大商人たち、ミナの驚きの策に夢のような大興奮
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
第149話 大商人たちの決意
3月10日。ミナは再び王都にやってきた。
コブルーで開催される祝祭なので、王府の最高責任者は必然的にコブルー自由港開発事業部長のレオストとなる。
レオストの臨席の上で、ミナは王国の五大商会を呼んで、事業説明会を開催した。
宝くじを扱うので、王都に銀行を持つ商会という条件で限定した。バンリオル、ブラーゼ、コマキア、ダルザ、コーハラルの5つの商会が、王都に銀行を持つ大商会だ。これらが同時に協賛企業となる。
「で、今ご説明させていただきましたように、この祝祭を担当していただきたいのでございます。5つの部分に分けてございます。
1.競技部門とその観客席販売
2.見本市部門
3.出店部門と会場設営
4.宝くじ付き抽選券販売
5.全体の総合管理と会計、行事進行管理
各部門のおよその収益予想と取り分は以下の通りでございます」
「ううむ……」
参加者たちは資料を食い入るように見た。
「利益は多くはございませんが、皆様にとっては、商会の名を広く知らせる好機とお考えいただき、協賛商会としてご参加いただきたいと思います」
王族関係の事業だということで、番頭クラスではなく、各商会の代表たちが集まっている。
バンリオルからはボリックが参加している。
「質問ですが、これは毎年行われるのでしょうか?」
バンリオルが尋ねる。
「はい。競技会や見本市は毎年行う予定でございますが、宝くじや婚約発表の行事は今回のみとなります。ですから、今回が一番大きな規模となるでしょう」
「なるほど……」
「この宝くじというのは……? 神殿がときどき行う、富くじのようなもので?」
ブラーゼ商会代表が尋ねる。
「はい。その通りでございます。ですが、選ばれたくじに賞金が与えられるのではなく、優勝者を当てたものに賞金が与えられます。この主催は神殿ではなく、ブリア侯爵となります」
「な、なんですと? ブリア侯爵の宝くじ……ですか」
「はい。今回は婚約発表にあやかった宝くじでございますので。……オホホ」
そこを突かれるとミナも弱い。
コブルー開発事業部の宝くじにすれば、王府の商務庁とブリア領財政のものとなり、ブリア領主の個人的な収入にならないのだ。それでは、エカーリアの結婚費用が出ないため、宝くじをやる意味がない。
(ミナも緻密に計画したものよ……)
レオストは真の目的を知っているため、心の中で笑う。
実際、この企画の中心は、宝くじなのだ。この利益が金貨300枚になってくれないと困るのだ。だから、全国規模にしなければならない。そのために、各地から代表を出す競技を開催する、というのがミナの計画の発想の順番だ。
「では、うちはこの5番の全体管理を担当させていただきます」
バンリオルが一番最初に決める。
「ほう? そ、それでよいので?」
コマキア代表が驚いた様子だ。
「宝くじが一番うまみがありそうですが……。扱いも簡単そうですし……」
「そうかもしれません。でしたら、お譲りいたしましょう」
バンリオルはにこやかに言う。
ミナはひそかに「さすがだわ」と称賛する。
バンリオルはすべての行事を牛耳るイベント運営会社の位置を選んだというわけだ。
それは、今後、このような大規模なイベントを運営できる商会として売り込めるからだ。
「よ、よいのですか……?」
「いやいや、宝くじを担当したいのはうちも同じ!」
と、コマキアに対してブラーゼの代表が言う。
レオストがミナを見る。
どちらの商会を選ぶか、問うているのだ。
ミナがニコニコして言う。
「でしたら、この取り分をいくら下げるかで勝負していただきましょう。低い方のかたにこの事業を担当していただきます」
「えっ?!」
ミナの言葉に代表たちは驚愕の声を上げる。
これは逆オークションだ。
「う、では、うちは1%下げます……」
とブラーゼ。
「う、では、うちは……1.5%下げます」
とコマキア。
「う……」
もともと10%しかない取り分なので、それは厳しい。結局、コマキアに決まった。
こうして、なんのかんのと話し合ううちに、5つの部門の担当が決まったのだった。
* * *
説明会が終わると、レオストは、商会の護衛や書記たちをいったん外に出す。ミナとレオスト、それに5人の代表だけが残った。
「ここからは、そなたらだけに言う秘密の話である。外に漏らさぬように頼む」
レオストは声を潜める。
「は? いったいなんでございましょう?」
5人の代表はレオストの言葉に驚き、なにやら不穏な雰囲気を感じて、互いに顔を見合わす。
「この事業は、実はこれだけではない。裏で動く、別の作戦がある。それをこれから説明する……」
「は……?」
全員がレオストの言葉に注意を傾けた。
「この祝祭は囮になる」
「えっ……?!」
商会の全員が顔を見合わせ、口をあんぐりと開ける。
「な、なんですと……?」
「狙いは盗賊だ」
「と、盗賊……」
バンリオルが口を開く。
「つまり、この祝祭を囮にして、盗賊を捕らえようとしている……ということでございましょうか?」
「そうだ。それも大量にな」
にやりとレオストが笑った。
「そのための『宝くじ』と『見本市』だ。高価な品が集まることを、広く知らせよ。そして……」
商会員たちはゴクリと唾を飲み込む。
「やつらを一網打尽にするのだ」
「!!!!」
一瞬、時間が止まった。
そして、かすかな声が漏れる。
「お……」
「おお……」
「な、なんと……」
代表たちはそれぞれに息を飲む。
「な、なるほど。さすがレオスト殿下。これは……」
バンリオルは真っ先に時間を動かした。
もちろん、バンリオルはおそらくミナの発案だと推測している。
そして、ミナを見て、ニヤリと笑う。
「ミナさん」
バンリオルはまるで天から光が差したような晴れ晴れとした顔をして、ミナに言った。
「これは商売ではありませんな……。国を変える仕事です」
そして、4人の同業者の顔を見回す。
「ま、まさか……。これで今まで決して消えることのなかった問題を……解消すると?」
「いや、もし可能ならば……。絶対に成功させるしかありませんな……」
「もしそれができたら、……まるで夢のような世界ではありませんか」
「そんなことが可能……? 信じられない……」
「……可能かどうか。それは我らにかかっているのです。
これは、商人にとっては、やり遂げねばならない、歴史的な転換点になりますな!」
そう言って、バンリオルは自らの言葉に大きく頷く。
4人の商人たちは、真っ先に明るい未来の夢を見始めたバンリオルの横顔を見て、呆然とする。
「そのとおりだ。歴史上、一度も達成されていなかったことを、我らが達成させるのだ!」
レオストは力強く宣言した。
ミナは心の中でガッツポーズをする。
(いつまでも盗賊に怯える商売なんかしないわ!)
そして、心の中で愛しい夫の顔を思い出す。
カイルは「王の剣」バンリオルの私兵として、この作戦に必ず参加するだろう。
(カイル。離れ離れだけど……。一緒に、この国の商人たちを恐怖から解放しましょう!)
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この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ブリア領主アンドリオンは妹エカーリアと、王弟の嫡男ゼビルスの結婚を進めるよう、ミナに依頼した。ミナは、その費用をなんとか作ろうと、大イベントを提案する。しかし、金儲けだけではなく、その裏には別の策がいくつも隠されていた。
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
カイル … ミナの夫でバンリオルの諜報員 20代
アンドリオン … 若きブリア侯爵、ブリア領主。20代
レオスト … 王弟。ラッスル公爵。ミナの支援者。40代
エカーリア … アンドリオンの妹
ゼビルス … 王弟レオストの嫡男。20代
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