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1年で大儲けする計画をなんとかひねり出せ!

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!


第147話 ミナ、渾身の金儲け策


「う~ん……」


 ミナはブリアに帰ってから、ずっと考え続けている。なんとかお金を生み出さなければならないが、そもそもそれは前からの課題であって、今までもさんざん生み出してきた。

 しかも、今度は急ぐのだ。急いで大金を用意しなければ、エカーリアがさらに行き遅れる。


 ミナは、自分が前の世界では28歳まで結婚もしていないし、婚約者もいなかった、とカイルに言ったときの、カイルのあきれた様子を思い出す。


(エカーリア様が結婚できないことを、貴族たちにバカにされているなんて、絶対に許せない!)

 と変なところで闘争心が出てしまう。


 そもそも、それを心配してフィルベラがミナをエカーリアの家庭教師に雇ったのだ。

 エカーリアが結婚できなければ、ミナの仕事は成功したとは言えないではないか。



「ミナ、結婚に必要な資金の見積もりが出たぞ」

 アンドリオンが紙を1枚ヒラヒラと見せる。

「は、おいくらですか?」

「金貨300枚だ……」

「き、きんか300まい……」


 現代風に言うと約3億円といったところだろうか。何と言っても、領地にこちらが撒く祝儀というのが高い。実質的には酒代だ。王弟という最高位の公爵家に嫁ぐとなれば祝い方が違う。それなりな人数に配らなければならない。


「これでも最低限の見積もりだそうだ……」

 アンドリオンは頭を抱える。


 これは領地の財政ではなく、ブリア侯爵家の財産から出すべきものなのだが、レオストが言ったように、例の事件の罰で課せられた支払い金がまだ全部払い終えておらず、侯爵家は借金がある状態なのだ。そこでこの金額は難しい……。

 アンドリオンとミナは「う~む……」と頭を抱える。


「ミナ……。無理を承知で言う。私はエカーリアを結婚させてやりたいのだ。王族である公爵家に嫁げれば、おつりがくるほど名誉なこと。しかも、好いた相手と結婚できるというのも稀だ。なんとかできないだろうか……?」

 アンドリオンは悲愴な表情でミナにすがる。妹思いのアンドリオンの気持ちがミナに伝わる。


「は、はい! お、お任せください!!」


 ミナは思わず立ち上がって、ガッツポーズをした。

 エカーリアのために、絶対にやらねば!!


 ミナが今こうして、貴族のように暮らせているのも、もとはと言えばエカーリアの家庭教師になったおかげ。フィルベラにも服や靴を用意してもらったり、マナーまで教えてもらったりと、かなり世話になったのだ。


(ここでその恩を返さずしてどうする!!!

 ミナはメラメラと心の中で火が立ち上がるのを感じる。


(なんとしても、お金をつくらなきゃ……)


 * * *


(ええと……。お金をつくるには……)


 ミナは朝から晩までお金のことを考える。カイルは旅に出ているので、若草宮でひとりだ。自分の部屋を歩きながら、また、庭を歩きながら、玄関広間をうろうろしながら考えた。

「う~ん……」


 しかし、ときどき別のことを思い出す。

 バイクレンの盗賊たちの問題。

 エレミアの鉱山の人手不足の問題。

 サンダランの農民離れの問題。


 護送団というすばらしいアイデアでさえ、問題視される。

(ぐぐぐ……)


 なんとか、問題の起きない手で、しかも短期間で、さらに大金が儲かる手はないか……。


(そんな都合のいいことなんか、あるわけないじゃない!)

 自分で突っ込みが入る。

(ぐぐぐ……)


 ミナはふと、昔、ショッピングモールの開業イベントの仕事にかかわったときのことを思い出す。

 大量の店舗を一度にオープンさせるというのは、とんでもなく大変だ。


 だが、ショッピングモールやデパートは、開業時に限らず、イベント、イベントの連続だ。そうやって購入意欲を客に持たせ続けるのである。


(そう、あの根性を見習うとしたら……)


「うう……ん……」

 ああでもない、こうでもないと、ミナは考え続けた。

(つまり……購買意欲をそそる、特別なイベントを考えなきゃ……)


 この世界には娯楽がない。そうだ。パンとサーカスだ。サーカスのようなイベントがあれば……。


(うん……。何かひらめいてきたわ……)


 ミナは今まで、商人たちからお金を出させようとしていたが、今度は民衆にお金を出してもらうのだ。少額でも、人数が集まれば多額になる。そのためには……。


 ミナはうんうんと頷いて、部屋に戻り、机に座ると、いろいろと紙に書き綴り始めた。


(ええと……)

 ミナはニマリと口角を上げる。

(うん、こうすれば、あの問題も一気に解決できる……)


