいいのかわからなかった……
まるで河馬も彼女に何を言えばいいのかわからないように……
最後に……
エイミーは突然振り返った。
もしかしたら……
彼女は言いたかったのかもしれない。いてください……と。
そんなこと、自分は何を言えばいい?
あるいは、自分にいてもらう資格があるのか?
そんなこと……
イエユアンが自分の後ろに来て、タオルをテーブルに投げた。
エイミーはうつむき、最後には自分のそばを通り過ぎていった……
瞬く間に店には自分一人だけが残った……
陽光が河馬の姿を照らし、長い影を引き延ばす……
茶色の髪が河馬の瞳の中に、強い憧れを残した。まるで自分が一度も見たことのない何かを恋しく思うかのように。そんなもの……
自分は一度も持ったことがない……未来も持つことはないだろう……
たぶん……
たぶん……
たぶん……
ただ……なぜ?
なぜ……世界中で自分だけがこうなる?
なぜ?
涙が床に落ち、一滴一滴の染みを作った。
河馬は振り返り、陽光を浴びて立ち去った。
「ねえ……これで本当にいいの?」
「たぶんね……」
「でも……」
「あの件があってから、店の客はどんどん減っている……」
「ただそれだけの理由で?」
「ただ?」
その茶色の髪の下の瞳……
まるで河馬が天井の変わらぬ姿を見つめる時のような絶望。
本当に……こんなに絶望的。
一体自分は……
さっきのことを思い出す……
自分が何か間違えたのか?
なぜ?
たぶん……本当に自分のせいだろう。
自分のせいでなければ……
こんなに多くのことは起きなかっただろう。
しかし……
なぜ自分はこんなにダメなんだ。
なぜ?
自分は本当にダメすぎる……
本当に……
本当に……
自分は人でなしだ。
人でなし以下だ。
そうか……
みんなそう思っているんだろう。
よく知っている人も……知らない人も……
あの少女も……
もし、自分と出会わなければ、きっと結末もあんなに悲惨ではなかっただろう。
自分と出会った人に、どうして良い結末があるだろう……
全部自分のせいだ……
何せ……
自分はそういう人間だ……
触れるだけでも気持ち悪い……
誰も自分と一緒にいたくない……
エイミー……
あなたの好意は感じた……
ただ自分がダメすぎる……自分が……あなたのそばにいるのにふさわしくなさすぎる……
自分は……
河馬は自分の手が震えているのを感じた。まるで自分の手ではないかのように。
もしかしたら……このまま死ぬのも悪くないかもしれない……
死……
沈黙……昏睡……
誰にも会いたくない……自分を整理する気にもならない……
このまま腐っていこう……
何度も果物ナイフを手に取ったが、その決心はつかなかった。
なぜ?
なぜこうなる……
自分……
本当に……
カレンダーは日々更新され、自分も何もせず家で寝転んでいる。
焦げ臭い匂いも感じない。おそらく自分の体もそうなのだろう。最低限の生活、最低限の食事を最低限だけ食べ、働きたくもなく、外にも出たくなく、ただこうしてぼんやりと天井を見ていたい。
出るんだろうな……
あの刺すような陽光を感じると、自分はこんな暗い環境の方が慣れていると気づく。
暗闇……それはこんなにも安心させる。
誰も自分を嘲笑わないし、誰も自分を見つけられない。
自分はこうして黙って暗闇の中に隠れている……
出たくない……
誰も自分を嘲笑わない……
そんな視線……
視線……
なぜ?
河馬は首を振った。自分の意識が少し朦朧としている気がした。
ボロボロのインスタントラーメン、そして腐臭のする料理、さらに山ほどの缶詰。
これらを食べ切って……そして完全に腐っていこう……
いずれ食べ終わるだろう……
食べ終わったらどうする?
食べ終わったら食べ終わったでいい……
生きるか?まあ、その時考えよう……
そんなことを考えるのは面倒だ。一日一日を過ごすだけ。
どうしようもなければ、このまま餓死しよう……
どうせ自分のような奴、死んでも価値はない。
生きている……ただこの世界の他の人を汚染しているだけだ。
もしかしたら……
自分のような人間は、生まれた時から生きるべきではなかったのかもしれない。
自分は他人と無理に笑い合うこともできない。もしかしたら自分は、楽しさというものを知らないのかもしれない……
探していたのは……
ただの発散……
本当に人でなしの考えだ……
はは……
はははははは……
はははは……
はははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……ははははは……
「ははは……」
涙が溢れ、きらきらと床に落ちた。




