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第27話 大商人バンリオル

やっと大商人登場。これから世界が少しずつ広がります。若いけど、五代目なので、天才商人です。

 ルータンの指示書が届き、それをガルベルトの名で村人を集めて、集会所で周知させた。何度も繰り返し読むことができるように、掲示板に誰でも読めるように書いておく。


 ミナはギルタを励まし、リントンとジャービスがユーリカ散布を手伝うと約束した。むしろ、ギルタに任せておくのが心配だったからだ。他の2軒もジャービスとリントンが回ることになる。

 ユーリカ油はそんなに安くない。だから、効率よく散布する。この費用は村が持つことになっている。金がないからと言って散布しない家があると、村中に害病が広がる可能性があるからだ。


「今回はいろいろと勉強になりましたね。トレーサビ…野菜の出所証明に関する欠陥や、野菜の種類を集中させることの危険性、それから村の畑全体の安全確保。定期便参加者以外の畑で害が出ても、結局は定期便に影響しますから、村全体での指導や管理が重要となりますね」


「おっしゃる通りです」

 ミナとリントンは深く頷きあった。村役場の一室で、3人は打ち合わせ中だ。

「で、プライク商会のほうですが…」

 ガナスは交渉の結果を報告した。


「商会側の要望としては、ぜひとも独占でやらせてほしいとのことです。それなりに人手を増やして対応するとのことです。ですので、今後は財務部としても、商会の営業支援として、あちこちの大口客に対して、打診と紹介をすることになります」


「それはありがたいですね! 財務部からですと、かなりの見込み客のリストが出そうです」

 で、ガナスはリストを書き出した。領主関係の組織は基本的に直轄領の農産物と税収の穀物がまかなうので、それは除外だ。


 ガナスがリストの中心においたのは、大規模な組織を持つ豪商たちの館だ。豪商の館には100人は下らない人が集まって生活している。そして、他領の商人たちがやってきたときに泊まる宿、特に彼らが部下を引き連れて泊まる大規模な宿だ。


 それから、職人たちが集団で住まう大工房、教会関連の修道舎と学校、各種の私設訓練所などである。

 さすが、タンブリーの街は大きいので、これらの施設が揃っているのだ。


「それから、こちらのリストは不定期ですが、領内の貴族の館で、もてなしの宴などが開かれるときには、大量の食糧を必要としますので、不定期でも考慮すべきかと思います」

「なるほど…。では、まず当たってみるところとしては…」


 ミナは最初の交渉相手として、不定期の注文をくれそうな貴族たち、そして豪商の館を選んだ。

「ミナさん、不定期の注文をする貴族を最初に選ぶのはなぜですか?」

 リントンが疑問を持つ。定期便なのだから、定期のほうが良さそうなのだ。


「不定期の注文は決まった納入業者はいないでしょうから、敵がいません。ですから、比較的穏便に進められます。それに、今まで扱っていない野菜を扱う良い機会となります」

「な、なるほど」


「怖いのは、今までの納入業者がいる場合に、その人たちから敵視されることです。できれば最初は敵が少ない方がいいですからね。豪商のほうはすでに決まった店がいくつかあるとは思いますが、小さな個人の納入者でしょう。豪商たちもまとまった業者ひとつに任せた方が手間がかかりません。彼らは利益に敏感です。自分たちに利益があれば、必ず乗ってくれるでしょう」


「反対が出るのは成功の証です。問題は“誰がどこまで困るか”です」

 ガナスもリスクは負うつもりだ。税金を扱っているために敵を作りやすい立場にいる。

「な、なるほど…」

 リントンは少し腰が引けている。


「理解しましたが、不定期便は農家とのやり取りが重要になりますね。いつも、どの野菜がどれだけ出せるかを把握しておかないと…」

 リントンは農家とのやりとりを思い浮かべた。農産部官には野菜が常に頭にある。

「はい。そうですね。そこは農家との頻繁な対話でなんとかしましょう。商売は戦と同じです。油断せず、機を見て動くことが大切ですね」


 ミナは馬の目を抜くという現代社会の厳しいビジネス戦争で3年ほど戦ってきたのだ。こちらが優勢かと思ったら、あっという間に追い抜かれるというのはよくあることなのだ。


「その通りですな。…領主様にとって大切なのは、今まで税収にならなかったところに税収を生み出すことです。ですから、個人の業者が野菜を納入していたところへ商会が出ていけば、その分の税が増収となりますから、領地としては好ましいことです」

 ガナスもしっかりとした財務官なのであった。


                    * * *


 タンブリーは西の山を背に城郭を戴き、城門を抜ければ市場と商会がひしめく城下町が広がる。その外側には倉庫と職人の区画、さらに街道沿いには宿屋と馬車宿が連なっていた。


 その街の中をトージャーとガナスは馬車に乗って移動する。二人とも街に住んでいるのだが、今日は大商人に会うので、わざわざ馬車で乗り込むのだ。大商人たちは街の西側の城郭のすぐそばの地域に住んでいる。