 ミナはカリカリとペンを動かした。

 いつの間にか外が暗くなるのにも気づかないほど、一心不乱に頭を回転させた。



 * * *


 翌日、ミナはアンドリオンの執務室にやってきた。

 そして、資料を出す。

「ミナ! もう考えたのか?!」

 アンドリオンは驚愕する。


「はい。まだ案でございます。これをみんなで検討し、突き詰めなければいけません。ですから、主だった官僚をあさってにでも招集してくださいませ」

「う、うむ。わかった」


「で、その前に……。エカーリア様にもお話をしておいたほうがよろしいでしょう」

「ああ、そうだな。かなり具体的に進みそうだからな」


 こうして、エカーリアとアンドリオン、フィルベラの4人でお茶をしながら、結婚について話をすることになった。


「エカーリア。ミナが先日王都に行ったときに確認したことだが……。ゼビルス様はそなたと結婚のご意向があるということだ」

「えっ、それは……」

 エカーリアは驚きの表情で、両手で口元を包む。


「で、レオスト殿下にも許可をいただいている」

「まあ! それはまことなの? アンドリオン」

 フィルベラも驚きだ。


「はい。まことでございます、母上。ミナが殿下に直接会って許可をいただきました」

「まあ……」

 フィルベラとエカーリアは顔を見合わせる。

 エカーリアは嬉しさで目に涙が浮かぶ。


「本人同士も結婚したいと思っているし、殿下の許可もある。殿下は、国王陛下も賛成してくださるだろうと仰せだ。誰も問題はないのだが……」

 アンドリオンはそこで言葉を切る。

 フィルベラとエカーリアは、その言葉の続きを待った。


「問題は、資金がないということなのだ」

 エカーリアは手を膝に戻して俯き、フィルベラも肩を落とす。

 ブリア侯爵家に大きな借金があることは、ふたりともよく知っているからだ。

「やっぱり…」という思いだ。


 がっかりしたふたりを見て、アンドリオンは続ける。

「だが、心配はいらぬ。ミナが良い案を考えた」

「えっ……」

 またふたりがミナを見て、そして、互いに心配そうに顔を見合わせる。

「ミナさん。……なんとかなるのでしょうか?……」


 エカーリアもさすがにすぐになんとかできるとは思えない。何年か待つことになるのだろうと思った。


「はい。これは今年中に必要な資金を用意する案でございます。それには、エカーリア様のご協力が必須なのでございます」

「まあ……。わたくしにできることが……?」

 フィルベラも心配顔だ。


「はい。エカーリア様がご自身で何かをしていただくということではございません。ただ、民衆にご婚約を正式に発表する、ということが必要なのでございます」

 すると、フィルベラは明るい顔になった。


「それならばできそうね。ね? エカーリア」

「は、はい。お母様! お兄様たちが頑張ってくださっているのですから、わたくしにできることは、なんでもやらせていただきます……。あの……。それだけでよろしいのですか?」


「はい。後は、エカーリア様の絵姿を描かせて、街のあちこちに貼らせていただきます。名付けて……」


 ミナは書字版に文字を書いた。


「コブルー自由港開港記念、兼、ラッスル公爵家・ブリア侯爵家婚約披露祭!

 略して『コブルー記念祝祭』……でございます。これを10月15日にコブルーで開催いたします」

 ミナはガッツポーズをする。


「ま、まあ……」

 エカーリアとフィルベラは、しばらくその文字に見入っていた。

 まだ、いったい何をするのか、想像もつかなかった。


 その勢いに、アンドリオンは少し心配になり、ミナに改めて聞く。


「……ミナ。まさかとは思うが、ふたりを見世物にするつもりではあるまいな?」

「いいえ。おふたりは絵姿だけで十分でございます。あとは、その祝福と興奮を経済に変えるのでございます」


 これはサーカスの応用だ。

「それと同時に、村人たちの労働意欲を高めるのでございます」


(コブルーも全国的に知らしめることができるし……。ちょうど宿もできるし……)

 ふむふむ、とミナは一人で頷く。


(そう、これは一石二鳥、三鳥、いえ、四鳥、五鳥……)

 ミナは心の中でひそかに他の計画も立てていた。


(見てなさい、あの所長さんたち! 「恐れ入りました!」と笑顔にして見せるわ……)


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。


この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするためにブリア官僚として働く。王都でも数々の施策により、天才官僚と呼ばれるようになり、恋人カイルとともに騎士位を与えられ、結婚した。一方、ブリア領主の妹エカーリアは、王弟レオストの嫡男ゼビルスと恋をしていた。それを結び付けようと……。


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別小説、連載しています! よかったら、訪問してください!

クリスタル・ハート・カフェ

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

アンドリオン … 若きブリア領主

カイル … ミナの夫で、バンリオル商会所属の諜報員

エカーリア … アンドリオンの妹

ゼビルス … 王弟レオストの嫡男。20代

フィルベラ … アンドリオンとエカーリアの母

レオスト … 王弟。ミナの支援者。40代


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