第1話 予感
時の流れというのは早いものだ。
アイリス達がサンライト魔法学校に入学して3ヶ月以上は経った。
今はもうクリスマスの前で、冬休みの前でもあった。
「アイリス、もうすぐクリスマスよ!」
「そうね!でも、外出が出来ないのは残念……」
サンライト魔法学校は生徒の安全の為、夏休み(1ヶ月半)の間の2週間までの外出と特別な事情以外での外出は禁止されていた。
「そうよね、イケテールとデート出来ないのは残念よね。」
「誰もそんな事言ってないから。」
アイリスは入学初日に喧嘩したレント・イケテールを思い浮かべる。
アイリスは以前までレントを嫌っていたが、廃校舎での件をきっかけに「いざとなれば役に立つ奴」と認識している。
「でも、みんなが危ない時に必ず助けてくれる。」
「あらあら、イイ感じじゃない!でも、確かにそうよね。廃校舎でそれが分かったわ。」
アイリスはサファイアのペンダントを首から外し、握った。
「あのさ、シェリー。前にこのペンダントをお母さんから貰ったって話したじゃない?」
「えぇそうね。アイリスのお母さんへの愛がよく伝わったわ。」
入学初日の夜、カフェテリアで落とした際にレントが拾って渡してくれたペンダント。
アイリスは光に反射して輝いているペンダントを見ながら言った。
「実はさ……最近、このペンダントの輝きっていうのかな。それが、一度だけ変化したの。」
「色?」
「うん。この前、講堂で校長先生のお話を聞いたでしょう?その時にサファイアが一瞬だけ輝いて……」
それは、ハロウィンの日だった。
校長先生が「今年のハロウィンは突然だが休校とする!君達には……」
ハロウィンパーティーを各クラスで行ってクラスの仲を深めて欲しい、という校長の計らいで休校になったのだ。
それを知らせる為に全学年の生徒が講堂に集まったのだ。
「へぇ、不思議ね、そのペンダント。……魔法でもかけられているんじゃない?」
「魔法?」
「えぇ。でも、ペンダントを突然輝かせる魔法なんて聞いた事ないし、しかもそれはアイリスが幼い頃から持っていたんでしょう?」
「うん。4才か5才ら辺の頃の誕生日プレゼントとして貰った。」
「アイリスは先月12才になったのよね。ペンダントを貰って少なくとも7年は経ってるわ。」
「そんなに長い期間保つ魔法なんて聞いた事ないわ。」
二人で原因を考えるが、それらしい理由は何も思いつかなかった。
アイリスはペンダントを着け直す。
「……最近、何かが近付いてきているような気がするの。」
「何かって?」
「それは分からないけど……魔王に近い人と会うような気がする。」
アイリスは廃校舎の女子トイレで出会ったヴェルディを思い出す。
校長先生から聞いた話だと、彼は魔王に認められた魔法使い“七つの天星”の一人らしい。
あの時、ヴェルディはアイリスを「レントのガールフレンド」と揶揄ってきた。
そして、結局ヴェルディも答えを知らなかったであろうクイズを出された(チューニの居場所について)。
アイリスと校長先生はヴェルディがサンライトに侵入した理由を「私を魔王の元に置くため」と予想している。
「アイリス、考えすぎよ!いくら魔王に近い手下でもサンライトに侵入する事なんて出来ないわ。」
シェリー達はアイリスとレントが出会った男の正体がヴェルディである事を知らない。
魔王の手下と出会ったと話したら、心配させてしまうだろう。
「……そうだね、そうよ!校長先生がいる限り、魔王すらサンライトに侵入する事は出来ないわ!」
シェリーを心配させない為か、自分を安心させようとしている為に言ったのか、アイリス自身分からずにいた。
「そろそろ部屋戻ろっか!」
「そうね!今日は話題のドラマを見ましょう!『ケッコン』っていう作品なんだけど……」
「んー、遠慮しておこうかな!」
二人はフカフカのソファから立ち上がって部屋に繋がる階段を楽しそうに上った。
クリスマス当日、何かが起こる事も知らずに。