 今日はそこに住む大商人バンリオルに二人で売り込みに行くのだ。


 プライク商会はまだまだブリア領の中堅の商会だが、それに対してバンリオル商会は国全体に広がる販売網を持っている。海外にも支店がある国際商会だ。ボリック自身は本部のある王都と王国南部最大の街であるタンブリーを行き来しており、月の半日はタンブリーにいるということだ。



「ようこそお越しくださいました。ガナスさん」

 ガナスはボリックの担当財務官だったので既知の仲だ。

 ボリックはその地位に見合わず、意外にも若い。まだ26歳だ。

 バンリオル商会の5代目なのである。

 短めの濃い茶色の髪がはねていて、威勢のよさを感じさせる。品の良い四角い顔の輪郭に、一文字の眉毛が印象的だ。育ちの良さを感じさせる物腰だ。


 ガナスはプライク商会のトージャーを紹介する。

「早速ですが、時期領主であるアンドリオン様が大変力を入れておられる事業に、ぜひご協力いただきたく…」


 ガナスは事業の概要をざっと説明し、ボリック側の利点も説明した。そして、あとはトージャーにバトンタッチする。


「弊社はまだ小さな商会ではございますが、この村の発展のために日々精進しております。ぜひ、こちらのお屋敷の農産物を弊社に扱わせていただきたく…」

「ふむ…」


 ボリックはお茶を飲みながら、まつげを伏せて考えていた。そして、ゆっくりと口を開く。

「これはおもしろいものですな。盲点と言いますか…。野菜は農民が売り買いするものだという今までの思い込みが間違っていたということですな…」


 ボリックは野菜の購入の検討以前に、プライク商会がその仕事をしようとしているという点に意識を向けた。野菜を大量に扱うのは、直轄地を持つ領主、荘園を持つ貴族であって、あとは農民が市場や常設店舗に卸すか、大量に購入する館は個人で売りに来る農民何人かに運ばせていたのだ。


「つまり…。アンドリオン様は税収増をお望みで…」

「こ、これは恐れ入りました…。さすがでございます」


 ガナスは驚きを隠せなかった。思わず冷や汗をかく。さすがに大商人。すぐにそこを読み取った。

「いやいや、そこに今まで気づかなかったという自らの不明を恥じておりますよ」

 そう言って、ボリックは声を立てて笑った。


「で、プライク商会がそれを担当なさると…」

「は…」

 トージャーも汗をかき始めた。責められるのではないかという恐怖だ。なぜアンドリオンがバンリオルに話をせずにプライクにこれを許したのかをボリックが考えているのだろうと思った。


「私がこの企画の発案者とご縁をいただきまして…。僭越ではございますが、協力をお約束させていただきました。その後、アンドリオン様のご支援を賜ったのでございます」

「ほう…。発案者はアンドリオン様でも御社でもないと?」

「は、はい」

 トージャーは自分がミスをしたかと思って、口ごもった。


「実は、エルノー村の娘でして…。非常に賢い娘でございます。アンドリオン様もお気に召したようで…。いや、その賢さを、でございますが」

 ガナスが補足した。うっかりと誤解を受けそうな言い回しになったのを訂正しながら。


「娘? 村娘の発案だということですか? …それは興味深いですな」

 トージャーとガナスは大商人の前で汗をかいていた。


「その娘の名はなんと?」

「は、ミナと申します。自分で商会を立ち上げまして、テンソル商会として事業に参画しております。」

 駆け引きのできないガナスは特に隠すことでもないと考えて、答えた。


「ほう…。村娘が自分で商会を立ち上げた?」

「はい、元の構成員はその娘一人しかおりませんが、今3人雇っております」

「ほう…、なるほど。実に興味深い」


 ボリックはしばらく考え込むと、テーブルのベルを4回鳴らした。

「お呼びでございますか?」

 扉を開けて入ってきたのは、きちんと上着を着た品の良い商人風の男で、ボリックの若い部下であった。


「紹介しましょう。こちらはニキール。うちの番頭です。ニキール、こちらはトージャーさんとガナスさんだ。館と宿舎の野菜の納入について打ち合わせを頼む。条件をまず提示してもらえ。検討はそれからだ」

 ボリックは平手で二人を指し示しながら言った。

「は、かしこまりました。…では、こちらのほうにお越しくださいませ」

 こうして、別の部屋に案内され、二人は実際の交渉に入った。


 部屋に残ったボリックは、しばらく椅子に座ったまま、深く考え事をしている。そして、もう一度ベルを1回鳴らした。


「お呼びでございますか?」

 現れたのは、50代の執事であった。

「ああ。フライアを呼べ」

「は? フライアでございますか?」

「そうだ。急げ」

「は、かしこまりました」


 執事は一礼して、部屋を出た。


賢い人は、1を聞いて10を知る。


バンリオルがミナに目を付けました。まずすることは、ミナの調査。そして…


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

このあたりからミナが活躍していきますので、お楽しみに。

よろしかったら、ブックマークをしていただけますと、泣いて喜びます。よろしくお願いいたします。

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